【第22話】憧れ
今晩は。
投稿です。
「……おい、キャプテン起きろよ!」
「?」
「どこだよ、ここ?」
「俺達、死んだよね?ここ死後の世界?」
「なんでみんな、一緒なんだ?」
『時間は充分にある、よく考えて、どちらかを、選べ』
「?」
荒れ果てた荒野で目覚める、15人の少年達。
目の前には大きな赤い鬼。
赤い鬼の先には小川が見えた。
赤い鬼が指さす。
『あれが見えるか?』
小川の向こうに見える防護ネット。
照明、ナイターの設備も見える。
数人の子供達が野球の練習をしている。
声が響き、厳しい練習が行なわれているようだ。
「うわぁ、なにあの設備!?」
厳しい練習、でも、楽しそうである。
広い野球場、周囲は綺麗な花が咲き、小川の向こうは別天地だ。
『あの地に渡れば、大好きな野球が好きなだけ出来る』
「おおおっ!すげーっ!」
歓声に湧く野球部メンバー。
が、キャプテンは冷静だった。
「赤鬼さん、行かなければどうなるの?」
赤い鬼は後方を指さす。
指の先は、黒い雲が渦巻き闇のような世界があった。
『あそこに戻ることになる。あの世界では、もう野球は出来ないだろうな』
「なんで?」
『あの世界を選べば、私の影響でお前達は人ではなくなる。鬼のような戦士になる』
「それはイヤだな」
『ははっ、はっきり言ってくれるぜ、さあ選べ』
その時、一人の少年が闇の中に、蛍のように光る何かを見つける。
「おい、あれカラじゃねぇか?」
「え!?」
「あ、カラちゃんだ!」
そこには止まれの標識を振り回し、異形の怪物と戦う女の子がいた。
「何やっているんだ?あいつ!?」
「後ろに女の子がいる!」
「猫耳!?」
「犬じゃね?」
「変な怪物と戦っているぞ!?」
『あれはお前達の未来の姿だ』
「あれが?」
「カラちゃんが?」
「なんで?」
『あの世界に戻ると、お前達はあのアキのように戦うことになる。さあ、どちらか選べ』
「キャプテン、どうする?カラちゃんだぜ?」
『秋津川がどうかしたのか?』
「小学校の時、カラと野球で勝負したんだ」
『無謀だな』
「ああ、無謀だった」
「カラには酷いことしたよな……」
「始まりは、キャプテンのホームランだったよな?」
「小学校の時、キャプテンのホームランが女の子に当たりそうになったんだ」
「その女の子を庇って、カラちゃんが素手でボールを取った」
「そして、何か叫んで投げ返した」
「ボールは、キャッチャーミットに直接ダイレクトに届いたんだ!」
「怪物みたいな女の子がいるって聞いていたけど、まさか本当にいるなんて!」
「それで、凄い肩だから、野球部に誘ったんだけど、断られて……」
「でも、どうしても野球して欲しくて、一度でいいから勝負してみたくて」
「……いじわるした」
『あいつは見た目と違って大人だったろう?』
「意地悪しても……笑っていた」
「どうしても勝負したいって言ったら、赤間君の立ち会いで、一度だけ投げてくれた」
『ほう』
「こっそり、スピードガンで計ったんだ」
「球速は160km/h越えた。キャッチャーの高丸君はミット吹っ飛んで手と胸骨、肋骨、骨折した。バッターの僕は……球が見えなかった」
『よく生きていたな、キャッチャー』
「うん、痛かったぜ、生れて始めて救急車に乗った」
「カラちゃん、泣いて謝ったよ、謝る必要無いのにね、散々意地悪して、無理強いしたの、俺達なのにさ」
『お前らガキだな?』
「ガキだよ!」
「当時、小学生だぜ!」
『小学生でも、許されることではないぞ?』
「赤鬼さん、凄まないで……なんか漏れちまうよ!」
「今も中学で、ガキと大して変わらないよ!」
「キャプテン、秋津川は何年生の時だっけ?」
「カラちゃん、いっこ下だから4年生だ」
『小4でいじめか?』
「羨ましかったんだ」
「結局、怪我人出て、怒られたのはカラちゃん」
「家まで謝りに来た」
「俺達さいてー」
「それでクラスでいじめが始まったんだ」
『秋津川のクラスでか?』
「カラちゃん、チビゴリとか言われて」
「暴力女とか、傷害女とか」
「カラちゃん、何も悪くないのにね」
『お前ら、野球小僧失格だな?』
溜息交じりの勇者朱天童子。
「ああ、だから俺達、謝りに行ったんだ、カラの家に」
『ほう、勇気あるな』
「カラちゃん、許してくれたけど、赤間くんと桜木さんは許してくれなかった」
「音ちゃん、今でも無視だもの」
「ホッシーから聞いたけど、カラ、野球は好きだけど、嫌いだって」
「なんだそりゃ?」
「キャプテンは知っているよな?」
「ああ、ホッシーから直接聞いた。カラちゃん、野球している男の人の夢を見るんだって」
『!?』
「エッチな夢か?」
「違うよ馬鹿!そんなんだから、カラやオトちゃんから嫌われるんだよっ!」
「その人、カラちゃんを助けようとして、いつも死んでしまうらしい」
「なんだよそれ?ただの夢だろ?」
「何その男?頑張れよ!カラが困っているなら、助けてやれよ!」
『……』
「夢に見るくらいだから、カラのお父さんかな?」
「違うだろ?」
「じゃ、誰だよ?」
「す、好きな人かな?アイドル?」
「大事な人?」
「夢だろ?」
「でも、おれ、そいつに焼き餅焼いてさ、なんで俺じゃないんだろうって」
「なんだよ、キャプテン、カラ好きなのか?」
「憧れているんだ」
「は?憧れ!?」
「世界に通用する身体能力だぜ?超人種じゃん」
「それだけ?」
「いや、なんか大人っぽいし、優しいいし、さ。目が、悲しそう?なぜか、惹かれるんだ!」
「あいつ、化け物だぜ?何処かの組織に捕まって、改造されたんじゃね?それとも珍しいから、解剖されたりしないか?」
「知らないよ、そんなこと!お前、戦隊モノの見過ぎだ!」
「……俺はカラ嫌いだな、あいつ人を馬鹿にしている」
「え?」
「あれだけの実力ありながら、何もしないなんて、なに気取ってんだよって話さ!おれ、球場に行くよ!」
「ああ、僕も球場に行く、だいたい秋津川いじめていたの、何年前だ?もう忘れているよ!僕も覚えていないし」
「そうだよ!キャプテン拘りすぎ!あいつも忘れているって!」
「じゃ、キャプテン先、行ってるよ!」
次々に小川を渡るメンバー。
キャプテンは遙か、黒い雲を見つめる。
次回投稿は 2023/08/29 22時から23時の予定です。
サブタイトルは 【第23話】それぞれの道 です。




