【第53話】 地上戦3
今晩は。
投稿です。
「円は、空くん嫌いなん?」
え!?
「え!?」
その質問に、焦る気持ちがちょっとだけ止まった。
涙目が乾き、私を見ながら、にぃっと意地悪な顔付きになったエノンが尋ねる。
勿論、背中合わせに椅子に座っているから、お互いの表情は見えない。
でも、ち、ちょっと!?エノン!?なんて質問するの!?
「私は空くん、大好きよ」
汗ばんだ手に軽く力が籠もる。
「嫌いなん?」
エノン、人が悪いよ!
駄目だよ、そんな質問、私の前で!
「嫌いなわけないよ」
い゛!?
「俺達が生れる前に、死の異界からの侵略があったそうだ。凄い戦力で激戦だったらしい。ホルダーアキは死の異界に一人飛び込み、向こう側から門を閉じたそうだ。エノンさんも一緒に門を潜ろうとしたら、俺達が生れるから、駄目だと、面倒を見てくれと頼んだそうだ。ホルダーアキは俺達の憧れさ」
「じゃ、円はホルダーアキが好きで、空くんは嫌い?」
「エノンさん、そんなに好きって言わせたいわけ?この辺で勘弁してよ、嫌いになれないよ。最初に会った時、その強さに恐怖を感じた。マートルは奪還できないと思った。でも、秋津川はいいヤツだったよ」
「そうね、この辺で許してあげる。円のお陰で空くん、助かっているし、感謝だよ!」
エノンは私の目を見て言った。
ああ、そうだね、エノン、感謝だ。
助けてくれているし、心配もしてくれているみたい。
あ、やば!?
「ハ、ハクッチョン!」
「「!?」」
マッパに毛布一枚は寒いか?
「い、今のくしゃみ?か?」
「可愛いんよ、空くんのくしゃみ!」
「……秋津川、起きていたのか?」
「ああ、よくねた」
「おい、セリフが棒読みだぞ!?」
両腕に魔力を通す。
「あ!?」
エノンがビックリして手を放してしまう。
私は拳を作り、魔力を全身に満たし始める。
「ほう」
驚いた円が振り向き、私を見る。
ナビナナの声は聞こえない。
だけど、微かに存在は感じる。
「円、ありがとう、もう動けるみたい戦況はどうなっているの?」
「空くん、その前に服、着よっか?円、目のやり場に困っているみたいんよ。円?部屋、出よっか?」
(念話で伝えるぞ、この世界が壊れ始めた)
え?
(サイザンの子機が色々な情報を収集している、今回の都市封鎖で真杖の世界征服の情報が漏れた。武装蜂起した国もあったが、次々に制圧されている)
えええっ!?
(サイザンによると、この街に住んでいる歌手が新曲を発表するはずだったらしい)
え゛?それって……?
(今まで、一度も約束を違えたことがなかったらしくてね、ファンの一部がこの街を尋ねたり、海外のファンが独自に情報収集をしたりして、都市封鎖にほころびが出たそうだ)
海外のファン?
(軍人さんらしいぜ、で真杖の政府乗っ取りまで辿り着いた)
恐ろしい?いや頼もしいねぇその歌手のファンさま。
(だが、電子機器制御の武器は全て使えない、ただし真杖サイドは別だ。それに合成された人族、世界に混乱が広がり始めている)
なら、世界連合ビルの真杖は、一刻も早く倒した方がいいんだね。
(そうだけど、分体が飛び散ったらしい……今真杖は世界に13体いる)
え!?
(一番魔力のある真杖はあの建物にいるけど、時間が経つと、真杖は成長するんだ)
植物みたいだね。
(俺は、あいつドライアドの末裔か、能力を移植された兵器なんじゃないかな、と思っている)
!
今、何かが、胸の内で頷いた!?
(あの能力、魔力の多さ、強さ、絶対魔族が関係している!)




