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うちの子転生!  作者: 千国丸
28/107

028.豊穣の乙女④

「いやぁ、今日は格好の旅日和じゃないか!」


朝一番、ブルワールの玄関前へ元気よく飛び出したレモティーは、雲ひとつ無い空を見上げて声をあげた。澄んだ清々しい空気を胸いっぱいに吸い込み、気持ちよさそうに深呼吸をする。一方、そんな彼女の隣ではメルとココノアが少し眠そうに目を擦っていた。


「ふぁ~……まだちょっと眠いわね」


「この体になってから、お化粧の必要がなくなったのはいいですけど、朝が妙に起きられなくて困ります……」


遠距離に移動となるためリギサンへの出発は早朝にしようと事前に決めていたものの、肉体的にまだまだ幼い彼女達は少し睡眠不足だったようだ。日が昇り始めた頃にレモティーに起された2人は、寝ぼけ眼で朝食をとりつつ、なんとか着替えを済ませて玄関までやってきたところである。


「レモティー様の馬車は既にご用意できております。差し出がましいようですが、当宿からのサービスでご昼食用の小包を積ませて頂きました。遠慮なくお召し上がりください」


「ありがとう、助かるよ♪」


レモティーが馬車の荷台に目をやると、そこには宿から提供されたランチバスケットが置かれていた。昼食の時になれば果物の成る木でも生やせばいいかと考えていた彼女であったが、その手間が省けたのは好都合だと微笑む。


「ほら、メルもココノアも早く馬車に乗った乗った! 敷物もあるからお尻は痛くないよ、多分ね!」


野菜を積んできた時は馬車の荷台には藁を編んだ簡素な敷物しかなかったが、昨日の買い物で人を乗せるための小道具を揃えていた。底に敷かれている厚みのある黄緑色のラグは座り心地がよく、見た目も華やかである。地面の振動が伝わり易い無骨な馬車に乗るのであれば、ちょうどいい緩衝材になるだろう。


「お、この敷物いいじゃん。ふわふわしてるし、寝転んでも大丈夫そうかも」


「このネコさんの刺繍が入ったクッションもいい感じですね。お尻が痛く無くて助かります♪」


「あはは、喜んでもらえたようで何よりだよ!」


思いの外、快適な空間となった荷台に喜ぶココノアとメル。その様子を見てレモティーも嬉しそうに笑いながら、荷台の先頭に設けられた運転者用の座席へ腰をかける。


「それじゃあ出発と行こう。馬の手綱はボクが責任を持って握るから心配しなくていいよ。爺ちゃんにみっちり教えてもらったからね!」


レモティーが革の綱をピシャリとしならせると、美しい茶色の毛並みをもった馬がゆっくりと進み始めた。小刻みにガタガタと揺れる荷台から顔をだしたココノアとメルは、ブルワールの従業員へ向かって手を振る。


「また来た時はここに泊まるから、その時もよろしくね」


「お世話になりました~!」


礼儀正しい彼女達につられるように、従業員も笑顔で頭を下げた。


「ありがとうございました! またのお越しをお待ちしております!」


感謝の言葉とともに宿から送り出された馬車は、北門へと向かってしばらく走り続ける。かつて騎兵の運用を考慮して石畳を敷き詰めたとされる大通りは馬車にとっても走り易い道だ。しかも早朝ということもあり通行人も少なく、快適に移動することができた。


「お弁当まで貰っちゃいましたね。お昼が楽しみです♪」


「さっき朝食を食べたばかりでしょあんた……」


八重歯をチラ見せしながら食い入るようにランチバスケットを見つめるメル。実は着替えとヘアセットの時間のせいで朝食をお腹いっぱいに食べることができなかったため、早くも空腹感を覚えていたのだ。獣人の体は見た目以上に筋肉が発達している分、そのエネルギーを消費するのも早い。そのため日本に居た頃の食の細い彼女からは考えられないほどに食欲旺盛な幼女と化していた。


「おや……? 北門に誰かいるな? ちょっとスピード落とすよ」


北門に差し掛かる手前で、唐突にレモティーが馬車の速度を緩めた。ココノアが何事かと前方へ視線をやると、そこにはアイリス教会の司祭と教徒達が道を塞ぐようにして立っていたのだった。


「そこの馬車! 止まれ! ワシはアイリス教の高名な聖職者であるぞ!」


レモティー達の存在に気づいた頭の薄い太った中年男性が声を張り上げる。そのまま轢いてしまっても後味が悪そうだと思い、レモティーは馬車を一旦停止させた。するとアイリス教会の信徒と思われる8名程の男性達が馬車を取り囲んだ。皆一様にアイリス教の女神を象った刺繍が入った白いローブを着ており、手に棍棒のような太い木製の棒を握っている。


「ボク達に何か用かな? これから街から出ていくところなんだけど」


そんなレモティーの問いかけを無視して、司祭風の男は何かを探しているような素振りで馬車の荷台をジロジロと眺める。身に付けている高級そうな袖の広いチュニックと、悪趣味な金色のサークレットだけみれば聖職者のようにも見えなくはないが、その横柄な態度はまさにチンピラにも等しいと言っても差し支えなかった。


「……最近アイリス教会の信徒では無い愚者が、紛い物の癒やしの術を使っていると聞いてな。その輩は北から馬車で来た金髪の女と共に居たという話だが……お前の事だろう?」


「さぁ、何のことだろう? ボクには心当たりないなぁ。金髪の女性なんてそこら辺にいるだろうし、馬車に乗った人も大勢いるじゃないか。他を当たりなよ、太っちょのおじさん」


「ワ、ワシの事を"おじさん"だと……!? アイリス教の司祭位を持つワシを馬鹿にするとは不敬だぞ、小娘っ!」


鬼のような形相で馬車に詰め寄るアイリス教の司祭。何事かと荷台から顔を出したメルは、不運にもそんな彼と目が合ってしまった。


「あれは桃色の毛を持つ獣人の娘……!! 衛兵共から聞いていた情報通りではないか! この者が我らが女神の許可を得ずに、癒やしの術をみだりに扱っている異端者だ! お前達、あの獣人を捕らえよ!」


「えぇーっ!?」


驚くメルの周りに教徒達が集まってくる。彼らはまるで犯罪者を見るような蔑んだ目つきで、彼女を睨みつけていた。そんな視線からメルを守るようにして、ココノアが身を乗り出す。


「はぁ……ほんとに聞いた通りのクソ教徒だわ、この連中。そもそも誰が回復魔法を使おうと、あんた達には関係ないことでしょ?」


「煩いぞエルフの娘! 小汚い亜人共が女神様の使徒である我らに口答えするな! 賜りし奇跡を濫用し、神を冒涜する罪人には相応の裁きを与えらねばな……!」


メルを異端者として認定した教徒達はどうやっても見逃すつもりはないようだ。じわじわと馬車へと歩み寄ってくる教徒達に彼女は困惑する。


「くっくっく、子供と言えど異端者には容赦はせんぞ? まずは裸に剥いてから広場にて磔の刑に処し、その後は三日三晩続く鞭打ちの刑だ。下等な獣のように泣き喚く醜い姿を晒し、我らが女神に許しを請うが良い!」


自らの行いにこそ正義があると思い込んでいる彼は、強い口調で少女達に迫った。異端者と見做した者に対しては徹底的に糾弾して裁きを下す――それがアイリス教の教義でもあったが、彼らがメルを目の敵にしていたのには別の理由もあった。

ドラゴンゾンビ襲撃の一件以降、街の住民達から役に立たない連中と揶揄されていた彼らは、その怒りの矛先を向ける相手をずっと探していたのだ。そんな折に、"魔物の襲撃やデミリッチ戦でケガを負った者が冒険者が使った癒やしの術で助けられていた"という情報を掴んだ彼らは、その冒険者を異端者して貶めることで自らの威厳を保とうと考えた。そして連日、この北門で張り込んでいたのである。


「そこの獣人、その馬車から降りろ!」


「異端者めが! 大人しく我らの裁きを受け入れることだな!」


信徒達がメルを捕まえようと馬車へ乗り込もうとした時であった。怒りの感情を露わにしたココノアが魔力を解き放ったことで、周囲に旋風が巻き上がった。魔法使いの素養がない者であっても、大気をビリビリと振動させるほどの化け物じみた強さは本能的に感じ取ることができるだろう。体から青白いオーラを立ち上らせたココノアは、空間転移により瞬く間に司祭の前へと降り立った。


「聞いてれば異端者だの裁きだの……メルがあんたらに何をしたって言うのよ? うちの大事な友達を傷つけるつもりなら、黙っちゃいないから」


アメジスト色の瞳に強い怒りを滲ませ、ココノアは腰の装具から引き抜いた短杖を司祭へ向ける。その先端は一切ブレることなく彼の心臓の位置を指し示しており、一歩でも動けば魔法で貫いてやるとばかりの気迫を放っていた。


「ひっ……!?」


目の間にいるのは幼い少女だというのに、圧倒的な魔力の差で気圧された司祭は腰が引けてしまっている。目配せをして周囲の人間に助けを求める彼であったが、他の信徒達も魔力に当てられてしまい、一歩として動くことができなかった。


「気が合うじゃないか、ココノア。ボクも同じ気分だったんだ。この無粋な連中には少し痛い目を見て貰ったほうが良さそうだね」


そう言って馬車から降りたレモティーは、右腕をグルグルと回して準備運動を始めた。デミリッチを1人で滅した実力をもつ彼女が力を振るえば、人数の差に意味がないことなどアイリス教の信徒達でも理解できる。最初はアイリス教の名前を出せば大人しく従うとばかり思っていた彼らであったが、身を引くどころか真っ向から歯向かってきた少女達に焦りが出始めた。


「お前達……アイリス教の司祭に逆らうという意味がわかっているのか!? 聖教国を敵に回すと言っているようなものだぞ!!」


「それがどうしたの? うちらの敵に回りたいならどうぞお好きに。そんなつまらない国、簡単に滅ぼしてあげるから」


冷徹な表情で司祭を射竦めるココノア。ますます強まっていく彼女の力は周囲にも影響を及ぼし始めた。地震が起こっているかのごとく建物はガタガタと揺れ始め、大地から地鳴りが響き出す。国を滅ぼすという発言が冗談などではない事を察した司祭は、北門を振り返って助けを叫んだ。


「お、おい……衛兵共!! 何をしているか!! ワシらを助けろ! こいつらはアイリス教に害を為す賊だぞ!!」


だが必死に叫ぶ司祭の声に、衛兵達は1人も応えようとはしなかった。むしろアイリス教の信徒を白い目で見てすらいる。一向に助けに来る動きを見せない彼らに、司祭の顔がみるみる青くなっていった。癒やしの術以外、取り柄のない教徒達が高レベルの冒険者と戦って勝てる見込みなど無い。ましてや相手はトルンデインを救った英雄にも等しい強者だ。いざとなれば衛兵達をけしかけてしまえばいいと思っていた彼らの算段はここで完全に崩れたのである。


「な、何故だ!? お前達はワシらを助ける義務があるはずだろうが! このような事、あっていいわけがないっ!! ないのだっ!!」


想定外の事態を前に、司祭は子供のように地団駄を踏んだ。彼が言う通り、基本的にアイリス教は各国から保護される対象となっていた。それはアイリス聖教国が癒やしの術を扱える聖職者を各国へ専属派遣するという外交戦術を展開していた事に由来する。

この世界で唯一癒やしの術を扱える特異な技能者である聖職者達は、ある種の特権階級としての立場を与えられていた。なぜなら、癒やしの術は魔物との戦いで疲弊する各国にとって重要な生命線でもあったためだ。故に教徒達は国ならびに都市の保護下にあり、如何なる事象からも守られるというのが通例である。しかし、それはあくまで国同士の取り決めでしかない。現場の者がアイリス教徒に従うとは限らなかった。


「お前達の事は見なかった事にしておくよ。俺達はその冒険者さん達に返しても返しきれない借りがあるんでな」


「そこの冒険者さん達はな、トルンデインを守ってくださった英雄なんだぞ! 俺なんて死にかけてたってのに、そこの桃色のお嬢ちゃんのおかげで命拾いしたんだ!」


「アイリス教徒が街のために役に立ったことなんて一度も無かったじゃねーか! 誰がお前らなんかのために、恩人へ刃を向けるかってんだよ!」


北門に集う衛兵達は次々と言葉を発し始める。彼らはココノアやレモティー、そしてメルによって救われていた者だったのだ。ある者は暗闇の中で魔物の群れに囲まれ死を覚悟していたし、また別の者はデミリッチが放った死の霧で命が尽きる寸前であった。皆、彼女達の助けが無かったらこの場に立っていない者ばかりである。


「何を言っているんだ、お前達!? こいつは異端者なんだぞ……!?」


司祭がなんと言おうとも、衛兵達がそれに耳を傾けることはなかった。いよいよ追い詰められた教徒達は異端者を滅するというアイリス教としての大義名分を果たすよりも、我が身可愛さに逃げることを選んだ。仮にここでメル達を取り逃すことになっても、聖教国に異端者討伐のため騎士団を派遣してもらえば教会としての面目は保たれる――そんな打算から、この場は一旦退いて本国に連絡を取れば良いと彼らは考えたが、その意思に反して体はぴくりとも動きはしなかった。


「な、なんだこれは……!? 体が糸かなにかで縛られているかのように、動かないではないか……っ!?」


「あはは、動けないだろう? ボクの傀儡の糸(パペット)で縛らせてもらったよ」

 

いつのまにかレモティーが張り巡らせていた透明な糸が教徒達の四肢に巻き付いており、その動きを完全に封じていた。ハーヴェストは他者の能力を下げるデバフ付与や、行動を阻害するスキルにも長けている。"パペット"はその1つであり、捕らえた相手の動きを意のままにコントロールすることが出来た。こうなれば彼らは蜘蛛の巣にかかった憐れな虫ケラも同然である。


「ねぇ、もう最期の懺悔は終わった?」


杖の先に光の矢を生成しながら、ココノアが言い放つ。高密度の魔力で造られたその切っ先は研ぎ澄まされた金属にも劣らない鋭さを誇っており、穿たれたが最後、容易く肉体を貫通してしまう事だろう。


「ハァハァ……見送りに間に合ったと思ったら、ややこしい事に巻き込まれているじゃないか」


いよいよ司祭めがけて魔法が撃たれようとしていた所に、一人の青年が走ってきた。ギルド職員の証である緑の執務服に見を包んだケントである。やってくるなり、彼はココノアと司祭の間に割って入った。


「なによ、邪魔しないでくれる? 元はと言えばこのおっさんが因縁つけてきたから、うちらは正当防衛してるだけなんだけど」


「うんまぁ……大体の事情はわかってるつもりだよ。でも彼らはアイリス聖教国の客人でもある。このまま見過ごすわけにはいかないかな」


「はぁ……ならそっちでその連中、対応しといてよ。うちらはもう出ていくからさ」


怒りを堪えるように息を吐きながら、ココノアは杖を降ろした。同時にレモティーも糸の拘束を解除したため、腰が抜けた教徒達はその場に崩れるように座り込んだ。


「お前はギルド職員だな? ワシの事を助けに来るとは、教育が行き届いているではないか。事の重大さを理解しているのであれば、即刻冒険者を雇ってこの異端者共を捕まえろ! いいなッ!」


この期に及んでも、まだ司祭の男は異端者への処罰を諦めていなかった。だがケントは毅然とした態度で彼に言い返す。


「ドラゴンゾンビが放った呪い吐息によりあなた方が石化した時に、それを解除したのはあそこにいる獣人の少女です。その彼女を異端者というのならば、あなた方は異端者に救われた者という立場になりますが、それでよろしいのですか?」


「なんだと……!? 出任せを言うでないわ! ワシらは石化などして……いやあの時、ワシらはブレスに飲み込まれたのか……?」


広場が襲撃された時の事を思い返す教徒達。石化される直前までの恐怖の光景は、彼らの脳裏に生々しく焼き付いていたのだった。しかしそこからの意識はなく、石化が解除された後にまで記憶は飛ぶ。それは()()()石化を解除したという事実を示していた。


「まさか、本当にあの獣人の娘が解除したというのか……?」


石化を解除できるのは癒やしの術を使える者のみに限られるが、この街で癒やしの術を使えるものは教会の者以外に存在しなかった。つまるところ、その記憶は彼らが異端者と認定したメルの手で救われたことの証左となっていたのだ。


「にわかには信じられん……完全なる石化の解除など、本国でも一握りの者しかできぬというのに……!」


「どうですか、思い出されましたか? 異端者の使う癒やしの術で救われた信徒は、アイリス教ではどのような扱いになるんですかね」


ケントの言葉に司祭は表情を歪める。アイリス教では信徒が異端者と何からの関係持った時点で、裏切り者として見做される風潮があった。従ってメルを異端者と認定してしまうと、彼ら自身の首を占めることにも繋がるのだ。それをケントは暗に彼らへ自覚させたのである。


「ふんっ……! 行くぞ……お前達」


取り巻きの信徒達に声を掛けると、司祭は気まずそうにその場から立ち去っていった。城門からその様子を見ていた衛兵達はメル達へ向けて歓声を上げるのであった。


「ふぅ、なんとか引き下がってくれて助かったよ。

 それにしても君達にはいつもヒヤヒヤさせられてばかりだな……」


「なによ、ちょっと脅かすくらいで済ますつもりだったのに。まさか本当にうちがあのおっさんに魔法を撃つって思ってたの?」


「ははは……正直かなり危ないところだったとは思ってたかな」


「信用ないわね……ま、ちょっと痛めつけるつもりではあったけど」


苦笑いを浮かべるケントに向かって一瞬だけ頬を緩めると、ココノアは転移魔法で馬車の荷台へと戻った。そんな彼女にメルが近寄って抱きつこうとしてるのを微笑ましく見守りながら、レモティーは手綱をしならせる。


「さて、そろそろ行こうか。結構時間を無駄にしちゃったしね。それじゃケントさん、またね」


「レモティーさんこそ、またギルドへ来てください。今度美味しい料理屋でも紹介しますよ!」


手を振るケントと衛兵達に見送られ、レモティー達を乗せた馬車は門を通過した。北の街道を馬車が勢いよく駆けていく。


「わぁ、結構早いですね! 風が気持ちいいです♪ もう街もあんなに小さくなってますし!」


荷台からはトルンデインの城壁がぐんぐんと離れていく様子が見えていた。ココノアもメルの隣でその様子を眺める。


「あの人達、まだ手を振ってるんだ。なんかこういうの、むず痒いよね……悪い気分ではないけども」


「それだけココノアちゃんやレモティーちゃんが街に貢献してたということではないでしょうか! よーし、せっかくだし私達も手を振りましょう!」


城門から離れても馬車へ向かって手を振り続ける兵士達に、メルは大きく手を振り返した。そんな彼女に押し切られるように、ココノアも照れくさそうに片手をあげる。馬車が丘をくだり、城門が見えなくなるまで彼女達は手を振り続けたのであった。


「あっ! ココノアちゃん! 川が見えてきましたよ!」


「へぇ、いい感じの場所じゃない。今度暇な時に絵を描きに来ようかな」


トルンデインを離れてしばらく街道を北上すると、透き通った渓流が見えてきた。色とりどりの野鳥や魚を育む美しい自然にメル達は目を輝かせる。


「この辺りも綺麗だけど、リギサンの方はもっと凄いから楽しみにしてて! ここからは少し飛ばしていくから、2人とも馬車から落ちないようにね! それじゃいくよ!」


レモティーが馬にスピードアップを促した。前方に連なる山稜へ向けて、3人のNeCOプレイヤー達を乗せた馬車はぐんぐん加速していく。その頭上に広がる青空はどこまでも続いており、彼女達は新たな冒険に胸を躍らせていた。

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