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続 The Lily 前世の記憶は邪魔である   作者: MAYAKO
第一章 礼羽編
43/95

【第43話】攻防戦8 私は、ざまぁと言いたい     

お早うございます。

朝刊です。

ちょっとお話しが長いです。

 げし、げし、と踏み、蹴られる。

 理不尽な暴力は続く。


 この呪弾は凄いな、能力が乱される?


 いや、能力だけではない。

 考えや、思考まで乱される!

 意識が遠ざかる、集中ができない!


 ア・ダウと対峙した瞬間から、明季の性格が強く出てきた。


 普段より、より攻撃的で過激な性格になっている!

 それに、アトロニアやルカトナの名前に亜紀が反応した。

 記憶の封印が解けかかっている!?


 だって、私はここまで攻撃的な性格ではない。

 おしとやか、とは言わないけど、暴力は基本、嫌いなのだ。


 その私が、力を振るいたがっている!


 理不尽に対する怒りが、内側に充ち満ちている。


 まあ、5年ゴブリンの能力は使っているけど。


(ご、ご主人さまン!アタッチメントの装着を!これ以上の暴力は危険です!なぜ許可しないのですかン!?)


 一方的な暴力は続く。

 げしげし。


「あのっ!あいつ!あの清掃員!全てはあいつだ!あの和魂が全てを変えたのだ!校長も!一場も!そしてまどかも!」


「呼んだか?ア・ダウ?」


 !


(ご!?ご主人さまン!援軍ですわン!)


 円がその剣を一振りする。


 地震か?


 ドゴオオオオオオオンッ!


 轟音と共に、大地が揺れる。


 凄い力、魔力の渦だ!


 銃器を携えた兵士達、周辺の重火器が一瞬で吹飛び、脳内の赤い点が次々に消えていく。


「おや?遅ればせながら、お味方の登場よ」


 うわぁア・ダウ、余裕の発言だ。


「俺の亜紀をよくも……」


 は?


 え?


 何ですと?


 いつから俺の空?


 誤解を招く言い方、やめてくださいっ!


 私、円、苦手なんですけど!


 声大きいし、態度でかいし、上から目線だし!


 なにかとカッコつけたがるし!


(……ご主人さまン、円さまが揺れるのは、ご主人さまの前だけですわン)


 え?なにそれ?


(気づいてくださいですわン!)


 なにに?


(……)


 ア・ダウがゆっくりと手を振る。

 ズッ、と大気が動く!


 な、何!?この魔力の流れ!?


 え?この世界って魔力、薄いはずじゃなかったっけ!?

 円は内側にある自前の魔力を使っているけど、ア・ダウはこの世界の魔力を集めて使っている!


(ご、ご主人さまン!重力魔法ですわン!)


 まどかっ!?か、回避っ!


「ま……ど……ゲホゲホッ」


 こ、声がっ!?


 重力魔法!?


 記録にないわよ?そんな魔法!?


 直系1m程の丸い窪みが突然、円の前に現れる。

 大地に現れた窪みは、瞬時に周囲を押し潰し広がった。

 ベキバキと潰されていく周囲の建築物。

 散乱した重火器もプレスされ、コピー用紙のようにペラペラになっている。

 金属が瞬時に押し潰され、熱を放ち引き延ばされる。


 唯単に、上からの重力攻撃ではなさそうだ。

 これは回避が難しいぞ、それに突然発動されたらヤバい。

 そのエネルギーは凄まじく、範囲内は全て押し潰されていた。


「どう?動けないでしょう?這いつくばりなさい!それとももう死んだかしら?」


 が、円はその中で平然と起立していた。


「くだらん、俺には無効だ」


「!」


 それどころか、スタスタと近づいてくる。


 ア・ダウは私の髪を摑み、素早く後方へ退く。


 しかし凄いジャンプ力だな。


 魔法でサポートしているな。


「チッ、さすがは勇者が作り育てた家系か?」


「あ、それ間違いな。勇者を生みだした家系だ。勇者はうちの家から出た単なる有名人扱いな。俺ら本家の真打ちは禁足と言われているぜ」


「禁足?」


「足を踏み入れること、まかり成らんっ、てね。お前、真杖の分体だろ?本体は知っているぜ」


「!」


 その時、私を摑んだ手が千切れ飛ぶ。


「うがっ!」


 後方からの風魔法攻撃だ。


 そこには鬼のような形相のホッシーがいた。

 ドラゴンの目も赤く光り、その頭の上に乗っているマートルもビキビキとゾアントロピーを起こしている。


 いつの間に!?


 落下する私をキャッチしようと、マートルが動くが、真杖の無詠唱攻撃が速かった。


 雷撃だ!


 マートルは弾け飛んだが、雷撃の効果はホッシーの魔法障壁に阻まれた。


「何者だ?きさま?どこで覚えた、その魔法障壁!」


 焦り出すア・ダウ。

 残った腕で、再び私の髪を掴む


「よくも私のアッキーを!」


 ホッシーは髪が揺らめき、勇者朱天童子のような角が現れる。


「我が姉をよくも!」


 あ、マートル、人格変わった。


「……」


 ドラゴンはバリバリと放電を始めた。

 ここまでね、ア・ダウ。


「な、何だと?私が倒れても本体がいる!それにこの世界には私より強力な分体も存在する!」


「ああ世界連合ビルに、でしょう?」


「!」


 ヨロヨロと立ち上がる私。


「髪、放してくれる?」


「なっ!?喋れるのか?呪弾の影響下ではないのか?」


「ナビナナが解析した。それに今の私、痛感無効なの、知っている?5年ゴブリンのスキルよ」


「!……き、きさま!?」


 ア・ダウの視線が私の身体を舐め回す。


 今の私はほぼ全裸である。


 銃撃でお気に入りのセーラー服はボロボロで、ほとんど残っていない。


 重くて暑いセーラー服。

 それでもお気に入りだったのに。


 そのセーラー服の残骸から垣間見えるのは割れた腹筋。

 盛り上がった肩の筋肉。

 やや太い頸、薄い腰。

 低い声。


 その容姿はどう見ても?


「今私、男の子なんだ」


「な、何だと!?」


「あなたを確実に仕留めたくて、ゴブリンのスキルを多用していたらこうなった。阿騎の意識が強くでているみたい」


 青ざめるア・ダウ。


「そして阿騎くんも明季ちゃんも、凄く怒っているんだ、私、空が抑えきれないくらいに。空はあなたから、もっと色々なお話しを聞きたがったけど、もう限界、ダメみたい、怒りがオーバーフローだ」


「な、何だと?」


「間合いに入っているぜ?」


「な、何を言っている!?」


 記憶を復活させていない私は、意思の複合体だ。

 一つではない、そんな感覚なのだ。

 多重人格?

 違う気がする、だって皆基本はアキだし。


 そして私の動きとタイミングは、絶妙だった。


 ポン、と軽くア・ダウの足を踏んだように、見えるだろう。


 実際は魔力を込めて踏んでいるから、全身の骨が砕けたかも知れない。


「がっ!」


 思わず身を丸くするア・ダウ。


 そこへ阿騎と明季が怒りの拳をぶつける。


「ひっ!?」


 ボッ!


 一瞬、光ったかと思うと、ア・ダウは魔石を残し、この世界から消えた。


 男の子の私は『ざまぁ』と言いたかったが、女の子の私がそれを拒んだ。


 ここまで酷い目に遭ったのに、空は拒んだ。


 たとえ憎悪の対象でも、言いたくないと。


 阿騎と明季は思った。


 戦いは俺達に任せろ、お前は向いていない。


 そして亜紀は優しく空の心を抱きしめる。


 空は死んでいった者達に対して、涙を流していた。


 それは怒りと悲しみの涙だ。


 挿絵(By みてみん)

次回配達は 2023/09/18 朝の予定です。

サブタイトルは 【第44話】世界連合ビルで待つ です。


こ、高評価、ありがとうございます!

お話しを評価して貰えるのは、大変嬉しいことです。

とても励みになり力が湧きます。

感謝です。


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