【第43話】攻防戦8 私は、ざまぁと言いたい
お早うございます。
朝刊です。
ちょっとお話しが長いです。
げし、げし、と踏み、蹴られる。
理不尽な暴力は続く。
この呪弾は凄いな、能力が乱される?
いや、能力だけではない。
考えや、思考まで乱される!
意識が遠ざかる、集中ができない!
ア・ダウと対峙した瞬間から、明季の性格が強く出てきた。
普段より、より攻撃的で過激な性格になっている!
それに、アトロニアやルカトナの名前に亜紀が反応した。
記憶の封印が解けかかっている!?
だって、私はここまで攻撃的な性格ではない。
おしとやか、とは言わないけど、暴力は基本、嫌いなのだ。
その私が、力を振るいたがっている!
理不尽に対する怒りが、内側に充ち満ちている。
まあ、5年ゴブリンの能力は使っているけど。
(ご、ご主人さまン!アタッチメントの装着を!これ以上の暴力は危険です!なぜ許可しないのですかン!?)
一方的な暴力は続く。
げしげし。
「あのっ!あいつ!あの清掃員!全てはあいつだ!あの和魂が全てを変えたのだ!校長も!一場も!そしてまどかも!」
「呼んだか?ア・ダウ?」
!
(ご!?ご主人さまン!援軍ですわン!)
円がその剣を一振りする。
地震か?
ドゴオオオオオオオンッ!
轟音と共に、大地が揺れる。
凄い力、魔力の渦だ!
銃器を携えた兵士達、周辺の重火器が一瞬で吹飛び、脳内の赤い点が次々に消えていく。
「おや?遅ればせながら、お味方の登場よ」
うわぁア・ダウ、余裕の発言だ。
「俺の亜紀をよくも……」
は?
え?
何ですと?
いつから俺の空?
誤解を招く言い方、やめてくださいっ!
私、円、苦手なんですけど!
声大きいし、態度でかいし、上から目線だし!
なにかとカッコつけたがるし!
(……ご主人さまン、円さまが揺れるのは、ご主人さまの前だけですわン)
え?なにそれ?
(気づいてくださいですわン!)
なにに?
(……)
ア・ダウがゆっくりと手を振る。
ズッ、と大気が動く!
な、何!?この魔力の流れ!?
え?この世界って魔力、薄いはずじゃなかったっけ!?
円は内側にある自前の魔力を使っているけど、ア・ダウはこの世界の魔力を集めて使っている!
(ご、ご主人さまン!重力魔法ですわン!)
まどかっ!?か、回避っ!
「ま……ど……ゲホゲホッ」
こ、声がっ!?
重力魔法!?
記録にないわよ?そんな魔法!?
直系1m程の丸い窪みが突然、円の前に現れる。
大地に現れた窪みは、瞬時に周囲を押し潰し広がった。
ベキバキと潰されていく周囲の建築物。
散乱した重火器もプレスされ、コピー用紙のようにペラペラになっている。
金属が瞬時に押し潰され、熱を放ち引き延ばされる。
唯単に、上からの重力攻撃ではなさそうだ。
これは回避が難しいぞ、それに突然発動されたらヤバい。
そのエネルギーは凄まじく、範囲内は全て押し潰されていた。
「どう?動けないでしょう?這いつくばりなさい!それとももう死んだかしら?」
が、円はその中で平然と起立していた。
「くだらん、俺には無効だ」
「!」
それどころか、スタスタと近づいてくる。
ア・ダウは私の髪を摑み、素早く後方へ退く。
しかし凄いジャンプ力だな。
魔法でサポートしているな。
「チッ、さすがは勇者が作り育てた家系か?」
「あ、それ間違いな。勇者を生みだした家系だ。勇者はうちの家から出た単なる有名人扱いな。俺ら本家の真打ちは禁足と言われているぜ」
「禁足?」
「足を踏み入れること、まかり成らんっ、てね。お前、真杖の分体だろ?本体は知っているぜ」
「!」
その時、私を摑んだ手が千切れ飛ぶ。
「うがっ!」
後方からの風魔法攻撃だ。
そこには鬼のような形相のホッシーがいた。
ドラゴンの目も赤く光り、その頭の上に乗っているマートルもビキビキとゾアントロピーを起こしている。
いつの間に!?
落下する私をキャッチしようと、マートルが動くが、真杖の無詠唱攻撃が速かった。
雷撃だ!
マートルは弾け飛んだが、雷撃の効果はホッシーの魔法障壁に阻まれた。
「何者だ?きさま?どこで覚えた、その魔法障壁!」
焦り出すア・ダウ。
残った腕で、再び私の髪を掴む
「よくも私のアッキーを!」
ホッシーは髪が揺らめき、勇者朱天童子のような角が現れる。
「我が姉をよくも!」
あ、マートル、人格変わった。
「……」
ドラゴンはバリバリと放電を始めた。
ここまでね、ア・ダウ。
「な、何だと?私が倒れても本体がいる!それにこの世界には私より強力な分体も存在する!」
「ああ世界連合ビルに、でしょう?」
「!」
ヨロヨロと立ち上がる私。
「髪、放してくれる?」
「なっ!?喋れるのか?呪弾の影響下ではないのか?」
「ナビナナが解析した。それに今の私、痛感無効なの、知っている?5年ゴブリンのスキルよ」
「!……き、きさま!?」
ア・ダウの視線が私の身体を舐め回す。
今の私はほぼ全裸である。
銃撃でお気に入りのセーラー服はボロボロで、ほとんど残っていない。
重くて暑いセーラー服。
それでもお気に入りだったのに。
そのセーラー服の残骸から垣間見えるのは割れた腹筋。
盛り上がった肩の筋肉。
やや太い頸、薄い腰。
低い声。
その容姿はどう見ても?
「今私、男の子なんだ」
「な、何だと!?」
「あなたを確実に仕留めたくて、ゴブリンのスキルを多用していたらこうなった。阿騎の意識が強くでているみたい」
青ざめるア・ダウ。
「そして阿騎くんも明季ちゃんも、凄く怒っているんだ、私、空が抑えきれないくらいに。空はあなたから、もっと色々なお話しを聞きたがったけど、もう限界、ダメみたい、怒りがオーバーフローだ」
「な、何だと?」
「間合いに入っているぜ?」
「な、何を言っている!?」
記憶を復活させていない私は、意思の複合体だ。
一つではない、そんな感覚なのだ。
多重人格?
違う気がする、だって皆基本はアキだし。
そして私の動きとタイミングは、絶妙だった。
ポン、と軽くア・ダウの足を踏んだように、見えるだろう。
実際は魔力を込めて踏んでいるから、全身の骨が砕けたかも知れない。
「がっ!」
思わず身を丸くするア・ダウ。
そこへ阿騎と明季が怒りの拳をぶつける。
「ひっ!?」
ボッ!
一瞬、光ったかと思うと、ア・ダウは魔石を残し、この世界から消えた。
男の子の私は『ざまぁ』と言いたかったが、女の子の私がそれを拒んだ。
ここまで酷い目に遭ったのに、空は拒んだ。
たとえ憎悪の対象でも、言いたくないと。
阿騎と明季は思った。
戦いは俺達に任せろ、お前は向いていない。
そして亜紀は優しく空の心を抱きしめる。
空は死んでいった者達に対して、涙を流していた。
それは怒りと悲しみの涙だ。
次回配達は 2023/09/18 朝の予定です。
サブタイトルは 【第44話】世界連合ビルで待つ です。
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