【第67話】 放浪のエノンと慈母のアイ 2
今晩は。
遅れました。
すみません。
アイお母さんがエノンを庇った!?
大地が揺れ、吹き上がった爆煙は稲妻を伴っている。
血を撒き散らしながら笑う、真杖ア・ダウ。
「あははははっ凄いなぁホルダーアキ!最小の魔力二つで、これだけの威力!どうだい?吹飛ぶ仲間の姿は?ぎゃははははっ!お前が編出した魔法だぞ!」
魔族イー・シャンテンの猛攻が、突然、攻撃が止まった。
あれ?どうした魔族イー・シャンテン?
チャンスだ!エノン!ホッシー!
無事でいて!
ナビナナ!サイザナンシリーズは!
(使用不可です、すみません、ご主人さまン大事な時に!私の起動を最優先にしましたわ、ン)
仕方ない魔力で移動、何が一番速い?
風か?
この魔族イー・シャンテン、魔力は借り物だが、使い方が上手い、タイムラグはあるが凄い攻撃をしてくる!
そして大剣による攻撃。
切り返しが速いのだ。
正確で力強い剣、厄介である。
その魔族イー・シャンテンが攻撃を止めた。
「余裕だな?」
一撃を加える円。
ギンッと障壁を作り、その剣を弾く。
軽く剣を薙ぎ、円を追い払う!
魔族イー・シャンテンはじっと爆発現場を凝視している。
なにかを見つけた?
「阿騎、動けるか?救助に!」
「う、うん」
「回復が?獣人族のスキルがおかしい?不調か阿騎?」
サイザン君が心配し、戸惑い始める。
確かに、回復が遅い。
身体の右半分、火傷はくすぶっているし、燃えた右腕、右足は上手く動かない。
長巻は右腕に溶け込み、同化している。
痛感はゴブリンのスキルでカットしているけど、いつまで維持できるか。
獣人族の再生回復が上手く働かない!
魔族の攻撃が特殊なのだろうか?
ナノマシンは使用してしないはず。
同じ魔力なのに、何が違う?魔族が行使すると、魔力が変質でもするのだろうか?
先に動いたのは魔族イー・シャンテンだ。
周囲がゆっくりと動き出す。
!
重速術!?魔族イー・シャンテンか!?
どこへ向っている?
この身体では使えない、右膝の関節が癒着して動かない!
あの炎の魔法はなんだ?
考えている暇は無い!
ならば!重力魔法を使って、高速移動!
ひゅん!
重速術には及ばないが、風魔法より速い、これが今一番速い移動方法!
魔族イー・シャンテンは、同じ重速術で移動しているサイザン君の攻撃を躱しながら、爆心付近に降り立つ。
周囲を見回している?
サイザン君の朱槍を弾きながら、周囲探っているようだ。
何を探している?
「そこにいたか!」
何を見つけたのだ?魔族イー・シャンテン!
私はサイザン君と魔族イー・シャンテンを横目に、アイお母さんとエノンに駆け寄り……え?
私達の間に入り、再び業火の魔法で私を吹飛ばす、魔族イー・シャンテン。
「……!」
声も出ず、無残に焼かれる私。
全身炎に包まれ、力なく倒れてしまう。
火を消したのはホッシーだ。
「アッキー!アッキー!?」
無事じゃないけど無事だよ。
なぜスキルが上手く機能しない?
ホルダーアキはどうした!?
獣人族、ゴブリン族、中途半端な発動だ!
目が見えん!耳もよく聞こえない!
(アッキー、アッキーは基本人族だよ?ホルダーとして目覚めて浅い、まだ人族の意思が強いんだよ!)
「!」
(無理したら駄目だよ、魔力還元してしまう!)
震える涙声で、黒焦げの私を抱きしめるホッシー。
魔力感知も上手く働かない!
(アッキー落ち着いて!それは真杖の影響よ)
!
(強力な結界を張り巡らしているの)
いつの間に!?
(用意周到で、侮れない敵よ!)
エノンは?
「アッキー、私の視覚、使って!」
あ、ホッシー目線だ。
凄いなホッシー。
「あ、ぐっ!」
声も出ない、喉を焼かれたか?
!
見つけた!
エノン!?
アイお母さん!
血だらけのエノン。
そしてエノンを抱きしめるアイお母さん。
エノン!
(そら、エノンちゃんは無事よ!今、勇者小角のナノマシンがエノンちゃんに移っている、あと少し!)
その横に静かに現れる魔族イー・シャンテン。
!
逃げて!アイお母さん!エノン!
(ナノマシンのデーター移行中は、動けないの!)
どうする!?
ホッシー!
(ごめん、アッキー。あなたを支えているだけで精一杯……)
魔族イー・シャンテンの剣撃と魔力で、サイザン君は近寄れない。
「お前、知っているぞ、東の砦の獣人族アイ、慈母のアイだろ?」
!!!!!!!
え!?
何を言っている?
「その子はエノンだろう?放浪のエノン」
魔族イー・シャンテン?
「エノン、聞こえるか?俺だよ、イー・シャンテンだよ。魔大陸で会っただろう?」
浅い呼吸のエノン。
「……?」
魔族イー・シャンテンの後ろに現れる、ボロボロの真杖ア・ダウ。
「おい、イー・シャンテン、な、なに話し掛けている?早く殺せ!放浪のエノンは死んでいる。そいつはこの世界のエノン、魔力の欠片もないクズの人族だ」
「……慈母のアイ、こいつは俺が筆頭を勝ち取る前、追放され時、出会った。腹を空かした俺に、トビトカゲを焼いてくれた。焼きすぎで固かったが、あれは美味かったぜ」
「何を言っている?ここは異世界だぞ?そいつらは異世界のアイとエノンだ!」
ア・ダウに魔力が集まる。
「魔族イー・シャンテン、こいつは勇者小角のナノマシンに感染している、危険だ。解析もできない代物なんだぞ!今のうちに始末する!」
サクッ!
「き、きさまぁ……なにを?!」
斬られたのは真杖ア・ダウ。
魔族イー・シャンテンの魔力を帯びた剣に斬られ、魔力還元していく。
え?アイお母さんとエノンを助けた?
「どうせ、分体だろ?好きなように本体に報告しな、お前とは手を切る」
え?
「散々暴れたし、混沌もまき散らした。上手くいけばこの世界、俺様がいなくても、破滅するだろう。ひひひっ、欲しいモノは手に入れたからよ」
何をする気だ!
早く再生を!
ボロボロと、炭化した皮膚や筋肉が剥がれ落ちる。
関節が再生し、滑らかな動きが蘇る。
私は、ゆっくりと立ち上がった。
「ホルダーアキ、本当はお前が欲しかったんだが、こいつらで我慢するぜ、じゃな」
「速!」
全魔力をつぎ込んだ。
「おせーよ」
ニヤリと笑う魔族イー・シャンテン。
どこから出したのか、手にしたテニスボール大の光る球
次々にそれらは魔族イー・シャンテンの周囲に現れ、浮遊し、エノン、アイお母さんを包み込む。
ドオオオオオオン!
空間が割れた。
まるでガラスのように。
「俺様固有の技さ。勇者や魔王でも使えるヤツは少ないぜ」
追いつかない!
「その名も次元転移!まあ相当な魔力が必要だがなぁ、俺様でも単体では使えないんだ」
「アイ!」
小次郎お父さんが叫ぶ!
「エノン!アイお母さん!」
「あばよ」
ふっ、と風が吹いた。
それと同時に目の前の3人、魔族イー・シャンテン、アイお母さん、エノンが消えた。
次回投稿は 2023/10/11 夜の予定です。
遅くても23時くらいには、と思っています。
サブタイトルは 【第68話】 届かなかった手 です。




