【第5話】私の日常は非日常
今晩は。
投稿です。
結局、害獣は不起訴となり、今でもセンセーをしている。
大人は、小学生の言うことを信用しないらしい。
この国の制度、大丈夫か?
まあ、私が投げ付けたグランドピアノの破片に、録音したスマホが潰されたのは痛かった。
大事な証拠が……すまん、みんな。
え?害獣?害獣は車椅子だよ。
今では車椅子先生として、人気があるみたいだけど。
一応、耳元で警告はしておいた。
次はないよ、と。
XXXXがXXXXになるからね、と。
私のエノンやクルミちゃん、弟のような兄のような、赤間くんを傷つけるヤツは許さん。
まあ、2、3回このようなことがあった。
……4、5回かも知れん。
みんなが、心配するはずだよね。
切れるなよ、と。
同じ小学校の同級生は、大なり小なり私が危ないヤツという認識がある。
修学旅行でも、タクシーひっくり返したし。
何があったんだろうね、私。
……お、次は体育の授業だ。
体操服に着替える時、クルミちゃんは私の背中を気にする。
みんなに見えないように、盾になってくれるのだ。
彼女は知っている。
私の背中には、左肩から右のお尻に掛けて、一筋の線が走っていることを。
痣だろうか、幅1㎝程の傷跡のようなモノがあるのだ。
最初アイお母さんが見つけたときは、虐待の傷跡と思ったらしい。
いや、今でも思っている。
まるで、後ろから斬られたような痕なのだ。
私も、そんな痕があるとは知らなかったので、指摘された時はかなりショックだった。
それ以来、好きだった温泉が苦手になった。
小学校の時の修学旅行お風呂は、クルミちゃんとエノンが必死にガードしてくれたけど。
俯き加減で、体育館を目指す2組の女子メンバー。
美人双子の体操服姿が見れると、浮き足立つ男子達。
……男って奴ぁ。
何事も、ありませんように。
これ以上、親に迷惑掛けたくありません!
ただ、うちの両親、やるなら徹底してやり抜け、とか言うんだよねぇ。
血の繋がりはなくても、どこか繋がっているのかしら?
ふっと目が何かを捉える。
右目は見えないけど、左目はよく見える。
捉えたのは美人さんの双子。
広い体育館、すぐに二人を見つけた。
なぜか気になるあの二人。
ん?
体育の授業だよ?
落とせよ化粧。
いや、まだ中学生だろ?いいのかな?
先生、見えているでしょう?耳のピアスあと。
アレはリップ?いえいえ、どう見ても口紅でしょう?
なぜあの二人だけ特別扱いかなぁ?
義務教育はどこへ行った?
まずはエノン達と双子チームの練習試合。
私は横でパスの練習。
試合開始と同時に怪我人が出た。
肘打ちだ!確かに見た。
噂通りの二人だった。
お顔を押さえて座り込む、エノン。
「エノン!?」
小さい悲鳴をあげるクラス女子。
怒りを露わにする隠れエノンファンの男子達。
鬼のような形相になる赤間くん。
そしてダッシュで駆け寄る私。
が、である。
何事もなく進むプレー。
おい、止めろよ!ゲス崎!
控えのくるみちゃんがプレーを無視して、エノンに駆け寄る。
保健委員のくるみちゃん。
くるみちゃんは男女問わず優しい。
時々勘違いした男子が言い寄ってくるけど、全て私とエノンとホッシーで撃退する。
(ホッシーは4組なのだが、ちょくちょく2組にやって来るのだ)
美観のスリーポイントが決まると、そこで笛が鳴った。
遅すぎだろう!授業だぞ!?怪我人だぞ!
「うう、いててて、油断した」
「腫れてきた!保健室行こうね!」
クルミちゃんがエノンの手を取る。
「おいおい、ボールがぶつかったか?それくらいでどうした!軟弱だな!」
おいおい……先生の言う言葉か?
私の後ろから声を掛け、肩に手を……え?なんで私の肩に手を置こうとするの?
パシッと振り向くことなく脂ぎった、イモ虫みたいな指を払う。
「気やすく触るんじゃねぇ!」
と言えたらいいんだけどねぇ。
「カラ、声でてるぞ!」
あ?
まじぃ、でてた?
突っ込みありがと、赤間くん。
突然切れて叫び出すゲス崎。
大きい声出して脅せば、小さな子供や、女子はすくみ上がるってか?
デカい声さえ出せば、言うことをナンでも聞くと思っている輩だ。
「きさまぁあああそれが教師に対する態度かあああああっ」
私は更にデカい声で返事をした。
「だったら教師らしく振舞えよ?」
残念だったね?デカい声ぐらいじゃ竦みませんよ。
ひゅん!
かなりのスピードでバスケットボールが飛んでくる。
狙いは私の後頭部である。
よっ。
パチッ!
軽い、乾いた音が体育館内に響く。
目を見張るゲス崎と、ボールを投げつけた腐った美観。
私は、飛んできたバスケットボールを左手だけで摑んでみせた。
まず、私の小さな手では摑むのは不可能、と思うだろうなぁ。
でも何故か、私の握力は時々100㎏wを軽く越える。
理由は知らない。
私は、軽く美観を睨み、真後ろにバスケットボールを軽く投げた。
見もせずに、カンで後ろに投げた。
多分、ゴールする。
パスッ。
ほらね。
乾いたゴール音が聞こえた。
響めく体育館。
私は極悪双子コンビに、ニヤリと笑って見せた。
ん?笑い声?エノン?
「クスッ、アキくん、オウンゴールよ」
エノンが腫れたお顔を押さえ、笑いながら言う。
「おうん?オウンゴールってなに?」
「知らないの?」
「知らないわよ、それより、保健室行こう!」
私とクルミちゃんは絵音を両側から挟み込み、保健室に連行する。
後ろから怒鳴り声が響く。
ゲス崎先生?あんなの無視!無視!
途中、体育館との渡り廊下で、パトカー?消防車?のサイレンを耳にする。
「最近多くね?」
エノンが外に眼を移す。
「アレじゃないの?あの黒い獣!」
クルミちゃん、ゴシップ好きだねぇ。
次回投稿は 2023/08/12 21時から22時の予定です。
サブタイトルは 【第6話】壊れ始める日常 です。