【第69話】 異界への遠い道
今晩は。
サブタイトル、少し変わりました。
ギリギリ投稿ですみません。
私の中に、沢山のアキがいる。
ああ、私はどうやらアキという名の人物らしい。
その内の一人が『まどか』に反応した。
とても大事な、大切な人、その人の名前らしい。
でも、この感じは女性だ。
目の前の円は男性。
女の人がいいな、それもお菓子を持ってきてくれる人。
だってこの円、私の嫌いな炭酸の飲み物を持ってきた。
うう、炭酸嫌い、あれ飲めない!
「ドーナツ、食べる?沢山作ったんだ」
「いいの?ありがとう」
クルミちゃん、やらなくていいよ!
それ、私の!
「それ、炭酸ジュース?」
「うん、シワッとして甘くて美味いんだ。初めて飲んだよ。ビールっポイのはン・ドント大陸のもあるけどさ、秋津川さんにもって思って」
「ふふっ、アッキー炭酸苦手よ」
「え?そうなの?こんなに美味しいのに?」
おい、自分が好きだからって、他の人が好きとは限らん!
好みはちゃんと調べるように!
……でも折角持ってきてくれたのだから、少しは飲んでやる。
炭酸を感じてみる……あ、やっぱ無理。
折角持ってきてくれたけど、ごめんよ円、私無理。
辺りを見回す円。
「ここ、いつも綺麗だね」
「ええ、清掃姉妹がいつも来ているから」
「清掃姉妹?」
「ふふっ、もと意地悪姉妹よ、双子の」
「?」
「ねえ円さん」
「なんだいクルミちゃん」
「アッキーいつ目覚めるの?」
「それは……」
突然の質問に戸惑う円。
私、目覚めるの?どうやって?
あ、クルミちゃん泣き出した!?
「うぐっ、うぐっ、オトちゃん、無事かなぁ……アッキーのお母さんも……なんでこんな酷いことするの?幼稚園のチビちゃん達、最初の頃はお手紙とか、書いていたけど、もう忘れているみたい、みんな忘れていくのかなぁ」
「……泣くなよ」
「だって、助けにいけないなんて!」
?
私のお母さん?
私にはお母さんがいるんだ。
「オトちゃん可愛いし、アイさん綺麗だし、酷いことされていないかな?異界に掠ってしまうなんて、どうしてこんな酷いことできるの?」
オト……ちゃん?
何か思い出しそうだけど……ダメだ、集中できない。
「転送機の試作機が、もう少しで完成する」
「でも、人を送るのはもっと時間が掛かるってサイザン君が……」
「一歩一歩しか進めないんだ、悔しいけど、どうしようもないんだ」
「……でも!」
(秋津川さんは魔王化で魂魄意思のバランスを壊した。魄は砕けたし、意思は傷ついた……復活はどのくらい掛かるのか……小次郎お父さんには話したけど……サイザンは10年と言ったが……転送機だってあと2、3年は掛かるぞ)
あ、円がこっちを見ている。
(力ある者が暴走すると、止めようがない。あのまま魔王が目覚めたら、この世界は壊れ、秋津川さんは勇者達に討伐されてしまっただろう。力ある者は怒ることさえ出来ないのかな……)
ねえ円、お歌を歌ってよ!
私の中の亜紀が、歌、聞きたいって言っているの。
女性のまどかは歌が上手だったって。
……伝わるかな?
「俺達の世界に、闘神の歌が幾つか伝わっているんだ」
お、伝わった?
「?」
「その歌を聴くと、荒ぶる闘神が鎮まったり、更に勇んだりするらしい」
「闘神?」
あ、今、円、魔法を使った。
意識誘導の魔法だ。
クルミちゃんを悲しみから、引き離そうとしている。
そんなことしても、一時的だよ?
それでもいいから、慰めたいのかな?
「そう、闘神アキ、伝説のゴブリン」
「え!?ゴブリン?そう言えば私もゴブリンって言われた……ちょっとショックだった」
ほら、クルミちゃん、悲しみから引き離された。
「歌を歌いたい気分になった。多分、秋津川さんが聞きたいのだろうな」
「え?歌うの!?今から!?」
「ああ、俺、歌うの好きなんだ」
「は、恥ずかしくない?」
「どうだろう?歌い出すと、俺の歌を聞けぇって気持ちになる」
「ええっ?なにそれ?」
クルミちゃんは表情が豊かで、見ていて癒やされる。
ああ、ネコだ。
クルミちゃん、子ネコみたいなんだ!
円は、徐に歌い始めた。
クルミちゃんが、びくっ、てするくらいに突然。
ああ、ボカロだ。
それも源キーで歌っている!
凄い!魔力を載せている!
歌はいいなぁ、安らぐ。
ん?……ボカロってなんだ?
思い出せない。
すぐ忘れてしまう。
まるで、誰かに覚えることを、邪魔されているみたいだ。
意思を向けると、もうそこには誰もいなかった。
時間の流れが不規則でよく分からない。
ああ、時間を感じている、私の方が不規則なのか?
私は微睡みの中にいた。
ザッザッ。
今度はなんだ?
ああ、箒の音だ。
いつものあの、二人組だ。
「でね、美観最近おかしいんだって」
「魔物?」
「そうそう、あの大きな蜘蛛、半分くらいの大きさになって、魔力感知をすり抜けるそうよ」
「ええ?本当?ヤバいじゃん!」
「魔物も殺されないように、必死に進化しているのよ!」
「繁殖力も凄いんだって?」
「怖いよねぇ」
「これぐらいでいいかな?」
「うん、綺麗になった。あと、あそこの窪み、雨水が溜まるから、赤間くんにお願いして溝、掘ってもらおう」
「そうね、私達じゃちょっと無理かな、力仕事。ここコンクリートやらアスファルト埋まっているし」
この二人はいつもクッキーとかアメちゃんを持って来て、お供えしてくれる。
昨日はお花だった。
小さな綺麗なお花。
見とれて過ごした。
そして、よくお喋りして、色々なことを話してくれる。
「アッキー知っている?今度転送機の実験するんだって」
「上手くいくといいね、だから早く復活してよ、皆待っているよ?」
どれくらいの時間が過ぎたのだろう?
時間の感覚がない私には見当もつかなかった。
このまま、ここで消えていくのかなぁ。
まあ、それも悪くないか。
そう思って過ごし始めた。
そしてちょっとした事件が起きた。
ザッザッ。
いつもの音、箒の音だ。
「美観、ちょっと見て」
「?」
「えいっ!」
!
炎が!?
「ええええっ!?どうしたの!?玲門!?」
「それがさ、この前、溝のことで赤間くんと小次郎さんとお話し、していたの」
「ああ、ここの溝ね?」
「そうしたらサ、小次郎さんのナノマシンが、移ってきて……」
「ええええっ!?感染したの!?」
「そうみたい」
「どうするのよ?魔法使いになっちゃって!討伐に行くの?私イヤだよ、玲門と離れるなんて!」
「どうしよう?私、格ゲーは大好きだけど、リアル暴力は嫌いなんだ」
「だ、誰だって暴力は嫌いでしょう!?え?どうするの!?」
魔法?私も使っていた?
次回投稿は 2023/10/13 夜の予定です。
次回も23時までには投稿したいです。
サブタイトルは 【第70話】 アキ、目覚める です。
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