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うちの子転生!  作者: 千国丸
69/107

069.救出作戦①

――スラム西部 荒れ果てた区画――


ミケとリュカに案内され、少女達は亜人解放団の拠点があるという古びた商館に辿り着いた。相当昔に建てられたものらしく、廃墟同然の外観を見て本当にここが拠点なのかと訝しむレモティー。そんな彼女に対し、ミケは建屋がカモフラージュであることを説明する。


「綺麗な建物だと人が住み着いちゃいますニャ。だからわざとボロボロの場所を選んでますニャー! 本当の拠点は地下にありますニャ」


「なるほど……確かにこの辺りは建物が朽ちているせいか、住民の姿は殆ど見えなかったね。繁華街からも遠いし、住む人が居ないのも頷けるなぁ……」


ミケの案内に従って少女達が階段を降りた先には、黒く光る無骨な金属扉が設けられていた。溶接により何重にも貼り付けられた鉄板の厚みは相当なもので、大砲の直撃にすら耐えられそうである。昔テレビで見たシェルターの扉を想像しながら、レモティーはリュカに疑問を投げかけた。


「随分と頑丈な扉だけど、この街ではこれが普通なのかい?」


「いや、これは自分達で作った対襲撃者用の防護扉だ。オレ達の活動は憲兵共から目の敵にされているからな……いつ連中が乗り込んでくるとも限らない。だからこうして常時入口を塞いでいる」


「常時かぁ……かなり不便そうだけどさっきの連中みたいなのもいるし、こういう対策はあって然るべきかもしれないね」


「心配せずとも鍛えた獣人であればこれくらいは普通に開けることができる。首輪の制限を受けていてもな」


そう言うとリュカは両足を開き、踏ん張りやすい体勢を作る。そして扉の取手を握り締めた彼は、低い唸り声と共に上腕筋をパンパンに膨張させた。少しずつ鉄塊は動き始めたが、その光景を見ている方にも思わず力が入る。


「大変そうですし、私もお手伝いしますね!」


不意にリュカの背後からメルがひょっこりと顔を出した。彼女はリュカの脇を通り抜け、扉の取手へと指を掛ける。その直後、分厚い鉄板は本のページを捲るかのごとく通路からペラリと剥がされたのであった。呆気なく現れた奥へ続く道を見て、ミケは興奮気味に跳ね回る。


「すごい! すごいニャ! リュカでも全開までに5分は掛かるのに、それを一瞬で開くなんて信じられないニャ!」


「えへへ、私も獣人族ですから! ところで、向こうに見えるお部屋が亜人解放団(レジスタンス)さんのアジトなんですか?」


「あ……ああ、そうだ。団の代表者がそこで待っている。後に付いて来てくれ」


リュカは先導しつつも、メルが見せた怪力に驚きを隠せずにいた。彼女の華奢な指が取手に触れた瞬間、2トンは下らないはずの鉄の塊から重量が消え去った――そんな不可思議な感覚が今も腕に残っていたからだ。いくら獣人といえども、子供の筋力など知れている。獣人の血が薄く、人間族寄りの容姿なら尚更だ。異常すぎるその筋力を驚異に感じつつも、リュカは部屋の扉を数回ノックした。一定のリズムを刻むそれが何かの符丁であることに少女達が勘づいたタイミングで、部屋の中から男性と思しき低めの声が返ってくる。


「合図に間違いはありませんね。入室を許可しますよ」


「客を連れてきた。人間族もいるが心配は不要だ」


リュカは扉に向かってそう告げると、おもむろにレモティー達を振り返った。そして開け放たれた鉄扉を横目に、部屋へ入るように促す。


「オレはあの扉を閉めてくるがアンタ達は構わず入ってくれ」


「扉を閉めるの、お手伝いしなくても大丈夫ですか?」


「問題ない。ついでに外を見回ってくるつもりだ。ミケ、後は頼む」


階段の方へ向かって戻り始めたリュカと交代し、今度はミケが先頭に立つ。任されたとばかりに細長い尻尾を左右に振った後、彼女は扉を勢い良く開いた。


「エリック団長、新しい協力者候補の人を連れて来ましたニャ! さぁ、みなさんも入ってくださいニャ!」


ミケに言われるがまま少女達が足を踏み入れた部屋は、地下にあるとは思えないほどに広かった。石で組まれた四方の壁には背の高い棚が張り付いており、そこには木箱や麻袋が雑に置かれている。


(拠点というよりも倉庫みたいだな……)


失礼な初見の感想を喉の奥に押し込めつつ、レモティーは周囲を見渡した。当然のごとく窓はないため、光源は天井から吊るされた照明のみに頼っている。だが、それは今まで見てきた明かり用の魔道具よりも一回り大きく、部屋の隅々まで見えるほどに眩しい。そしてその照明の直下では、長方形の木製テーブルを取り囲む数人の人影があった。


「おかえり、ミケ。その人達が昼間に言ってた例のお客さんかい?」


中央に立っていた落ち着きのある人間族の男性がミケに声を掛けた。この街では珍しくない深い緑色の頭髪に、中肉中背の30代男性という平凡な外見ではあったが、優しそうな顔つきと穏やかな声色は少女達に安心感を持たせる。


「エリック団長! この人達はすごいんですニャ! さっきアタシ達が広場で襲われた時も、魔法がピカピカってなって……!」


ミケはエリックと呼んだ男性に、広場で襲われたときの一部始終を説明した。すこし誇張された内容もあったが、概ねその通りだったので少女達は黙ってその様子を見守る。


「……なるほど、うちの団員が大変お世話になったようですね。是非お礼をさせてください。大したものは出せませんが、精一杯の持て成しはさせていただきます」


説明を聞き終えたエリックは仰々しくお辞儀をすると、仲間達と共に人数分の椅子を並べ始めた。それが終わるまでの間、少女達は彼らの様子をじっと観察するのであった。


「レジスタンス、なんて言うから武闘派がゾロゾロいるのかと思ったけど、そうでもないみたいね。しかもリーダーっぽいのが人間族っていうのも不思議だし」


「はい、みなさんごく普通の住民さんって感じです。人数も少ないですし、他にも拠点があったりするのでしょうか……?」


小声で意見を交わすココノアとメル。アジトに居た者達は合計で5名しかいなかったので、彼女達は拍子抜けしたのだ。その内訳は人間族男性のエリックを筆頭に2名の獣人族男性、そしてエルフ族の女性が2名である。この国で亜人の奴隷解放を目指す組織としては頼りなく見えてもおかしくないだろう。


「席の準備ができました。場所が場所だけに少し埃っぽいのですが、そこはご容赦ください」


申し訳無さそうな苦笑いを浮かべながら、近くにいたエルフ族女性に飲み物を準備して欲しいと依頼するエリック。そんな彼の振る舞いを見て、レモティーはリセに護団の反刃(パーティ・カウンター)を解くように目配せした。念のためここに来る途中もスキルを使って警戒し続けていたのだが、穏やかなエリックの表情からは危険を感じなかったのだ。


「よし、それじゃ座らせてもらおうか。ユキちゃんも歩きっぱなしで疲れたろ? ボク達はしばらくここで話をするけど、ゆっくり休んででいいからね」


「ユキはまだ大丈夫だよ、ほら!」


尻尾を大きく揺らして元気なことをアピールするユキだが、その瞳は少しトロンとしている。1日中歩き回った疲労が蓄積している事を知っているレモティーは隣に彼女を座らせた。もし眠ってしまったら膝枕で休ませてやるためだ。その隣に続くようにしてメル達も腰掛けていく。


「ユキ……? その女の子はユキという名前なのですか?」


唐突にエリックはユキの名前に反応した。彼の隣に座っていた亜人達も顔を見合わせて小声で何か話し始める。その様子を見たレモティーは、彼らがユキに関する情報を持っていると睨んだ。オキデンスはユキの故郷でもあるため、彼女自身やその母親について知っている者がスラムに存在していてもおかしくはない。


(あの様子、ユキちゃんのことを知っていると見ていい。ただ、彼らに話を聞く前にボク達がユキちゃんを連れている理由を説明したほうがよさそうだ)


すぐにでも情報を引き出したいレモティーであったが、まずは自分達の事から話して様子を伺うことにした。これまで見てきた街の様子から、人間族と亜人の間に大きな壁があることを薄々感じていたのだ。彼女の事をメル達の主だと勘違いしていたゴロツキ共の言動も考慮すると、ユキを誘拐した犯人だと思われかねない。


「エリックさん、だったかな? とりあえず自己紹介をさせてもらうよ。ボクの名前はレモティー、今はデクシア帝国から派遣された特派大使って肩書きだけど、元々東大陸で冒険者をしてたんだ。で、隣にいる彼女達はボクの友人さ」


「初めまして、メルです! 私も冒険者です!」


「うちはココノア。同じく冒険者よ」


「ん、あたしはリセ。冒険者じゃないから自己紹介に困るね……とりあえずは護衛役くらいに思ってもらえればいいから」


「そして、この子は東大陸で保護したユキちゃん。彼女を故郷に返したくてボク達はこの国までやってきたんだ」


レモティー達の自己紹介に耳を傾けていたエリックは、しばらく考え込むような顔つきで瞼を閉じた。周囲の亜人達も揃って難しい顔を浮かべている。子供にしか見えないメルとココノアが冒険者を名乗ったことで、逆に怪しまれてしまったのかとレモティーが冷や汗を流していると、彼は真っ直ぐにレモティーを見据えながら口を開いた。


「1ヶ月以上前に奴隷商に引き渡されたとは聞いていましたが、まさか東大陸にまで連れて行かれていたとは……よくぞ()()()を助けていただきました。感謝の言葉が見つかりません」


「エリックさん、ユキちゃんの事を知ってるんだね?」


「ええ……ですが、直接見知っているわけではないのです。この件について詳しくお話する前に、私達の事をお話するお時間をください」


エリックは椅子から立ち上がり、レモティー達を見渡しながら改めて一礼する。背筋が伸びるような礼儀正しい立ち振舞からは、彼が高貴な人物であることを感じさせた。


亜人解放団(レジスタンス)の代表を務めているエリック=イーレと申します。普段は市民議員をしておりますが、この国の亜人達の扱いに疑問を持ち、この組織を立ち上げました。隣の彼らも私と目的を共にしてくれている同志です」


エリックの言葉に合わせて、獣人族の男性2人とエルフ族の女性2人が会釈した。エリック以外は首輪を付けており、この街では奴隷としての生活を強いられている事が分かる。


「……とは言いましても、まだ団の基盤は弱く、ご覧の通り地下に潜みながら活動する日々ですけどね。それでも、奴隷という存在がこの国から消える日は必ず来ると信じています。ですので今は仲間を増やすべく、貴方達のような理解ある方を招き入れ、ご協力いただけないかお願いしているところです」


「仲間を増やしてるって言う割に随分と少なくない? これで全員なの?」


ふとココノアが質問を繰り出した。彼らにミケとリュカを足しても総勢7名しかいないことに、違和感を抱いていたのだ。問いに対して横に首を振ると、エリックは亜人解放団の現状について語り始める。


「いえ、ここには連絡要員しか置いていないのです。一箇所に集まっていると、どうしても活動が露見しやすくなるので。私達の仲間はスラム内にいるだけでも200人を超えますよ。ダウンタウンにもいる協力者を含めれば、もう少し人数を上乗せできますね」


「へぇ、そんなにいるんだ。ここ以外にも拠点があるってことかな?」


「詳細はお話できませんが、その通りです。私達は常に狙われている身ですので、できるだけ拠点は分散しています」


踏み込んだレモティーの質問にも淀みなく答えるエリック。自らが団長である事を正直に明かしつつも、仲間の安全を考えて情報を伏せた彼の対応から、信用に足る人物であることは十分に伝わってきた。


「では、そろそろ具体的な内容を。私達の目的は議会が制定した"亜人奴隷法"を無くす事です。いずれはこの国も東大陸のエリクシア王国と同じく、亜人と人間が共栄できる国にしたい……そう願っていますが、議会では市民議員の立場が弱く、議題にすらできません。どうにかして法を変えることができればいいのですが……」


「気持ちは分かるけど、うちらが会ったサンディクスとかいう貴族議員を見てる限り、それは難しいんじゃない? 差別意識の塊みたいな感じだったわよ」


「あのマルロフ公と会話を……? ああ、確か先程レモティーさんがデクシア帝国の大使だと仰っていましたね。ご存知かもしれませんが、この国において公爵家は王を凌ぐ強大な権力を持ちます。亜人は人間族によって使役されるべきだと決め付けている彼がいる限り、議会に亜人の身分解放を認めさせることは不可能に近いでしょう」


エリックは無力を嘆くように視線を落とす。それまで彼がどんな苦労を重ねてきたのかは少女達も知り得なかった。しかしサンディクスの言動や、街中で見てきた奴隷の現状を考える限り、奴隷制度の撤廃が遠い夢であることは火を見るより明らかである。そんな絶望的な状況下において、他国の人間に協力を求めたのは何故か――その理由が気になったレモティーは思い切って訊ねてみることにした。


「そういえばミケさんはボク達のことを協力者候補って言ってたね。あれはどういう意味だったのかな?」


「それについても私から説明しましょう。2週間後に王宮広場(プロムナード)にて建国500年を祝う式典が催されるのですが、そこにはオキデンス国王も出席します。我々もその場に赴き、王に直談判を申し込む計画を立てているのです。しかし、式典の開催場へ乗り込むためには参加者の協力者が不可欠……そこで私達は賛同していただける来賓の方々を探していました」


「アタシは団長から言われて身分の高そうな外国の人を探してましたニャ。もし、その人が亜人に優しくしてくれる人なら、仲間になってもらえないか交渉するためですニャ! だからレモティーさん達にメモ入りのパンフレットを渡したのですニャ! でもメモに気付いて貰えなかったらどうしようって、ドキドキしてたのは内緒ですニャ……」


「ふむふむ、ボク達をスラムに呼んだ理由は分かったよ。でもどうして協力者を来賓に限定するんだい? 国内からも式典に参加する人は大勢いるよね?」


レモティーの問いにエリックはコクリと頷いて答える。


「勿論そうなのですが、式典において国王が座る場所は来賓席の隣なのです。市民議員や国内の有力者の座席は王から遠く、直談判するまでに憲兵に取り押さえられてしまいます。だからこそ、来賓の方に手助けいただきたいのです。当日の式典会場を描いた図面がありますので、宜しければご覧ください」


エリックは机の端に置いてあった見取り図を手に取った。テーブルに広げられた紙面には式典会場である王宮前の広場が描かれており、王の位置や来賓の待機場所までが詳細に記されていた。彼が言う通り、王に最も近いのは他国からの来賓だ。これにより、彼らがレモティー達に協力者を求めようとしていた理由が裏付けされた形となる。


「確かにこの図通りならボク達が座る場所が一番近いね。座席に余裕がありそうだし、付き人って説明すれば数人程度なら一緒に入れそうだけど、式典の当日ではこの中の誰かが国王に直訴するのかい?」


「私達も参りますが、相応の立場でないと王は話を聞き入れてくれないでしょう。ですので、獣人族の首長であるミコト様に今回のお役目をお願いするつもりで――」


エリックが喋っていた最中、ウトウトとしていたユキが唐突に顔を上げた。彼女は重大な事に気付いたような表情でエリックの顔を見つめている。


「ミコト……ミコトって言ったの?」


その名前に強い思い入れがあるのか、彼女は繰り返して確認した。落ち着かない様子で狐耳を立てた少女に対し、レモティーはミコトという名前の人物について問う。


「ユキちゃん、そのミコトさんのこと知ってるのかい?」


「うんっ、ユキのお母さんのお名前!」


「「「ええっ……!?」」」


ユキの返事にレモティー達は揃って驚いた。彼女が母親を思い出して辛い想いをしないようにと、わざと詳しく尋ねることは避けていたため、名前すら聞いてなかったのだ。しかもその人物が西大陸の獣人族をまとめあげる立場にあるというのだから、開いた口が塞がらない。


「ちょっと待って、そのミコトって人がユキのお母さんなの!?」


「やはりご息女であられましたか……ミコト様はかつてシニストラ自治区に存在した獣人王家の血を引くお方です。これまで亜人の代表として奴隷制度の撤廃を訴えておられましたので、自治区だけでなくスラム住民からの信頼も厚く、この国に生きる全ての亜人にとって希望の存在でした」


「でした、ってどういう事よ……?」


エリックの言葉にココノアは一抹の不安を感じた。何故そこが過去形になっているのか、どうしても気になってしまう。何故ならミコトという女性が既に亡くなっていた場合、時間的な制約があるメルの蘇生魔法では対処しようがないからだ。ユキをリギサンから連れ出したせいで、残酷な現実を突き付けることになったのではないか――そんな不安が彼女の顔にも出ていたらしく、エリックは慌てて訂正した。


「あ、いえ……誤解を生むような発言を申し上げてしまい、失礼しました。ミコト様は現在もご無事です。ただし国政への干渉を禁じた議会の通達により、自治区にある王国跡の集落に幽閉されている状態なのです。面会すらできないので、今の詳しい状況は我々も把握はできていません」


「良かった、無事ではあるんだね……!」

「驚かさないでよ、まったく……」


レモティーとココノアは安堵した表情で胸を撫で下ろす。しかし、エリックが述べた内容には腑に落ちない点があった。幽閉されている人物が国王へ直訴するなど不可能だ。それでもミコトの名を出したのは何故か、ココノアはその真意を問い質す。


「アンタ達の作戦は分かったけど、捕まってる人物をどうやって連れてくるつもりだったのよ。しかもその場所、結構遠いんでしょ?」


「みなさんが疑問を持たれるのも当然ですね……実は今、ミコト様の救出作戦を練っている最中なのです。しかし幽閉場所には国軍から派遣された1000人規模の部隊が駐留しており、私達だけでの救出は非常に厳しいでしょう。正直な所、今は完全に手詰まりの状態でして……」


「ふーん……だから、うちらの力をアテにしてユキの母親を引き合いに出したわけね」


「お見通しでしたか……恥ずかしながら、私達は手段を選べる立場にありません。式典までの数日間だけでもいいので、冒険者でもある皆さんのお力をお借りすることはできないでしょうか? 無論、私を含む団員達もミコト様の救出作戦には全力を尽くしますが、今は少しでも戦力を増やさなければなりません。どうか、この通りです!」


他の亜人達もエリックに合わせて「お願いします」と頭を下げた。しかし政治的な判断で幽閉された要人を他国の大使に救出して欲しいなど、あまりにも馬鹿げた内容である。下手をすれば外交問題に発展しかねない。彼らも到底無茶な事を言っている自覚があるらしく、顔色は冴えなかった。


「とりあえず頭を上げてよ。情報が少なすぎるから、もう少し教えてくれない? 例えばミコトって人がいる所についてとかね」


「こ、これは失礼しました。確かにお伝えすべき情報は他にもあります。自分達の事しか見えておらず、一方的にお願いしてしまっておりました……」


不躾な自分の行為を猛省したエリックは、それからミコトの状況について説明を行った。その会話において、彼女が王国跡に築かれた要塞で幽閉されている事、そして残忍なやり口で悪名高いゲブラ連隊と呼ばれる者達が守備を任されている事などが判明する。さらにミコトを慕う有志の亜人達が何回か侵入を試みたが、全て失敗に終わっている事もエリックは正直に伝えた。それらの話を総合すると、ミコトの救出作戦は困難を極めることが予想され、亜人解放団が総力戦を挑んでも式典までに間に合わない可能性の方が高かったのである。


「だってさ、レモティー。どうする? ま、聞かなくても分かってるけど」


「みんな意見は同じだと思うから、ボクが代表して言わせてもらうよ」


一方、少女達の意志は既に決まっていた。深い森の中にある集落群をアテもなく巡るよりも、本人に直接会えるのならば、それが最も手っ取り早い解決法だ。それにシニストラ自治区はディア・メトロスから遠く、国賓に関する情報がすぐに届くことはない。従って特派大使の記章を外せばデクシア帝国の関係者であることは隠し通せる見込みがあった。ユキを親元へ帰すための千載一遇のチャンスであると判断したレモティーは、エリックの協力要請を承諾する。


「その任務、ボク達に任せて欲しいな! ユキちゃんをお母さんのもとへ送り届ける事が、ここまできた目的だからね!」


「そのようにご快諾いただけるとは……! ご協力に感謝を申し上げます。しかし、任せて欲しいというのはどのような意味でしょうか? まさか皆様だけでミコト様の救出に向かうおつもりですか……?」


「えっ、そうだけど? 何か問題があるのかな?」


首を傾げるレモティーを見て、エリックの表情に戸惑いが浮かぶ。救出作戦には団の総力を挙げて挑むつもりであり、何も全てを彼女達に任せるつもりではなかった。そもそもゲブラ連隊をたった4人で相手にするのは無謀すぎると彼は訴える。


「いくらなんでもそれは自殺行為です! 現地には5000名近い戦闘兵……それも実戦経験の多い手練ばかりが派遣されています。彼らを相手に4人だけで挑むなんて……!」


「いや、オレは任せてもいいと思うぜ団長。広場で放たれた魔法も凄まじかったが、あの防護扉を指の力だけで動かせる怪力……只者じゃねぇよ、そいつらは。むしろ、オレ達がいたら足手まといになるだけだ」


エリックに声を掛けたのは外から戻ってきたリュカであった。見回りと扉の閉鎖を終えた彼は、少し疲れた様子で入口近くの椅子に腰掛ける。それを見たエリックはレモティー達との話を中断して立ち上がり、リュカの方へ歩み寄った。


「ああ、戻ったんだねリュカ。おかえり、何か問題はあったかな? 随分と疲れているように見えるが……」


「気にするな、さっき()()()()()を受けた名残だ。それより、誰かに見張られていた痕跡が外にあったぜ。オレじゃなかったら気づかない程の高度な隠蔽が施されていた。おそらく腕の立つ傭兵だろう。数日のうちにこの拠点を移す必要があるかもしれないな……」


「そうか、ここも危ないか……傭兵ということは、おそらく貴族議員が独断で差し向けたのだろう。しかし何もせずに退却したというのが不思議だね。他に何か気になったことはなかったかな?」


「そういえば修道服を着た不審者がウロウロしていたのも気になったが……あれは警戒せずともいいだろう。どこにでもいそうな間抜け面の女だったからな」


「修道服だって……?」


修道服を着た不審な女性という言葉に、レモティーはすぐにピンときた。この世界において聖職者風の衣服を纏うのはアイリス聖教の関係者くらいなものだ。脳内に「不審者ではありませんわよ!」という甲高い声が響いた気がしたが、ここでその人物の名を口に出すとややこしくなりそうなので黙っておく。


「ひょっとして、その女性もお知り合いでしたか?」


「あ、うん……知り合いというか、船で一緒になった程度だよ! それよりも、ミコトさんの話に戻ってもらいたいんだけども」


「ああ、申し訳ない。貴重なお時間をいただいているのに、無駄話をしてしまいましたね。リュカはこの団において最も優れた戦士です。彼がそこまで言うのであれば、私もこれ以上は何も申しません。ですが……」


そう言いながらテーブルまで戻ってきたエリックは、別の紙を取り出してテーブルに広げた。今度はディア・メトロスから西部森林にかけて描かれた地図であった。


「無策で突っ込むのは危険です。現地には協力してくれる亜人達がいるので、彼ら宛の紹介状を用意しますよ。あとミコト様の救出に使えそうな資料も整理してお渡したいので、明日の朝までお時間をいただけますか? もう日も暮れていますし、皆様さえ良ければ拠点の一室を宿代わりにお使いいただいても問題ありません。一流ホテルのようにとはいきませんが、普通の宿程度には整えた部屋もありますので」


「ああ、そうしてもらえると助かるよ。それにボク達がここに居たほうが色々と都合もよさそうだしさ」


「そうですね。もし誰かが押し入ってきても、私達で対処できると思いますし」


レモティー達は今夜をこの地下室で過ごすことに決めた。常に危険に晒されている亜人解放団を放っておく気にはなれなかったのだ。もしここを離れている間に彼らが襲撃されてしまったら目も当てられない。


(彼らが心配なのもあるけど、ここでミコトさんに繋がる手掛かりを失うわけにもいかないからね。リュカさんがどんなに強くても、あの首輪がある限り全力を出せないみたいだし、念のために護衛用のペットも配置しておくかな)


レモティーはリギサンに残してきたマンドラニンジンとマンドラダイコンを思い浮かべた。門番として立派に役目を果たしている彼らと同様の存在を、この拠点にも置いておこうと考えたのだ。見た目は手足の生えた可愛げのある野菜だが、その強さは一流冒険者にも匹敵する。自分達が去った後も拠点を守る保険くらいにはなるだろう――そんな思案を巡らせていたレモティーだったが、ふと首輪についてリュカが発言していた内容が気になリ始めた。


「……そういえばさっき、リュカさんは首輪の懲罰がどうのって言ってよね? ボク達が呼ばれた広場でも何か様子がおかしかったけど、その首輪には能力を下げる効果以外にも何か仕込まれているのかな?」


「そうか、アンタ達は知らないのか。この忌々しい首輪には着用者の首を締め付ける機能があるんだ。オレ達はそれを"首輪の懲罰"って呼んでいる。その起動スイッチは亜人を取り締まる憲兵しか持っていないはずなんだが、今日の連中はその模造品を持ってたみたいだな……」


「模造品……?」


「ああ、あいつらが持ってた黒い水晶のことだ。アレは使い捨てだが、首輪の懲罰を強制的に起動させる術式と同じものが込められている。悪趣味な連中が非合法の闇市場(ブラックマーケット)で仕入れて、ああいった馬鹿げた事に使いやがる……ッ!」


リュカは悔しそうな表情で拳を壁に叩きつけた。首輪には身体能力を下げる術式だけでなく、生命すら脅かす恐ろしい機能が組み込まれていたのだ。徹底的に亜人の尊厳を奪うことに特化した首輪がごく当たり前に使われているという事実に、同じ亜人であるメルは表情を曇らせる。


「その首輪、外すことはできないんでしょうか……?」


「不可能ですね……私も彼らを救いたい一心で色々と研究してきましたが、結局外す方法は見つかりませんでした。肌に食い込んでいる上、無理に外そうとすれば懲罰が発動しますし、魔銀(ミスリル)にも劣らない硬度がありますから簡単に破壊することもできません。一度付けられたら最後、死ぬまで外すことができないのです」


リュカの代わりにエリックが答えた。他の亜人達も冷たく光る銀環によって自由を奪われている身であり、その顔つきは暗い。だが少女達は違っていた。エリックの説明にヒントを得て、首輪の解除方法を思い付いたからだ。


「なんだ、要はその懲罰ってのが発動する前に壊せばいいだけなんじゃない。リセ、アレを使えば壊せる?」


「ん、問題ないと思う」


ココノアの指名を受けたリセが椅子から立ち上がった。そして腰の剣を引き抜き、リュカへと歩み寄っていく。顔立ちにはまだ幼さを残す彼女であるが、その佇まいからは百戦錬磨の剣豪を思わせる気迫が放たれており、エリック達は慌てた様子で声をあげた。


「な、何をするつもりですか!?」


「何って……首輪を斬ってあげようと思っただけ。大丈夫、身体に傷は付けないから」


幅広の長剣を両手に構え、リュカへ焦点を定めるリセ。緊迫した空気が張り詰める中、リュカは深く息を吐いてから、意を決したように口を開いた。


「アンタ、本当にこれが斬れるのか……?」


「すぐ終わるよ。動かないでじっとしてくれればね」


「そうか……アイツの前で二度とあんな醜態を晒したくはないからな。アンタの腕に賭けてみるぜ」


不安そうに見守るミケを一瞥した後、リュカは首を差し出すように前屈みになった。そんな彼の言葉に無言で頷いた少女剣士は、スキル名と共に首枷に狙いをつける。


「――装飾破断の一撃(オーナメントブレイク)


銀色の剣閃がリュカの首筋を掠めた直後、そこに取り付けられていた首輪が真っ二つになって床へと落ちた。リセの剣捌きは恐ろしいほどに精密で、彼に一切の傷を与えていない。だが長い間首輪が取り付けられていたせいで、首には痛々しい圧迫痕が刻まれていた。


「恩に着る……! 首がこんなに軽く感じるのは久しぶりだ。何かが触れた感覚すらなかったが、本当にその剣で斬ったのか?」


「この技は()()()()を破壊するものだからね。人体にはダメージを与えないよ」


対人戦スキルが豊富なグラディエイターは、相手の装備品を破壊する技も充実している。その中でも装飾破断の一撃(オーナメントブレイク)は、胸装備に該当する装飾品を破壊する効果を持っていた。NeCOにおける胸装備にはネックレスやブローチなどがあるが、奴隷の首輪もその定義に当て嵌まっており、破壊対象となったのだ。そんなスキルが存在するとはつゆ知らず、エリックとミケは神業とも思えるリセの剣技に嘆息する。


「まさか本当に首輪を破壊できるとは……!」


「すっごいニャー! リュカはこれで自由の身ニャ!」


「ん、他に斬って欲しい人がいたらやってあげるよ。それ、不便そうだしね」


「そ、それは願ってもないお話です! 今から集められるだけの団員を呼び寄せますので、お時間をいただいてもよろしいでしょうか? 首輪から解放されると知ったら、皆がどれだけ喜ぶことか……!」


椅子から腰を浮かせる勢いで願い出るエリックだったが、その様子を見ていたココノアの頭には別の心配事が浮かんでいた。そもそも、このディア・メトロス内において亜人には首輪の装着が義務付けられている。もし首輪を付けていない亜人が憲兵や住民に見つかれば、どうやって首輪を外したのか言及されるのは想像に難くなかった。


「待ちなさいよ、その首輪を付けてなかったら怪しまれたりしないの? この街じゃ亜人はそれをつけてるのが当たり前って聞いたけど」


「同胞達をご心配いただき、ありがとうございます。しかしその点はご安心を。実は首輪の破壊を試みた際、外せた後の事を考えて何の効果も持たないレプリカを作っていたのです。それがあればバレることはありませんよ!」


やや自慢げなエリックの回答に「それなら大丈夫そうね」とココノアは頷いた。そして隣で回復魔法を掛けたそうにうずうずしているメルへと視線を移す。


「ほらリュカの首、治してあげるんでしょ? うちらの事は気にしなくていいから、リセと一緒にここで対応してて。あんな窮屈な首輪してたら少なからず痕跡が残っちゃうだろうしね」


「えへへ、ココノアちゃんには全部バレちゃってましたね! それでは私もリセちゃんに付き添って、亜人さん達のお肌を治したいと思います! レモティーちゃん、馬車の組み立ては手伝えそうにないですけど、いいですか?」


「ああ、大丈夫さ! リセとメルはここで亜人解放団(レジスタンス)の人達から首輪を外す作業に専念してくれればいいよ。ボクはこれからフレイムハートって名前の工房に行って……あ、でもメルのポーチがないと部品が出せないんだった……困ったな」


馬車の部品がメルのポーチに収められていることを思い出し、レモティーは悩ましげに口元へ指を当てた。メルをここに置いていくと、工房で馬車を組み立てるのは困難になる。何かいい解決方法がないかと頭を撚る彼女に、エリックの隣にいたエルフ女性が声を掛けた。


「あの……そのフレイムハートという名前、聞き間違えで無ければ団員達が経営している工房だと思います。何か御用があるのでしたら、お話を伺いますけども……?」


「えっ、そうなのかい? それじゃ、えっと……」


「申し遅れました、わたしはコルチカと申します。名ばかりではありますが、亜人解放団(レジスタンス)の副団長として、他団員との連絡役をしております。スラム内であれば顔はそれなりに効くかと覆いますので、何でも申し付けて下さい」


「コルチカさん、よろしく! 実はボク達は組み立て式の馬車を持参しててね。それを組み立てる場所を提供して貰えないかなって……」


コルチカと名乗った金髪のエルフ女性に対して、創作工房フレイムハートを探していた経緯を話すレモティー。彼女が一通り喋り終えると、コルチカは色白の頬を緩めながら首を大きく縦に振った。


「そういうことでしたら、お力になれると思います。工房の技師をこの拠点近くの作業場へ呼びますので、その馬車を組み立てましょう。首輪を外していただけるとなれば、彼らも喜んで協力すると思います」


「それは有り難いなぁ! 人数さえいれば明日の朝までには完成するだろうし、それならシニストラ自治区にも早く辿り着けるよ。申し訳ないけど、協力してもらっていいかな?」


「ええ、勿論です! ではまず、この部屋の奥にある作業場へご案内しますね。地上に出るための隠し出口が設けられているので、組み上がった馬車を外に出すのにも問題ないと思います」


コルチカの案内に従い、レモティーは早速とばかりに作業場へ移動する。一方、リセとメルは首輪の破壊処理と治癒に対応するため、余ったココノアが必然的にユキの面倒を見ることになった。


「うちら暇になっちゃったし、お絵描きでもする?」


「うん、お絵描きしたい!」


ココノアの提案にユキは笑顔を咲かせる。幸い、絵を描くための道具はトルンデインで購入した魔法の画材がある。趣味用に買っていたものが思わぬ所で活躍するものだと、彼女は嬉しそうに微笑んだ。




――その晩――




深夜でも騒々しい繁華街と異なり、亜人解放団の拠点は暗闇に包まれて廃墟そのものと化していた。しかし地下に隠された秘密の客室では煌々とした明かりが灯っている。エリックが客人のために用意した部屋だ。

内部はやや狭いものの綺麗に整えられており、体を休めるだけであれば十分な環境となっている。朽ちた見かけに反してインフラ類だけは手入れされているのか、身体を洗うための湯や手洗いなど設備も使うことが出来た。


「ふぅ、シャワーを気兼ねなく使えるのは有り難いね」


奥の個室から出てきたレモティーは近くにあった椅子に腰掛け、湿った髪の水分をタオルで丁寧に拭き取る。金色に染まった絹のような長髪は艷やかに輝いており、馬車の組み立てで付着した油やホコリも綺麗に取れていた。その傍ら、一足先にシャワーを終えていたメルとリセ、そしてココノア達はネグリジェ姿でベッドに転がっているのだが、ここである問題が頭をもたげる。


「なんでこの部屋、ベッドがこれ1つしかないのよ……!」


ココノアは並べられた枕をポンポンと叩きながら不満そうに頬を膨らませた。この部屋へ案内する際にエリックは特段何も言ってなかったものの、寝具として用意されていたのは部屋の中央で鎮座している大きめのベッドだけである。子供が半数を占める同性の一団であれば、この部屋で問題ないと思ったのかもしれない。しかし友人の特殊な趣向を把握している彼女としては到底そんなことを認めるわけにはいかなかった。


「レモティーは何するかわかんないし、床で寝てよね!」


「ええっ!? ひどいなぁ……頑張って馬車を組み立てて来たのにさぁ!」


「まぁまぁ、これくらいの大きさなら全員で使えますよ! 川の字になって寝るのなんて久しぶりですし、案外楽しいかもです♪」


「ううっ! メルだけだよ、ボクに優しい言葉を掛けてくれるのは! それにしても、その川の字って言葉には惹かれるなぁ……!」


愛らしい幼女達に囲まれた自分の姿を想像して鼻を伸ばすレモティー。ココノアを丸め込めば夢のロリハーレムが合法的に実現できると踏み、彼女はそれらしい理由をペラペラと説明し始めた。


「ココノアは抵抗があるみたいだけども、ベッドが1つしかないならみんなで仲良く寝る事になっても仕方ないよね! それに夜でも互いで身を寄せ合えば冷えにくいし、とても合理的だ。ただ、体型の違いを考えると、一番身長の高いボクの両サイドはちびっ子のほうが収まりがいいと思う。ベッドに掛かる荷重バランスが偏ったせいでひっくり返ってもいけないだろ? だからメルとユキちゃんがボクの隣で寝るべきだと思うんだけど、どうかな!?」


「このロリコン女ときたら……! それっぽい理屈並べて理想の状況を作ろうとしてんじゃないわよ! メルとユキはうちの隣で寝るのが一番安全だっての」


「ん、寒いのが嫌ならレモティーはココノアでも抱きまくらにしてれば良い。メルの隣はあたしが貰うから」


「リセまで何言ってんのよ!? というか、アンタはショートスリーパーなんだから、ちょっと仮眠すれば大丈夫でしょうが!」


賑やかな掛け合いをするココノア達の隣で、ユキはすっかり睡眠モードに入りかけていた。ベッドに腰掛けたまま、首をコクリコクリと揺らしている。そんな彼女の頭を撫でつつ、メルは唇の前で指を立てて、友人達へ静かにするように促した。


「しーっ……ユキちゃんはこのまま寝ちゃいそうですし、私達もそろそろ休みましょう。ベッドでの並び順ですけど、今日はユキちゃんを中心にして左右に私とココノアちゃん、外側にレモティーちゃんとリセちゃんがくる感じでどうでしょうか。ユキちゃんにとってはこれから大変になりそうですし、できるだけ身体を休めて欲しいんです」


「むぅ……両隣が幼女じゃなくなるのは寂しいけど、バランス的にユキちゃんが一番寝やすいのはその形だろうね」


「うちもそれでいいわよ。レモティーの案よりはまともだし」


「あたしは多分ほとんど起きてるし、外側の方が都合はいいかな」


「それじゃ、決まりですね♪」


八重歯を見せたメルの笑顔により、仁義なき並び順論争は決着を迎える。そしてその半刻後、ベッドの上には幸せそうな顔で眠るユキを囲み、穏やかな寝息を立てる少女達の姿があった。

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