【第29話】蘇る記憶
お早うございます。
朝刊です。
すみません、朝刊にしては遅いですね。
ちょっと遅れました。
駅前に立つ6人。
ホッシーこと、星野輝里がマッパのキャプテンを見つめる。
背中にも認められる手術痕。
(リハビリ、大変だったろうなぁ、後遺症とか無いのかいしら……)
ホッシー自身の服装はボロボロである。
(さすがにこれは恥ずかしいわ、ファンには見せられないお宝容姿!ああん、一部のファンにはご褒美かしら?)
目聡いホッシーは自分のスポーツバックを見つけ出し、ちゃちゃっと着替える。
(おじいちゃんもおばあちゃんも、あのチビちゃんも気配を感じない、逃げ切ったみたい)
「確か、もうワンセット……あった!」
引き裂かれたスポーツバックから、予備のジャージを引き出し、キャプテンに渡そうと近づく。
「キャプテン、これ、私のだけど着る?」
「あ、ホッシー?」
「振り向かないでっ!」
「え?」
「変なモノ見せないでッ!」
「あ」
「あ、じゃないわよ!もう!はい、これあげるから!」
ジャージ上下を差し出すホッシー。
「あ、ありがとう……洗濯して返すね」
「いい、いらない。返されても着ない」
「なんで?」
「生理的に無理」
(着れるわけないでしょう!ホッシーとしては無理っ!それにファンが許さないと思う!)
「そ、そうなの?」
「そうなの!」
もそもそ。
ホッシーと喋りながら、ありがたくジャージを着る左近。
「凄い傷ね、クルミちゃんから話だけは聞いていたけど、背中にも……」
「……あまり見せたいモノじゃないんだ」
「あ、ごめんなさい」
「なあ、キャプテン、俺達、怪物に食べられたよな?」
近づいてきたのは、自称盗塁王の1年生、畑野銀だ。
メンバーからはパーシーと呼ばれている。
「ああ、高丸先輩の死体があそこにある……」
氷のような目で死体を一瞬見る左近とホッシー。
自然と6人が集まり、寄り添う。
「キャプテン、なにか夢の中であったよな?友達の死体見て、悲しい、怖い感情は湧くけど、静かな俺が心の中にいるんだ」
「あ、俺も!」
「ロンギ、お前も?」
「ああ」
ロンギと呼ばれた少年は、きっちり学生服を着込んでいた。
龍木主2年生で副部長、ポジション、センターの強肩。
守りの要で、バックホームはまるで槍、ランサーとも呼ばれていた。
自然とホッシーに目が向う5人。
その目は時々、銀色の満月のように輝いている。
人の目ではない。
「え?な、なに?」
「いや、ホッシー先輩、何か知っているかなって思って」
1年の長身、十文字右近がホッシーに歩み寄る。
「ち、ちょっと!ジーク!あんたデカいんだから威圧感凄いのよ!?」
「あ、すんまっせん!」
「悪童監視者の私に、何を求めるって?」
(あああん、なに?このシチュエーション!)
パン!
霊音が響いた。
「あっ!」
全員が、その音の大きさに身を竦める。
「ホッシー?」
「メロディが!今、凄いメロディが浮かんだ!」
次回投稿は 2023/09/06 朝の予定です。
サブタイトルは 【第30話】円卓の騎士と楠の誓い の予定です。




