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続 The Lily 前世の記憶は邪魔である   作者: MAYAKO
第二章 魔大陸編
78/95

【番外編】 怒りの闘神アキ、砦を壊す、と言う噂     

今晩は。

投稿です。

サブタイトル、少し変わりました。


今回も挿絵はありません。

楽しみにされていた読者の皆様、すみません。

「間違いないのか?麗乱?」


 獣人族の村に、衝撃が走る。その噂は一気に広まった。

 玉座と言うには粗末な椅子に、深く腰掛けた屈強な獣人。


「はい、明季です。正確には明季の魂と記憶を持った異世界のアキです」


 椅子に身を委ねているのは、村長のであり、明季の父親でもあった季羅。

 獣王と呼ばれる存在だが、その表情は複雑であった。


「ホルダーとは、これほどまでに心を乱される存在なのか?」


「嬉しくないのですか?」


 困惑する麗乱。


「明季は戦いの中で死んだ、もういない。ランの嘆き、苦しみ、あの慟哭、癒やされるのか?」


「それは……」


「私達の子供、明季は一人だ。異世界のアキ?それは別のアキだ、私から会うことはない……会うつもりはない」


「え?」


 ショックを受ける麗乱。

 これは喜ぶ、と思い報告したのだが?


「この世界に来た目的はなんだ?前世の者達に会いに来たわけではあるまい?」


「それは……」


「この世界に来た時点で、お前は調べたはずだ、話せ。お前の能力ならば、もう見通しているはずだ」


 獣人族でありながら、並外れた能力を発揮する麗乱。

 本来の真杖は麗乱では?と思う者は少なくない。

 困り顔の麗乱が、目を逸らし話し始める。


「魔族が……アキの母親と友人を、この世界に連れ去りました」


「なんと、異世界にも魔族がいるのか?」


「いえ、この世界の魔族です、この感じから魔族イー・シャンテンかと」


「あの道化!また問題ごとを!」


「マートルは帰ってきたようだが、サイザンと円はどうした?」


「なにか異世界でトラブルがあり、帰還できなかったと……」


「生きているのか?」


「そこまでは……」


 直感では生きている、だが口を噤む麗乱。


「あの者達は魔剣と朱槍の所有者だ、剣と槍はどうなった?」


「魔剣と朱槍は帰ってきています」


「ほう」


「季羅お父さん、やはり会われて直接話されては?」


「……取り合えず、ケインが付いたのだな?」


「はい、ケインお兄ちゃんは喜んでいますが?」


「俺は素直に、喜べん、その母親と友人はどこに?魔大陸か?」


「おそらく」


「では目的は魔大陸への上陸、母親と友人の奪還か?……それは、混乱、禍の始まりではないのか?」


「異世界でのアキの母親はアイです、友人はエノン」


「!」


「助けてあげませんか?」


「……様子をみる、それしか言えん」


 助けてあげたい!

 麗乱は思う。

 あれは明季だ。

 私は嬉しく思うのだが……キラお父さんは違うみたいだ。

 ランお母さんはどう思うだろうか?


 私、私はどうだろう?

 会いたくて、助けてあげたいけど……やはり、以前と同じく怖くて会えないかなぁ。

 あのアキの魔力、垣間見える炎の巨人、怖いし、近寄れない。


(麗乱!)


「きゃっ!」


「どうした?麗乱?」


「あ、いえ、突然連絡が……」


 いつものことかと思い、麗乱から視線を外し、今後のことを考え始める獣王。


 俺は……本当に会いたくないのか?

 会わなければいけないのでは?だが、明季の死は……戦士の死とはいえ悲しすぎた。

 子供の死は悲しすぎる。

 異世界の明季と出会い、そしてどうする?

 異世界の明季も戦士だ。

 また、失うのか?何度も?

 前世の記憶など邪魔ではないのか?


 獣人族は戦士である。

 死は常に付きまとう。

 氷獣を狩る、力及ばなければ死となる。

 獣人族にとって死は日常であり、それは、すぐ横に存在している。


 だが……。


 ランは、どう思うのだろうか。


(おい、麗乱!?無視するなっ!)


(え?え?シンお姉ちゃん!?な、なに?)


(なに?だと!?説明しろっ!これはなんだ?誰だ?私の魔力の先に、明季がいる!魔族の罠か!?この反応は明季だぞ!)


(え、えっと……それが……)


 獣王と同じ説明をする麗乱。


(異世界の明季だと!?)


(ええ、そうよ)


(信じがたいな……だがこの感じは明季だ……)


(疑うの?)


(複雑だ!だいたい、母親がアイ?それも魔大陸に拉致だと!?)


(友達のエノンも、拉致され魔大陸へ。首謀者は魔族イー・シャンテン、真杖ア・ダウ)


(なんで母親がアイなんだ!)


(は?)


(なんで私じゃないんだ!)


 え?そこ?


(アイは知っているのか?)


(アイお姉ちゃんは……どうだろう?感知は無理かな?キラお父さん会わないみたいだけど……)


(さもありなん、魂は同じだが、別の明季だ、ある意味迷惑な存在だ)


 !


 姉の口から、迷惑という言葉を聞き、困惑する麗乱。

 ええ?私は素直に嬉しかったんだけど、お姉ちゃんやお父さんは違うんだ……。


 ランお母さんはどうだろう?

 段々と気が沈み始める麗乱。


 そしてふと思う、明季は私達に、会いたいのだろうか?

 麗乱の能力を持ってすれば、今この時、すぐにでもコンタクトができるのだが。


「おとう……獣王季羅、王妃ランにはなんと伝えます?」


 わあ、お父さん、難しいお顔!

 他の兄弟姉妹はどう思うかしら?

 ランお母さんは、キラお父さんと同じかしら?


「私は会わぬ」


 !


「ランお母さん!」


 いつの間にか開いた扉から、声を掛けるラン。


「マートルから話は聞いた。明季ではない、私の娘、明季は死んだのだ」


 虚ろなめで呟く母親に、麗乱は眉をひそめる。

 うそだ、会いたいはず!

 でも、また戦いの中で明季を失ったら……そうだね、こんなに悲しいことはない。

 私は……明季が望むなら会おう。怖くても、勇気を出して。


 そんな決意に呼応するかのように、次々に念話が繋がり始めた。

 麗乱は妖精族のネットワーク・ホスト的な存在なのだ。


(ハピ子だ、我が魔力に信じられない反応があった、説明せよ!)


(ちょっと!麗乱!?何これ?私のアッキー、復活したの?ん?返事しなさいよ!分かるでしょう?ホッシーよホッシー!)


(ドロトンだけど、今港から。麗乱さん、この反応ラ・ベンダだよね?だがサイザナンシリーズに反応がない、魔族の罠かな?どう思う?)


 北のゴブリン、秘のゴブリン、騎士団、問い合わせが殺到する。


(リラです、これは闘神さまですね?)


(ミントだ、麗乱さん、これは?なぜラ・ベンダの反応があるんです?)


(イオリです、ご主人さまの反応があります、説明できますか?それに剣と槍も微かに感じますが……我が愚息の反応がありません、サイザンくんの反応も!麗乱、これは?)


 頭を抱え出す麗乱。

 魔力、切ろうかしら?


 そしてこのタイミングで全世界に魔力が響き渡る。


 魂魄意思を揺るがす怒号!


 それは轟き渡った。


《我が友に刃を向けるか!》


 力のある者は全て、その声を聞いた。

 眠っていた者は飛び起き、目覚めていた者は固まり立ち止まる。


 その声は勇者、魔王にまで響き渡る。


 椅子からずれ落ちる獣王季羅。


 妻、ランと目が合う。


 座り込む麗乱。


「聞いた?」


 思わす素の声が出る獣王季羅。


「はははっ、アキは、どの世界でもアキなのだな」


(やっぱ、アキは怖いよぉ)


 声の響いた方向に、思わず目が向く3人。


「!」


 窓から見える風景、そこには、閃光が見えた。

 そして重く響き聞こえる、爆発のような音、軽い地響き。


(何が始まるのだろう?)


 麗乱は期待と不安、これから始まる世界に思いを馳せた。


 それから間もなくして、腐敗した東の砦を、復活した闘神が破壊したと言う噂が静かに広がり始める。


 長さんの肩に乗る、空と玲門、美観。

 その後ろには、周囲を警戒するメイドン。

 ケインは砲身の留まって羽繕いをしている。


「長さん、元気にしていた?」


「良」


「また会えて嬉しいよ!」


「我モ」


 空は港町を目指す。


 空は知らない、自分の魔力がループし始めたことを。

 勇者朱天童子、一寸法師、小角、桃太郎、彼らはアキに力の贈り物をしている。

 それは言葉であったり、癒やしであったり、きび団子であったりする。


 勇者達のナノマシンは、確実にアキの魄に浸透する。

 そして意思と魂に影響を与え続けた。


 魔剣アシュリー、ドライアドの杖も封印と称して力を与え続けた。


 多くの者達がアキに力を与え続けた。


 世界を揺るがす声は、その結果である。


 そして王都では、一つ目の巨人が動き出す。


「パピー?どこへ行くですの?」


「げへ、げへ、港、東の港ま、街」


「港にですか?何しに行くですの?」


「げへ、こ、こい、パピーと、お、お前を待つ者がい、いる」


「ええっ?ロズマリを待つ者!?運命の人ですの!?」


「あ、あはっ、そ、そうだ運命の人、だ」


「つ、ついにロズマリにも現れたのですね!運命のシトが!エルダーもサフランもさっさと決魂してしまうし!ロズマリ、ひとりで寂しかったですの!」


 パピーは騙してはいない。

 ある意味、アキはロズマリにとって運命の人である。

 

 パピーとロズマリは王都を離れ、港を目指し、歩き始める。


 挿絵(By みてみん)

次回投稿は 2023/10/22 夜の予定です。

サブタイトルは 【第4話】 港街にて です。


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