【第26話】僕はそれを、よけることができた
お早うございます。
朝刊です。
サブタイトル、変わりました。
身体が重い。
全員がそう感じた。
起き上がった者は6名。
「なんで俺、裸?」
野球部キャプテン山波左近は思った。
マッパである。
あ、俺、怪物に食べられた!?
ここはどこだ?
駅?
学校の帰り?
(何処かにいたぞ)
記憶は混乱し、何かを思い出そうとするが、上手くいかない。
その記憶はするりと手のひらをすり抜け、掴めない。
ひびのはいったコンビニのガラスに、裸の自分が映る。
(裸がキーワードだろうか?)
右近は考える。
どうしても忘れたはいけないことが、夢の中で起きたのだ。
裸で思い出す事件?
イヤな思い出がある。
彼のお腹と胸には、手術した痕があった。
ムカデのように身体に這っている手術の痕。
彼は過去にその思いを馳せる。
彼の容姿は、金色の髪に緑色の目。
父親はイギリスの人で、この国に地質調査に来た学者だ。
そして、この国が好きになり、そのまま住み着いて、左近の母と結婚したのだ。
左近はとにかく目立つ子供で、小学、中学校と人気者であった。
その金色の髪は、特に人の目を引いた。
利発で活発、クラスの中心的存在だ。
人望もあり、小学校では野球部のキャプテンを務めた。
中学になると、その人気は爆発した。
英語の発音は抜群、父親譲りであり、スポーツは何でも熟した。
そして、人気者は称賛以上の嫉妬と羨望、ダークサイドも引きつける。
好きもあれば、嫌いもあるのだ。
夕暮れ、河川敷を柴犬のペロと散歩していると、いきなり引き倒された。
ペロは蹴り飛ばされ、左近はそのまま殴られ橋の下に引きずり込まれる。
朦朧とする意識。
何が自分の身に起きたのか、あまりの突然さに考えが追いつかない。
高校生?大学生?左近からしてみれば充分大人である。
中身は分からないが。
「お前の金髪、気に入らねぇんだよ!」
殴られた。
「なんだその目!カラコンか?」
蹴られた。
誰だこいつら?
ペロ!ペロ!
こいつらペロを!
全部で5人。
一人は見たことがある?
同じ中学の3年生か?
怒りが漲っても、どうすることもできなかった。
次に襲いかかる恐怖。
「おい、しっかり撮っておけよ!晒してやる!」
突然の暴力、理不尽である。
「下も金髪か解剖して、調べようぜ!」
叫んでも、わめいても、誰も来ない。
蹴られるだけだった。
悔しくて、涙が出た。
その時、何かが近づいてきた!
「ぎゃっ!」
一番大きな男が顔を押さえて倒れる。
ひゅん!
何かが飛んでくる。
ごっ!
鈍い音と共にまた一人倒れる。
(算数の教科書?見たことあるぞ)
バシッ!
「うげっ!」
(次は、国語の教科書だ!小6の、懐かしいな)
口の中は血の味でいっぱい。
蹴られたお腹や、胸が痛い。
息が……息がうまくできない、耳鳴りがする……。
ゆっくりと身を起こす。
あ!?
……危ない!?
咄嗟に左近は上半身を捻る。
「ぐっ」
身体を捻ると、胸やお腹に激痛が走り、再び倒れ込む。
カーン!
と金属音が響く。
「?」
カンペンが中3の頭に当たった音だ。
「よく、避けたね?」
その声は、聞いたことがある声。
俯き加減の顔、右側を隠した前髪。
「……あ?……カ、カラちゃん?」
「ごめんなさい、カンペン当てるところだったね」
次回投稿は 2023/09/03 朝の予定です。
サブタイトルは 【第27話】巡り会い を予定しております。
【第28話】天翔る女の子 で、【第29話】円卓の騎士と楠の誓い になりそうです。
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