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生への渇望

森がどこまでも続いている。小鳥のさえずり、風に揺られる木々、日光を遮る木の葉。そこに存在しているのは数人の男女。一人はまるで魔法使いのような服装で小柄の少女。一人は首から下が中世ヨーロッパの鎧を装備している、好青年。

一人は両腕がなく目が死んでおり、大量の荷物が入っているリュックを背負う筋肉質な男。好青年と少女は笑顔を浮かべ話しながら、男は下を向き口を開かずに森の奥へ進んでいる。

「どこまで歩けばいいの~?」

「まだまだ、あの木の実はここにはできない。もっと奥に行かないとね」

二人は歩く。歩幅を合わせ、たまに相手の顔を見て。おそらく二人は俗に言うカップルというやつだろう。

「ところでさぁ、なんでこんな男を荷物持ちに雇ったの?。奴隷は町にいっぱいいるわけだからさぁ、わざわざなんで?」

「こいつは、安いんだ。その割に多くの荷物を運べるし、何もしゃべらないから邪魔にならないだろう?」

「確かに。私たちまだ駆け出しだからお金ないもんねぇ」

二人の空間に男は人間として存在はしていない。在るとすれば道具としてだろう。男は物乞いをするわけでもなく、反論するわけでもなく、死体が荷物を持っているようだった。

「魔物とかは出るのかなぁ?最近はいろいろ物騒だし人が襲ってくるかも」

「出ても俺が守るよ……」

「え…………嬉しい……」

少女は頬を赤らめ、視線を逸らす。そんなイチャイチャが繰り返えしていた………………



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



生きていて希望はなかった。僕には何もないし、何も成し遂げられない。

「なんでお前みたい子がおれの息子なんだ!!」

父は僕を毎日殴った。毎日働きに行かせた。毎日酒を飲んでいた。母の顔なんて知らない。小さい僕は父に逆らえるわけでもなく、おとなしく毎日必死に働いた。

        ………………

「かあさん、あのこひとりでないやってるの?」

「あんなの見ちゃダメよ!」

「可愛そうにねぇ、父親は酒に溺れて死んだらしいわよ。母親も産んだとき亡くなったとか……」

他人の目を気にするほど僕には余裕がなかった。ゴミを漁り、地べたで寝た。別に生きたいわけではない。死ねるなら早く死にたい、ただ痛いのが怖いだけだった。

        ………………

「さっさと運べ!!」

誰も助けてはくれない。手を差し伸べられることは人生で一度もなかった。

「お前のせいで仕事がうまく行かねぇんだよ!!」

「そうだ!そうだ!」

手を繋ぐ友だちなんて、想像すらできなかった。いじめられても仕返し


なんて

        ………………

「この奴隷なぜ両腕がない?」

「生まれつきないそうです。しかしご安心を、従順な奴隷ですよし、最低限話せるくらいは教育してます……」

いつからだろう痛みにすら恐怖しなくなったのは。無気力になり淡々と働くようになったのはいつからだろう。別にお金が欲しい訳じゃない。美味しい料理が食べたいわけでもみんなから誉められたいわけでもない。




ただ普通に生きてみたかった

        ………………

「いやぁぁぁ!!」

なんだ?「くるなぁぁぁ!!」うるさいなぁ「グルルルル」ん?

「これは…………」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~そこには5mはおると思われる、巨体が存在した。顔は豚のようで、腹は出ており、腕は太く、木で作られているこん棒を右手に持っている。それには血がついておりその化け物の後ろには人だった肉塊が二つあった。好青年と少女は殺されたのだろう。それは男も理解した

(…………そうか…………やっと終わるのか……)

男は逃げるわけでもなく、恐怖で腰がすくむわけでもなく、ただ化け物を見て動かなかった。男は目の前に在る"死"あっさりと受け入れた。後悔も未練も希望もない。男はまるでゲームのレベリングが終わったかのようにやり遂げたような顔していた。

化け物はこん棒を振り上げる。あと数秒でそれは振り下がり、肉塊が一つ増えるだろう。すると

ピカァァ!!!

「!?」

突然横から強い光が二人を照らした。化け物は、思わず目を塞ぐ。その光がどんどん男の方へ近く。光源はバレーボールくらいのサイズをしたいる宝玉だった。それは中に浮かび男の前へくる。男は目の前の出来事にあっけらかんとしている。すると宝玉は男の体に入っていった、ズブズブと沈むように。

「な、なんだ!?」

男は声を上げる。宝玉は体に入り込んでいくが、痛みはない。それどころか感触すらない。男はその光景に思わず尻餅もつき汗をかく。そして完璧に宝玉が男に入り込んだ瞬間、光は収まり右腕が突然生えてきた。それもない腕が元からあるように自然に生えている。しかも渦のようなタトゥーがうでに掘られている。

「うわぁぁぁ!?」

男はただただ混乱するしかなかった。突然宝玉が現れ、ないはずの右腕がそこに存在している。息が荒くなる、手足が震える。それと同時に男は涙を流し口角は上がった。

(ないはずの腕か、なんで!?なぜだ?どうしてだ?こんなに胸がドキドキするんだ!?)

男の感情は混乱だけではない。そこには喜びがあった。男の普通に生きたいという叶わぬ願望が、現実として今ここに存在している。しかし感情は他にもある、それは恐怖だ。

(………………いやだ…………いやだ

 いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ)

「死にたくないぃぃ!!」

何もなかった男に初めてできたもの

男は失いたくなかった、右腕という希望を。

男は逃げたかった、希望を奪う死と言う絶望を。

男は必死に逃げた。どこに逃げる、どこに隠れる。そこまでの思考は今の状態では到底できない。ひたすらに、後ろを振り向かず。しかし化け物にすぐに追い付かれガシッと掴まれた。決して逃れることはできない、男は足をバタバタと振るくらいしか抵抗ができない。化け物は再びこん棒を振り上げる。男は恐怖で顔が歪み、足をさらに大きく振る。どんな抵抗も無駄だと理解していても、信じたくなかった。こん棒が今振り下ろされようとしたとき


男の腕か化け物の掴んでいる腕に触れた。偶然だった。体の様々な箇所を動かしており思わず腕も動いたのだ。すると

ギュルルルルルルル

触れたとこから化け物を包むように黄金の渦が発生し、ものの数秒間で全身を囲んだ。化け物は訳がわからず混乱している。



ギフト「嵐の右腕」を取得しました


(なんだ?……ギフトって……)

瞬間、化け物は雑巾を絞るように捻られた。掴んでいた手は開き、男は解放され

ギュルル、ギュルルルルルルル

捻りは止まらず、化け物は破裂し血液や内臓が周りに弾けとんだ。

男は尻餅をついたままだ全身に化け物の血液がついていてもそれを気にも止めていない。腕が生え、化け物は突然弾け飛ぶ。そして頭に流れたギフトという単語。男には何一つ理解はできない。ただ唖然とするしかなかった。すると…………

「あなた、何者?」

突然後ろに現れたのは。銀の鎧を装備している、白髪の美しい女性だった





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