【第7話】過去の記憶って邪魔じゃね?
こんにちは。
15時、お茶の時間です。
河川敷を離れて、学校目指すけど、これ、街中を通らないと行けないんだよね。
……さて、私のこのチート能力、私の意思では発動しない。
多分、感情に関係していると思うんだけど。
ここからなら、学校まで歩いて30分?40分?
うう……今でも汗まみれなのに、これから学校へ?
とことこ歩いて?
もう、お家帰りたいよ。
それに体操服だよ。
この体操服、胸と背中に名前、でっかく記入してあるし。
でも、エノンやクルミちゃん心配だし……。
……なんか、泣きたいかも……。
ん!?
怪物の死体?
鱗らしきモノが残っているけど、何か今、光った!?
うわっ!?酷い臭いだ……あ、でもこの臭い朝のあの臭いだ。
じわじわと近づき……?
宝石か?青い、五角形?多面体だ。
10㎝はないな、でも宝石として見ると、でかい!
歪んではいるけど、12面体かな?半透明だ!
思わず手が出て、摑んでしまう。
で……どうしろと?私、なにしているんだ?
これ、貰っちゃうの!?
なんか、汚い。
取敢えず、洗うか?
どこで?
あ、川があるではないか!川で水洗い!
ザブザブ、ごしごし。
川砂で擦って、綺麗にする。
……おお、綺麗だ。
怪物は怖くて変な臭いだけど、これは綺麗!
ふんふん。
変な臭いもしない。
太陽に透かして見る。
私の左目は、青い、綺麗な世界を捉える。
うわぁ、およそ、あの怪物の体内から出たモノとは思えない!
綺麗!
「あ!?」
綺麗な青い石を通して、何かが左目に吸い込まれる。
「わっ!?」
なんだ?い、今の!?
「あちっ!?」
ゆ?指が?さっきも熱かったけど、また!?
「あつううううううううっ!?」
な、何なのこれ!?
(魔力が充填されましたン、ステータス画面起動……エラー……ズッ友システム起動……エラー……困りましたン)
は?
(上位存在の干渉を確認、システムの修復を行ないますン)
は?
上位存在?なんぞや?
(ご主人さまン、なんか、ぶつかりましたン?)
あ……夢でなんかぶつかったけど、あれか?
いやいや、そもそも、これ……なに?
ご主人さまぁ!?
中二病、爆誕か?
だけど、勇者を名乗る鬼さんはいたぞ!?
勿論怪物もラグナルだっけ?
事実、私も物理法則無視した『ばかぢから』の持ち主だし。
グランドピアノ、持ち上げたけど、あれ、200㎏以上あるはず。
……。
ここで、好奇心が湧いた。
質問してみるか?
この、脳内に響く音声に。
……変なヤツだったらどうしよう?
ねえ、あなたは誰?
まさか、真っ黒何とかではあるまい。
(質問を確認。私は、サイザナンシリーズの補助システムですン、ご主人さまン)
わからん。
(ホルダーをサポートするシステムで、ご主人さまン及びシステムに異常が無い限り、寝てますわン)
……私は異常なのか?
まあ、否定はできんが。
ねえ、補助システムさん、ホルダーって、何?
たしか鬼さんも言っていた、ホルダーアキって。
(ホルダーとは、生まれ変わりの記憶を有し、その知識、能力を完全再現できる人物のことですわン)
……なんか私の身体能力の原因、分かったかも。
サイザナンシリーズって、なに?
(ン・キングが作り上げた、スーパーゴーレムシリーズの未完成品ですわン)
……まったく分からん。
ならば、こいつは、未完成品の補助システム?
更に訳分からんっ!
(記憶の回復を行ないますかン?)
何の記憶なの?
(これまでの、ご主人さまンの転生の記憶ですわン)
え?
ええええええええっ!?
できるの!?
そんなこと?
お、面白そう!
ん?いや、まて、まてよ!?
……これはかなり、危険ではないか!?
途轍もなく、この以前の『記憶』というヤツは危なくないか?
思い出したくもない、記憶ばっかりとか?
勇者がいたなら、魔王もいるはず!
転生の記憶を思い出して、実は私、魔王でした!とかなったら、立ち直れるか?
ホントは私、ゴブリンで、女の子や、男の子に、あんなことや(R18)こんなこと(R18)しまくっていたとか?
(ゴブリンにはゴブリンの美意識がありますわン、異種性行為は否定しませんが、通常、余程の『愛』がないかぎり、成立いたしませんわン)
せい……わぁ、なんか大人の世界?
ちょっと私には早い?難しいかな?
ならば、尚更、思い出すのは?
そもそも、こいつ何者だ?補助システム?信用していいのか?
(ご主人さまン、性行為に興味おありですかン?心拍数、呼吸数、血圧、上昇しましたけどン?)
……そこは聞かないで、微妙なお年頃なの!
思春期って知っている?
そっとしておいて!
スルーして!
ああ、涙でそう、なんだこいつ!
1人街中で (それも体操服姿で!)、赤面する私。
上着が欲しい……。
(失礼しましたン)
街中は騒然としていた。
サイレンが響き渡り、焦げ臭い匂いや、ガソリン?の匂いなんかが立ち籠めていた。
信号は点滅し、機能していない。車は放置され道路は駐車場のようになっている。
火事かな?煙が……!
世界連合のビルが火災だ!
いや、半壊しているぞ!?
あのビルだけ火災?
また、誰かが関連付けして、新たな都市伝説になりそうだな。
「学生さん、大丈夫!?」
知らないおばさんが声を掛けてきた。
「え?あ、はい」
……う、香水の匂いきっっつ!
「これを、着なさい、さっきそこで買ったものよ」
「え!?」
「体操服じゃ、目立つし、恥ずかしいでしょう?」
そう言ってゼッケンを見るおばさま。
「え、で、でも」
綺麗な包装紙から出されたのは、格好いいジャケットだ。
「さしあげるわ、私達は今から、避難所に行くけど、どうします?」
「え?わ、私は学校に……」
「そう、避難所はそこの市民ホールらしいのよ、危ないと思ったらあなたも来なさいね」
そう言って親切なおばさまは、お友達だろうか、3人で固まるようにして歩き去って行く。
あ、お礼!なんて親切なおばさまだろう!?
「あ、ありがとうございます!」
デカい声でお礼を言うと、おばさま達は振り返り手を振る。
……なんでくれたんだろ?
(……)
まあ、泥だらけの汗まみれで、酷い格好だからだろうか?
とにかく感謝だ。
新品のジャケットを泥だらけで着込むのは、気が引けたが、折角貰ったモノだ!使わせて貰おう!
あ、なんか、足取り軽くなった?
気持ちが少し晴れた?
(よかったですね、ご主人さまン。で、記憶の回復は、どうされますン?)
……。
色々と、情報が欲しい!
次回投稿は 本日 2023/08/13 22時から23時の予定です。
サブタイトルは 【第8話】私の過去 です。