【第54話】 地上戦4
今晩は。
投稿です。
目の前には世界連合ビル。
その周りは破壊尽くされ、戦闘の凄まじさを物語っていた。
あと少しで日が暮れる、また暗闇の夜が来る。
電気と食料確保が急務だ。
医療品も。
私の記録の中にあった水圧発電の記録を、ノートに書き写し小次郎お父さんとサイザン君に見せてみた。
固まる二人。
とんでもない技術らしい。
現代の技術で再現不可能な項目は、サイザン君が図面上ではあるが再現して見せた。
サイザン君は、10日あれば作れるという。
サイザン君はドロトン君と一部、繋がっているらしいけど、どういう繋がりなのだろう?
ドロトン君って、サイザナンシリーズのイエロー渡したって記録にあるけど?
ドワーフのン・キングに並ぶ技術者?
でも、これで上手くいけば、電気が確保できる。
接続や運用は小次郎お父さんの得意分野だし。
電気エネルギーは今日一日で、大変なことになっていた。
サイザン君の子機情報だと、世界規模で原子力発電所や火力発電所が次々に停止しているらしい。
動いているのは水力と風力のみ。
それも真杖がコントロールしているとか。
真杖、ア・ダウは隠すことなく、この世界の攻略を始めたらしい。
私はビルを見上げた。
真杖はこの建物から出られない。
サイザン君が、封印したからだ。
勇者次席の結界、凄いや。
結界が、もう少し早く構築できていれば、他の12体の真杖は拡散しなかったそうだ。
そして真杖は、サイザン君の封印内で、更に自らを封印した。
二重の封印だ。
今、サイザン君はその真杖の封印を解いている最中だ。
拡散した12体の真杖はある程度成長しないと発見が難しいらしい。
「後悔してもしかたない、まずはここの一体を倒す、いいなサイザン?」
「ああ、それで行こう円」
「ア・ダウは増え続けないの?」
私は聞いてみた。
ドンドン増えたら大変である。
今でも13体いるんでしょう?
次は倍の26体?
「大体3体くらいで止まるし、それ以上は残らない」
残らない?なんだそれ?
「真杖のア・ダウは実力が近いもの同士、殺し合うんだ。自分が上位と言い合って」
「!!」
うげっ!何その設定!
「己を自身で鍛えあげる、負けたら死、そして残るのは自分自身」
「そ、それでいいの!?」
「真杖のア・ダウはそういうヤツらしい」
「俺達は、魔族が作り上げた実験兵器じゃないか、と思っている」
魔族?魔族チクリ!?
あの者ならあり得るか?
目を落とすと、円の足下に蹲るマートル。
ネコみたいに寛いで、大きな欠伸を一つ。
その周りには楠の騎士団のメンバー。
楠の騎士団はほぼ全員が負傷している。。
ぐったりと円の周りに座り込んで、動かない。
元気がいいのはホッシーとハーサーの二人くらいだ。
だけど、その二人も決して好調とは言い難い。
それに引替え、力が漲っている二人がいる。
その勇姿はもはや別人だ。
「この世界連合ビルの攻略は急務だな」
「電気に食料、街の包囲網も解かないと」
アイお母さんと小次郎お父さん、逞しくなりすぎているよ!
サイザン君の話によると、勇者小角に憑依され、魂と意思の力がダイレクトに現れているらしい。
それと、あともう一組。
クルミちゃんと赤間くんだ。
私が遙か上空で、バトルしている時、クルミちゃんがデス・スパイダーに襲われたそうだ。
目の前で、そのことを話すクルミちゃんと赤間くん。
二人が自らお話ししたからいいようなものを、この二人の姿が見えなかったら、私は怒りに染まり、闇落ちしたかも知れない。
私の大事な友人。
傷つける者、許さん。
クルミちゃんを庇った赤間くんは、クルミちゃんごと、デス・スパイダーのあのぶっとい脚に、刺し貫かれたそうだ。
そこに現れたアイお母さん。
デス・スパイダーを倒し、二人に近づくと、勇者小角のナノマシンが二人に移ったそうだ。
この勇者小角のナノマシン、何やら方向性があるらしく、誰彼かまわず憑依するのではないらしい。
憑依の判断基準は分からないが、この二人は一命を取り留めた。
赤間くんは炎を使う騎士、焔騎士だと、円が言った。
クルミちゃんは魔法使いの系列で、波動使い。
エノンは不満そうに私を見ているけど、私としては、エノンはそのままでいて欲しい。
円の魔力が周囲に満ち始め、楠の騎士団が活性化し始める。
「ホッシーのファン、すげぇな?世界政府に喧嘩売ったって?」
答えたのはホッシー。
「ええ、そうよ。まさか『俺は少佐@突撃さん』が、本物の軍人さんだったとはね、それも、他国の!」
「階級、国家元帥レベルだって?パーシー、助けに行ったんだろ?」
「軍事大国の国だけど、兵器はほとんど真杖に抑えられていたな。それでも、電子機器の兵器が使用できないって知ると、小銃と軍刀で暴れ回っていた。凄いテンションの軍人さん達だった。あれは軍、と言うより英雄、勇者達だな」
「?なんだそれ?」
「軍は国を守るんだ、国民じゃない。突撃さんは国じゃなくて、子供や、みんなの前に立って、奮闘していた」
「あの改造された怪物に、銃とか軍刀とか効果あるの?」
「銃も剣も基本無効だ。でも一部の人が操る軍刀は有効だった、ぶった切っていた」
「なんだそれ!?凄いな?闘気か?」
「魔力に手が届いている人は、あの怪物達を倒せるみたいだ」
ここで私は聞いてみた。
「手が届くって、どういうこと?」
楠の騎士団、野球部メンバーは死の世界で修行をして黄泉帰った戦士だ。
ホルダーアキの記憶を封印している今の私より、断然強い。
そして、色々なことを知っているはず。
私が言葉を発すると、野球部全員(ホッシー以外)に緊張が走る。
「……それは」
?
「どしたん?応えてあげなさいよ!」
「でもよ、ホッシー」
「ハキハキしないわね?あんたらアッキーを虐めていたし、嫌われるのは当然!でもそのアッキーが聞いているのよ?ここは仲直りのチャンスと思って、堂々と答えなさいっ!」
おお、ホッシー、虐められていた私の前で皆に?容赦無し?
答えたのはテルくん。
「そうだな、頭上1㎝上に、魔力の流れがあると思ってくれ」
「?」
なんだそれ?
「この1㎝上に手が届いた者は、魔力を使うことができる」
「届かない人は?」
「使えない。ほんの1㎝なんだが、これに手が届く者は少ない、気づく者もほとんどいない。これに気がつき、届く修行をする、これが魔法使いの一歩さ」
ふーん。
「2歩目は?」
「この届いた手を維持すること、掴んだ幸運を放さない努力をすることさ」
「幸運?不運じゃないの?」
「だな、この魔力を幸運に使うことも修行に含まれる、どう?少しは分かった?」
「ありがとう」
私がお礼を言うと、皆に驚きの波が静かに起きる。
余程、私に嫌われていると思っているんだ。
まあ、当たっているけど。
はい、未だに大嫌いです、野球部メンバー(一部例外あり)
「サイザン、どうだ?」
「円、あと少しだ、皆用意はいいかい?あと5分くらいかな?ア・ダウの封印を解いたら、即、突撃だ」
「デス・スパイダーの巣みたいなのが、沢山周りにあるけど、あれは?」
「すべて焼き尽くす、何も残さない!」
次回投稿は明日 2023/09/28 夜を予定しています。
サブタイトルは 【第55話】 地上戦5 突撃 です。




