【第25話】常世から現世へ
お早うございます。
朝刊です。
引き締まったボディーのホッシー先輩。
「なに?見つめて?大人っぽい?」
「いや、ホッシーさ秋津川の親友なのに、なんで野球部のマネージャー?前から聞きたかったんですけど」
「なんで今聞くの?」
「黄泉帰って、少し考えが大人になったのかな?いや、何か聞いたらいけない質問みたいで、なんかその、なんて言ったらいいのか?ねえ、副部長、あれですよ!」
「タブーか?」
「そ、そうっ!それですっ!」
「監視よ」
「監視?」
「そ、これ以上私のアッキーを苦しめないように、大親友の私が身を挺して野球部の悪童共を抑えるの!これぞ挺身!アッキーは私に感謝するに違いないっ!さあアッキー!私に感謝しなさいっ!私はアッキーの身代わりよっ!ああん、もう私、そあっいこううううっ!」
身もだえるホッシーに、じりじりと距離を置くメンバー。
心なしか、勇者朱天童子も引いているように見える。
いや、ドン引きか?
『さて、ヨミガエリは6名だ。お前達、現世に戻れば制限を受ける』
「ち、ち、ちょっと師匠!私の見せ場、無かったことにしないでっ!」
『いや、思い出した、昔からお前は理解の外だったと』
「えっ?」
ヒソヒソ。
(ホッシー先輩、理解の外だって)
(登録者のみなさん、歌と外見に騙されてね?)
(今度、レコード出すって言っていたけど)
(レ、レコード!?CDとかじゃなくて?)
(そ、針?で聞くレコードってヤツだって)
(どうやって聞くの?その企画大丈夫?)
(配信とか曲、グッズ販売、凄いらしいけど)
「そこ、うるさいよ!師匠であり、勇者である童子さまのお言葉よ!」
(都合が悪くなると、すぐ話題を逸らす……)
ギヌロッ!
ホッシーの魔眼によそを向く後輩達。
苦笑いで答えるキャプテン。
「現世ではやはり制限を受けますか、俺、魔獣に食べられて、身体ないし」
『身体は私のナノマシンで再現できるが、記憶はそうはいかない』
「記憶?」
『この空間での記憶の持ち出しは、制限される』
「「「「「「!!」」」」」」
『思い出すことが現世での修行になるだろう、以前、秋津川がしていたことだ、今は否定しているようだが』
「みんな、そこは心配ないわ、この歌う魔法使い、ホッシーに任せて」
『ほう、何か手があるのか?』
「黄泉での経験をメロディに変換した。私の脳内で再生するとメロディと共に記憶がフラッシュバックするわ」
『!』
「現世でも上手くいくと思う、私が切掛けになれば、皆の記憶にも繋がるはず!」
(やっぱホッシー先輩頼もしい!)
(影の部長だぜ)
「うふふ、さあ、誉めなさい!尊敬の眼差しを送りなさいっ!」
(これさえなければ……)
「師匠朱天童子、現世に戻れば、我々は中学生?」
「何十年も何百年もここにいた気がするけど」
『ああ、あの空間では中学生だ』
「えええっ?ここまで来るのに、あんなに苦労したのに!?ひっど!」
『まあ、小角程ではないが、私のナノマシンがフォローするだろう。では皆の者、健闘を祈る、さらばだ!』
「え!?」
突然の別れであった。
あっさりと勇者朱天童子は消え、荒野が闇に包まれる。
お礼を!と、全員が思った。
しかし、その言葉と想いは、闇に飲み込まれて消えていった。
次回投稿は 2023/09/02 朝です。
サブタイトルは 【第26話】円卓の騎士と楠の誓い の予定です。




