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続 The Lily 前世の記憶は邪魔である   作者: MAYAKO
第一章 礼羽編
28/95

【第28話】天翔る女の子     

お早うございます。

朝刊です。


「アッキーどうしよう!?ワンワンが、ワンワンがっ!」


 血だらけの犬を抱きしめている、クルミちゃん。


「あいつらっ!殺す!」


 漫画やアニメーションのワンカットのようにふわっ、と空の髪が浮き、蠢き出す!

 怒髪天を衝く、である。


(あ!?)


 一瞬、大きな家?西洋の建物?お屋敷?に楽しく暮らす犬や猫の姿が空の脳裏を駆け抜けた。


(犬猫屋敷の管理人。彼がこれを見たら、あいつら皆殺しだろうな……ん?なんだ?知らないぞ?犬猫屋敷?どこの風景だ?)


「おい、あいつらよりワンワンだ!どうする?病院!」


 今度は、赤間君にお姫様抱っこされている左近。


「だね、赤間くん!エノン!」


 空が声を荒げる


「3丁目の四つ角!動物病院がある!でも、川向こうなんよっ!?」


「あ、あそこか!行ってくる!」


 血だらけの犬を抱き上げると、そのままジャンプする空。

 その姿を、呼吸するのも忘れて見つめる左近。


 彼女は犬を抱いたまま、一級河川、対岸までの数十メートルを飛んで渡ったのだ!


 天を翔るヒロイン、左近はその非現実の風景に呆れ、思わず痛さを忘れる。

 そして、憧れを強くした。


「左近、大丈夫、わんわん助かるよ、お前もな」


「お、お前ら、あれが日常なのか?」


 その言葉を聞き、エノンのお顔が更に殺気立つ。


 挿絵(By みてみん)


「……あれ?うちのアキくんをあれ呼ばわりするん?また貶めるの?アキくんは許しても、うちは許さん!お前だけは許さん!」


 殺気が、触れるようだ。


(きっと音絵ちゃんは、一生許してくれないだろうな)


 独特の音、サイレンが聞こえてくる。

 一台ではない、複数の音が折り重なり辺りは騒然とし始める。


 もうカラちゃんの姿は見えない。


 左近は後悔した。


(なんであの時、意地悪したのだろう。いじめて、涙を流させたんだろう……俺、こんなにもカラちゃんのこと、好きなのに……)


 駆けつける救急隊員、警察官。


 まるで非現実だ。


 意識は遠くなり、左近は闇に中に落ちていく。


 目が覚めるとそこは白い天井。


 集中治療室だった。


 最初に聞いたこと。


「ペロは?」


 ペロは助かっていた。


 どれほどカラちゃんと、そのメンバーに感謝したか。


 左近は肋が折れ、肺、内臓に刺さっていた。

 重傷である。


 空の方も大変だった。


 いつものパターンで怒られる秋津川空。

 警察、小学校、中学校、高校、もはや有名人である。

 この事件は、地方新聞の一角も飾ることになる。


 襲撃者は最低で全治3ヶ月。

 全員病院送りである。


 教科書が当たっただけなのだが、全身打撲、当たった箇所は骨折、5人全員頸椎や腰椎にダメージが残った。


 少年院か鑑別所を覚悟した空だが、どういうわけかお咎めなし、地域清掃ですんだ。


 それだけではなく、空にとって良かったことは、終に、いじめが終わったことか。


 これだけの危険人物、もはや小学校では、誰も手を出さない。


 そして秋津川空は中学に入学する。


 同じ小学校の者達は皆口を噤み、空は生徒の中に埋もれていくはずであった。


「静かにしておけ」


 赤間くんの言葉だ。


「問題は、俺が引受けるから、じっとしていろ!」


「え?進んで問題は起こさないよ?」


 心外とばかりに、赤間君に不満を漏らす空。


「当たり前だ!お前、音ちゃんやクルミちゃんどれだけ心配して泣いたか!」


「う」


 赤間君は知っている。


 秋津川空は家族や友達を大切に思っていると。

 それは長所だと思う。

 そして、思いすぎている。

 これは短所に繋がる。

 いや、弱点かな?

 家族や友人のことで、こいつはいつか命を落とすのではないか?

 そんな心配もしている。


 穏やかな日々。


 本人も、両親も、友達も、事情を知っている中学校の先生達もそれを望んだ。

(一部、それらの話を信用しなかった体育教師を除く)


 だが、世界は大きく動き、変わり始める。


次回投稿は 2023/09/05 朝です。

サブタイトルが変更になりました。

【第29話】蘇る記憶 を予定しています。


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