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続 The Lily 前世の記憶は邪魔である   作者: MAYAKO
第一章 礼羽編
23/95

【第23話】それぞれの道     

今晩は。

遅れてすみません。

本日 2023/08/29 23時30分までには挿絵が入る予定です。

「おれはグランドに行くぜ」

「俺も」

「キャプテン、どうする?高丸も行っちまったぜ?」


『どうする?決まったか?』


「俺は、あの世界に戻る」


『ほう』


「何でだよ?理解出来ないよ?野球、出来なくなるって話だぜ?」


「それでも、俺は球場には行けない」


 東野台陸中学の野球部は、全員が同じ小学校の出身である。

 小学校の時から、皆で続けてきた野球だ。


 球場以外の選択はないはずであった。


「もしかしてカラか?偽物事件?」

「ああ、カラちゃん、あんなに泣くなんて……」


『偽物?お前ら、そっとしておけなかったのか?』


「赤鬼さん、そんなに怒らないでよ!こっちが泣きそうだよ!こえーよ!」

「カラの家に謝りに行った次の日にさ、力尽くで謝りに来させたって話になっているんだ」


『……』


「何をしても、皆カラちゃんが悪いように、言うんだ」

「面白おかしく言うか、無視するかのどちらかさ」

「いじめって、集団の病気か?」

「なんかクラスの皆に、取り憑いているみたいだったよな?」


「だ・か・ら!赤鬼さん!お顔が怖いよ!」


『それで?』


「俺達が庇えば、庇うほど、皆エスカレートして……」

「野球部は変なバイ菌、カラ菌に感染したとか言い始めるし」


「で、そんな時、先生がカラちゃん養子だって漏らしたんだ」


「皆が妖怪の子供とか、暴力女だから捨てられたんだとか言い始めて」


『ちょっと、時間旅行してくる、お前らここで待っていろ』


「だーかーらー鬼さん?なんか放電?しているって!近寄れねーよっ!」


「センセー絞めに行くの?」


「……赤鬼さん、カラのこと好きなのか?」


『いじめが許せんだけだっ!それで?その偽物事件が起きたんだな!?』


「うん」


「あまりにもいじめが酷くなったんで、保護者が騒ぎ出す前に先生達が朝礼で全校生徒に注意、勧告?したんだ……副部長、注意勧告使い方、合っていますか?」


「ああ、合っているぞ、そこで言ったんだよな、校長が、俺も聞いた」


「例え両親が偽物でも、愛情は変わりません、いじめはやめましょうって」


『は?』


「朝礼が終わると赤間君、校長室に乗り込んで、ランドセル投げ付けたらしい」


「校長先生、頸椎捻挫」


「原因は野球部キャプテンの俺だ。俺が最初にカラちゃんをいじめた。それから広がって、取り返しのつかないことになったんだ。カラちゃん俺に言ったんだ、両親は偽物でも、愛情は本物よ、って。なあ鬼さん、野球とカラ、どちらか選べって話だろ?俺はカラを選ぶよ、謝ったけど、謝り足りないんだ」


『そうか』


 目の前に残った者は8名。


「8人じゃもう野球出来ないね?」


「そうだね。鬼さん、あそこにどうやって行くの?」


「行き着くだけで、強くなれるの?」


 残った8人を見る勇者朱天童子。


 男子6名、女子2名。


『マネージャーか?』


「鬼さん、野球詳しいの?私はマネージャーだけど、先輩は選手だよ」


『ほう、男子に混じって?』


「ぬ?先輩、サードでレギュラーだよ?女子だからって目で見たら、駄目だよ?」


『俺は人を一人の戦士として見る、男女の区別はしないぞ』


「そ、そうなの?」


『そうだよ、俺達の世界、種族によっては、女性の方が強い』


「へーっそうなん?例えば?」


『獣人族は圧倒的に女性が強い、魔法使いも女性だな』


「ふーん、で、どうやってあそこまで行くの?」


『簡単ではない、歩いてだ』


「歩き!?歩くだけ?15分くらいかな?」


『人によって違う、ここからは試練だ。勿論、いつでも小川は渡れる』


「?」


 そう言って勇者朱天童子は先頭を歩き始めた。


 慌ててついて行こうとする8名。


「なっ!?」

「わっ!?」

「ひっ!?」


 それぞれ叫び声を上げるメンバー。


「え?あ、足が?」


「風景が!?」


「く、くるしいよぉ!歩くだけなのに!?」


「進む度に風景が変わる!?」


『お前達はヨミガエリ、黄泉の世界から帰るのだ、簡単には帰れない』


 その一歩は重く深く、意思を沈める。


 一歩が数年に感じる。


 水の中では呼吸できない、それを強要する苦しさに例えようか?


「キ、キャプテン、ごめん、俺には無理だ球場に行くよ」


「謝るなよ、じゃぁな!」


「キャプテン!引止めないの!?」


「それぞれの道だ!」


「ホッシー、お、お前3歩も歩いたのか!?」


「マネージャーが最強!?」


 少女の一人はキャプテンを追い越し、更に先に進む。

 勇者朱天童子すら、追い越しそうな勢いである。


「き、今日、配信なの!登録者数13万!皆、私の歌、待っているの!止まってなんかいられないのっ!」


 そう言いながら、大量の汗が、指先から流れ落ちる。


「ネット、ダウンしていなかったか?」


「封鎖しているヤツ、全員潰して、復活させるの!立ち止まってなんか、い、いられないのっ!」


 だが、そのホッシーも次第に動かなくなる。


「うう、足が、上がらない!息がうまくできない!」


 皆に私の歌を聞かせるのだ!


 特にあの女!秋津川空っ!

 親友にして最高の好敵手!

 私より歌が上手いなんて、許せん!


 私の歌を聴かせて、「私、ホッシーの歌、好きよ!もう、あなたには負けたわ」と必ず言わせてやるっ!


 その時を想像し、身悶えるホッシー。


「ああああんっ!そあっいこうう!絶対帰るんだ!死んでなんかいられない!」


 再び動き出すホッシー。


 ホッシーは思う。この小さな身体では、この異様な荒野は走破できそうにない!


「だめだ!こんな小さな足では!もっと、大人の、長い、綺麗な、力強くてスラリとした足!身体も大きく!沢山のモノをつかみ取れる大きな、大人の、手!体力、スタミナが欲しいっ!」


 フルマラソン選手のような、トライアスロン選手のような肉体を渇望するホッシー。


 思いが募ると、ホッシーの身体が光り始める。


 一歩、一歩、進む度に、意思が変化し、状態が変わり始める。


 足取りは強く、筋肉質の大人の女性にその姿は変わり始めた。


「もっと力強い身体に!もっと!こんな状況でも歌える肺活量!姿勢!バランス!」


 ホッシーは一歩、一歩、踏み出す度に、苦しみ、身体を変える。


 いつまで続くのだ、この苦しみは?

 負けてたまるか!アッキーが待っているんだ!


 あそこに、帰るんだ!


 お母さんが待っている!

 浮気して出て行ったオヤジなんてどうでもいい!


 クルミちゃんが、レイ・レッドが!


 13万の登録者が待っているのだ!


 そう、女王ホッシーサマの帰還を!


 いつしか、足取りは軽くなり、歌を歌い始めるホッシー。


 透き通る銀の糸のような輝く声。


 そして、ついに荒野の終りに辿り着く。


  挿絵(By みてみん)


次回投稿は未定です。

サブタイトルは 【第24話】円卓の騎士と楠の誓い です。


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