【第6話】壊れ始める日常
今晩は。
投稿です。
「あれ、フェイクだよ!あんな生き物いないよ!」
「そうかなぁ」
異様に怖がるエノン。
「またアップされたの、今度の動画は黒い獣みたいなワニみたいな生き物が、人を襲うのよ」
え?なにそれ、事実なら怖くね?
「海外でアップされた動画なんだけど、凄くリアルでね」
「あれ、絶対CG、フェイク!あんなのいるわけない!」
エノンが、全力否定する。
……元気そうね?エノン?
「……アキくん」
ん?雰囲気変わった?
「切れたら駄目だって、うち、言った。レイくんも注意した」
「え?切れていないよ?」
ちょっと目が泳ぐ私。
その泳いだ目を、クルミちゃんが捉える。
「私達、心配なんだ」
何がかな?
「アッキーが時々、凄い力を発揮するのは、知っている。何度も助けられたし、感謝している」
「アキくんは、うちらのヒーロー……ヒロインなんよ」
「小学校の頃は、単純に格好いい!凄い!で済んだけど、中学生になって、2年生になって、少し分かってきたんだ、アッキー」
何がかな?
「新聞読んで、歴史や国語や勉強して、少し分かってきたんよ、現実世界のヒーロー、ヒロインは悲劇に終わるんよ、利用されたり、恨みを買ったりして」
「レイくんとか、隠れアッキーファンとお話ししたんだ。アッキーの力は変な大人達に利用されるかも知れないって」
……心配してくれるんだ。
自分達で考えて、私のこと、思って……。
*お前は、あの世界の者達に、愛されていたぞ*
!!!!!!!!!!!
何だ!?
今の言葉は!?
誰の言葉だ!?
何処かで……?
その時、パンパンパン、と乾いた音が響き渡る。
ビクッとする3人。
「……え?」
「な、何、今の?」
「……じ、銃声!?」
渡り廊下で立ち止まる私達。
なんだか凄く怖い。
私の耳は、男の人の悲鳴と、怒号を聞いた。
複雑な足音、人ではない、大きな獣……熊?
あ、あのイヤな臭いだ!
黒い影が、脳裏を過ぎる。
なんだこれ!?
(来る)
え?
世界が、ゆっくりと動いているような感覚に襲われる。
うわっ何!?
ひ、人差し指が、異様に熱い!火傷した!?
ふっ、と影が走る。
何の影だ!?
私は、無意識に二人を突き飛ばした。
花壇の柔らかい土の上に、倒れ込む二人。
ビックリして、私を仰ぎ見るエノンとクルミちゃん。
渡り廊下の屋根が、轟音と共に落ちてくる。
いや、落ちてきたのは屋根だけではない!
体長5mほどの獣?
「2人とも、頭を下げろ!伏せるんだ!!」
声の限り叫んだ!
鋭い牙、全身を覆う鱗。
そして、巨大な尻尾で、周囲のガラス窓や水飲み場を破壊する。
「ウゴオオオオオオッ」
鋭い怒声。
まともに聞いたら、耳が壊れてしまうのでは?
なんでラグナルがここに!?
?
え?だから、ラグナルってなに!?こいつの名前か!?
なんで私は知っているの?
あの悪夢は、予知夢なの!?
その獣は私を見ると、巨大な牙だらけの口を開き、襲ってきた。
息が止まる、身体が……え?動いている?
私は流れるように獣の攻撃を躱し、誘導する。
エノンやクルミちゃんから引き離すんだ!
捕食の凄い勢いで私を追うラグナル。
この巨体で、この速さ!?
銃声がしたけど、効果無し?
口元のあの赤黒い液体は、血か!?
校舎内から悲鳴が広がる。
校内の窓からスマホ片手に、私を見ている生徒達。
おい、さっさと避難した方がいいと思うけど?
先生!みんなの誘導を!
あ、でも……どこに避難?
こいつ相手に、安全な場所ってあるの?
私が、引き離す以外に、ない?これが一番良い、選択かな?
ならば、ここではマズい!
まだだ、まだ離れなければ!
学校を離れ、国道を横切り、河川敷を目指す!あそこなら!
途中、何台か車が事故った。
ごめんなさい!命に別状は無いと思うけど!
ラグナルの鼻先、ギリギリで逃げる私。
離れすぎると、他に行きそうだし、ここはこの距離で頑張るしかない!
あと少し!一級河川!
広い河原が見えてきた!
よし、ここなら!
怪物と対峙し、息を整える。
間合いをとり、抜きを!
ドオオオン。
私が抜きを放つ前に、魔力還元するラグナル。
誰だ!?
上空を見上げると、そこには袴?かな?上半身は裸だけど。
赤い鬼が浮いていた。
「おい、きさま、今、抜きを放とうとしたな?何者だ?」
「秋津川空」
あわわわっお口が勝手に!
「アキ?俺は勇者朱天童子……まさか!?ホルダー明季か!?」
え?勇者?
私はこの状況なのに、笑いそうになる。
「笑うなよ、中二病じゃないぜ?」
え?
「童子、北で暴れている、いくぞ」
「ああ、わかったよ小角」
勇者は飛び去った。
そして、この日から、私の日常が崩れ始める。
今のは、一体なんだ!?
凄いな、熱のような存在感!
何かを放出しているように存在していた。
浮いていたよ?
鬼さんだよ?
あまりのリアルに、動画、撮ってもフェイクって言われそうだ。
でも……この感覚、何処かで?
(勇者の有り余る魔力を、感じたのですわン)
!
誰!?
い、今の、私の考え?
胸の所で考えが、湧き上がった感じだったけど?
明らかに私の考えとは異質だった!
……病気かしら?
変な声が聞こえるとか……。
あ、でも耳元ではない、胸の中央で湧き上がる感じがあった。
これって??
周囲を見回す。
だいぶ学校から離れてしまった。
早く帰らないと。
次回投稿は 2023/08/13 21時から22時の予定です。
サブタイトルは 【第7話】過去の記憶って邪魔じゃね? です。
ある日の会話
M MAYAKO
G 元帥さん(元帥さんモデルの人です)
作中の挿絵は元帥さんに頼んでいます。
さて、今回は?
M「……これは?」
G「胸に愛がなかと、スーパーヒーロー、勇者じゃ、なかっちゃろ?」
M「あのう、あれ、心に愛では?」
G「あら、ちごうた?胸やなかったと?」
M「1の挿絵も、お願いしますよ!」
G「わははっ、まあ気長に待ちんしゃい」