025.豊穣の乙女①
3人目のNeCOプレイヤーであるレモティーと出会ったメルとココノアは、どちらが言い出す事もなく自然に行動を共にしていた。元々NeCOでパーティを組んでいた彼女達にとってはそれが当たり前だったのだろう。レモティーが運んできた馬車いっぱいの野菜を市場で売るのを手伝った後、メル達は宿泊先であるブルワールの自室へレモティーを招き入れていた。なお彼女の馬車は宿の敷地内に停めさせて貰う許可が取れており、馬車を引いていた栗毛の馬も小屋付きの馬繋場で面倒を見て貰っている。金払いがいい上に、客としてのマナーも良かったメル達には宿も手厚いサービスを提供してくれたのだ。
「はー、ようやく落ち着いて話ができる……まさか野菜販売の売り子をさせられるなんて思わなかったわよ」
溜息を付きながら椅子へと腰を下ろすココノア。上品な白いクロスが敷かれた円形のテーブルに頬杖を付き、疲れた表情を浮かべる。そんな彼女に向かい合うようにして、メルとレモティーも席についた。
「いやぁ助かったよ。あんなに野菜の売れ行きが良いとは思わなくてさ! ボクだけだと正直手に負えなかったかな、あれは」
「お野菜が飛ぶように売れるのって、初めて見たかもしれません。私も今度レモティーちゃんの作ったお野菜を食べてみたいものです!」
「最近事件ばかりだったし、他地域からの物流も滞ってたからそれなりに需要があったんでしょ……ていうかなんで、異世界にきてなんで農家してんの?」
「それは成り行きというか、なんというか……話すと長くなるんだけどね」
「長くなるなら、お茶でも用意しましょう。さっき従業員の人が気を利かせて用意してくれてたんです! お菓子もありますよ♪」
そう言うとメルは部屋の入口近くにあった銀色の台車へと向かった。台車と言っても元々食事などを載せて移動する用途で使われる物であるため、丁寧に掃除された清潔感のあるものだ。天板には魔法石が組み込まれた金属製の瓶と3人分のカップと焼き菓子を載せた皿が並んでいる。メルが手にした瓶を傾けると、ティーカップへ湯気を伴った小麦色の液体が注がれた。
「この容器、炎属性の魔法石を付けてあるおかげで、中身を保温できる優れものなんです。これぞまさしく魔法瓶ってやつですね♪」
「へぇ、そりゃ便利だ。リギサンにはそんな便利なものなかったから、お茶を淹れる時はその都度お湯を沸かしてたんだよ。お土産に買って帰ろうかなぁ!」
「はいどうぞ、レモティーちゃん。ココノアちゃんの分はお砂糖をいつもの分だけ入れておきましたよ」
「ん、センキュー」
夕暮れ時のささやかなお茶会が始まった。温かい紅茶を啜りながら、レモティーはこの世界にやってきた頃の話をし始める。メル達と同じくタイニーキャットの導きでこの地へやってきた彼女が、最初に辿り着いたのはリギサン地方の山村であった。だが当時その村では深刻な食料不足が問題となっていたと言う。
「地質の関係で元々作物が育ちにくい場所だったんだけど、そこに魔物の出没が追い打ちをかけてね。村を捨てて出ていく人も多かったんだよ。アテもなく彷徨ってたボクを迎え入れてくれたのは、そこに骨を埋めるつもりで最後まで残ってた爺ちゃん婆ちゃん達だったんだ」
過去を振り返るように瞼を閉じながら、レモティーは話を続ける。
「なんとかして爺ちゃん達の力になりたくてね。住み込みで畑仕事を手伝ったりしていたんだけど、その時にボクが植えた種だけが異常に成長が早くてさ。そこで思ったんだ、もしかしたらNeCOのキャラクターの能力がそのままこの身体に宿ってるんじゃないか、ってね」
現実世界でも爺ちゃんっ子だった彼女は、村の状態を見兼ねて農作業の手伝いを申し出た。そんな折、NeCOの"レモティー"が持つ力を、この地でも発現させられる事に気づいたのだった
「そういえばハーヴェストさんって、フィールドで色々な木を生やす事ができましたよね」
「そうなんだよ。パッシブスキルの"植物知識"のおかげだと思う。普通に植えただけで次の日には成長して花が咲いてたし、さらにその翌日は収穫もできたからね。"高速栽培"のスキルを使えば3分も経たずに果物が実る木を生やすこともできるよ!」
その言葉の通り、レモティーのスキルは痩せた土地だろうと問答無用で植物を茂らせることができた。これにより寂れた山村の食糧事情は一変する。豊作に次ぐ豊作により村には賑わいが戻っていった。
「でも魔物が出てたんでしょ? それはどう対応してたのよ?」
「もちろんボクがやっつけてた、攻撃スキルも使えることに気づいたからさ。2人とも忘れて無いとは思うけど、NeCOでダンジョン攻略する時にボスの取り巻きを隔離して倒すのはボクの役目だっただろ? ステータス振りはバッチリ戦闘寄りなんだ!」
眼鏡の赤いフレームを正しながら、レモティーは得意げに微笑んだ。彼女がNeCOで習得していた最上級ジョブであるハーヴェストは、採集・生産スキルと戦闘スキルを持ち合わせるハイブリッド型のジョブである。戦闘面を伸ばせば他の戦闘職にも劣らない立ち回りが可能であった。
「なるほどね……それで農家の真似事みたいなことしてた、と」
「そうなんだよ。村に人も戻ってきたし、交易の盛んなトルンデインにも野菜や果物を出荷してもっと爺ちゃん達の生活を楽にしてあげたいと思ったんだけど、街道が封鎖しちゃってさ。様子見がてら自分で野菜を売り歩きに来たってわけ!」
「リギサン方面からはレモティーちゃんが1人だけで来たんですか?」
「うん、何しろ遠いから爺ちゃん達に無理させたくなかったしね。そしたら途中で変な霧が出てきて、前に進めなくなっちゃってさ。ほんとあのときは困ったよ。変な骸骨の魔物もいたし!」
トルンデイン近くまで馬車でやってきたレモティーは運悪くデミリッチと遭遇してしまう。しかしハーヴェストとしての力を持つ彼女にとって敵ではなかった。超自然的な力を操り、不死の魔物をあっさりと滅して全滅寸前の討伐隊を救ったのであった。
「あんたが魔物を倒してくれたおかげで、こっちは依頼報酬受け取れなかったんだからね。せめて野菜売りを手伝った分くらいは渡しなさいよ?」
「あはは、それは悪いことをしちゃったね。でも売上は爺ちゃん達へのお礼の品を買うのに使うつもりだったから勘弁してくれないかな? 代わりに好きな服を作ってあげるよ」
その言葉にメルとココノアの耳がピンと立った。彼女達はこの街に来てからいろいろな服屋を巡っていたのだが、子供用のサイズはバリエーションが少なく、好みの衣装を見つけられずにいたのだ。
「レモティーちゃんって服も作れるんですか!?」
「材料さえあれば、だけどね。例えばこの衣装、NeCOのジョブ服をモチーフにしてボクが自作したものなんだ。裁縫スキルも取得してるから、制作に必要な材料があればイメージ通りの服を作れるよ」
「それ羨ましいんだけど! ずるくない? うちなんて魔法しか使えないのに!」
焼き菓子を齧りながらココノアが眉をひそめる。戦闘職であるココノアやメルに比べると、レモティーの方が出来る事が多いのは事実だ。それは栽培や裁縫に限らず、他の面でも発揮されることになる。
「そういえば"鑑定"も使えるんだ。NeCOじゃ未鑑定アイテムにしか使えなかったけど、こっちだと人に適用することもできるみたいでさ」
「鑑定なんてあのゲームにあったっけ? よく覚えてないんだけど」
「確かNeCOだと未鑑定アイテムを正式なアイテムにするために、鑑定する必要がありましたよ。宝箱から未鑑定品、っていうアイコン不明のアイテムが出た記憶があります」
メルの言うとおり、NeCOではフィールド上にランダムで出現する宝箱や木箱から稀に未鑑定アイテムが出現するというお楽しみ要素が存在していた。そのアイテムを鑑定することで回復アイテムや装備品、低確率で珍しい家具や特殊な力を持つカード等が手に入る。ただし鑑定スキルを取得できるのは採集・生産系ジョブのみという縛りがあったため、メルもココノアも使うことはできなかった。
「鑑定を発動すると、対象物の性質や価値といったものが知識が頭の中にスーっと入ってくるんだ。きちんとボクが理解できる言語と内容でね」
「いやそれ便利だけど……頭の中に勝手に知識が入ってくるとか、怖くない?」
「あはは、確かに最初は慣れなかったね。でも使い始めると便利なものだよ!例えば自分に鑑定をすると、ボク自身の種族やレベル、ステータスが詳細に分かるんだ」
「そう言えばこの世界、NeCOみたいにステータス画面ないからその辺さっぱりわかんないだよね。参考にレモティーのステータス教えてよ」
ココノアの言葉にレモティーは頷き、腰に付けていたバッグから紙切れとペンを出した。そして自身のステータスをそこへ書き出していく。
「言葉で言っても伝わり難いだろうから、書いて示すことにするよ。今のボクはこんな感じかな?」
紙に書かれれた文字を見つめるココノアとメル。NeCOで見慣れたステータス表示に、何となく懐かしさを感じる2人であった。
『名前:レモティー レベル:120 種族:人間族
STR:121 VIT:73 DEX:91 MAG:117 INT:70 AGI:66』
紙に書かれたのはNeCOの"レモティー"が持つステータスと全く同じ数値だった。「数字で見てもあんまり強そうに見えないよね」と呟くココノアだったが、この世界でこれほど高い能力を誇る存在は早々いないだろう。彼女達はすっかり忘れているが、ギルドでケントが話していたように十分な修練を積んだベテラン冒険者でもステータスは40程度が上限なのだから。
「ええと、確かSTRは筋力、VITが体力、DEXは器用さを示してましたよね。それでMAGが魔力、INTが知性、AGIが敏捷性だった気がしますけど、合ってます?」
「合ってるよ。NeCOのステータスはこの世界でもそのまま適用されてるっぽいね。どういう理屈でそうなったのかはさっぱりだけども」
そんな会話を交わすメルとレモティーの隣で、ココノアは頭を傾げていた。レモティーのステータス構成に違和感を持った彼女は、その疑問を口にする。
「ハーヴェストのステ振りってMAGも振る必要あるの? 農家だしSTR特化でいいんじゃ?」
「一部のスキルが物理攻撃力と魔法攻撃力を参照するからMAGも必須なんだ。あとは制作系スキルの成功判定はDEX依存だから、そっちにもそれなりに振ってる。ココノアも魔法の詠唱速度がDEXで高速化されるから、結構振ってたんじゃないかな」
「へぇ、そうなんだ。ねえ、その鑑定とやらをうちにもしてみてよ」
ココノアがそう言うと、待ってましたとばかりにレモティーは彼女の方へ顔を向けた。そしてまぶたを閉じて、念じるかの如くスキルの発動を口にする。
「それじゃ、やってみよう! 鑑定!!」
その瞬間レモティーの身体が薄く光り、彼女の意識にココノアの持つステータスが文字の羅列となって流れ込んでくる。
「ほむほむ……よし、わかった。紙に書くね」
そう言うと、レモティーは読み取った内容をそのまま紙へとアウトプットした。レモティーのステータスの下にココノアの情報が並ぶ。
『名前:ココノア レベル:120 種族:エルフ族
STR:24 VIT:35 DEX:180 MAG:300 INT:150 AGI:45』
フォースマスターであるココノアは魔力と器用さに特化した構成であった。しかしNeCOではシステム側によってステータス上限が150で設定されており、いかにステータスポイントを割り振ったとしてもこの数字を超えることはない。故にレモティーが書いた内容はNeCO経験者であればひと目でおかしいと気づく。
「ちょっとまってよ、MAG高すぎない? INTもこんなに高く振った記憶はないんだけど」
「上限値を超えてるんだよね……ボクも驚いてるんだ。でも理由ならなんとなく予想がつくかな。気になるのは、ここさ」
紙に書かれた"エルフ族"の文字を指差し、レモティーは話を続けた。
「多分この世界に存在するヒト種にはそれぞれ向き不向きがあって、種族の違いでステータスにも変化が生じるんだと思う。ほら、そういう仕様のゲームもあったじゃないか」
「確かにそういう種族補正的なものを設けていたオンラインゲームがありました。スタミナが1.2倍とか魔法攻撃力が0.8倍とかそういう微妙な違いでしたけど」
他のオンラインゲームについて調べてた頃の記憶を振り返るメル。彼女は初めてオンラインゲームを遊ぼうと思い立った時に、いくつかの候補をピックアップしていた。その中にはプレイヤーが選べる種族に特徴をもたせるために、ステータスに補正をかけるものも存在していたのだ。
「フォースマスターの最適ステータス振りから推測するなら、エルフはMAGが2倍、DEXとINTが1.5倍ってところかな。でも上がっている数値だけじゃない。STRやVITはジョブ補正で加えられる数字を含めた数値にしては低いから、0.5倍くらいになってそうだね」
「そう言われると半分くらいになってる気はするかも……レモティーは補正かかってないの?」
「ボクは全部元の数値と同じだから、全部1倍ってところじゃないかな」
「よく自分のステータスなんて細かく覚えてるわね……」
感心したように呟きながらココノアはティーカップを傾けた。空になった彼女のカップを見て、メルが「おかわり入れますね」と瓶で紅茶を注ぐ。
「ありがと。せっかくだし、メルも鑑定してもらっときなよ。テンプレから外れまくったポンコツ構成具合がよく分かるかもよ?」
「ポ、ポンコツじゃないですよ! こう見ても私、ステータス振りは色々考えてましたからね! 魔力とかは低めになってましたけど、ポイントは全体的に振ってたんです!」
その言葉を聞いたココノアとレモティーは、口にしていた紅茶を吹き出しそうになった。
「ちょ、ちょっと待って……ただでさえ微妙な殴りヒーラーのくせに、そんな非効率な振り方してたの!? 特化するステータス以外にポイント振るとか、無駄じゃない?」
「え? でも1つのステータスに多くポイント振ると他のが低くなるじゃないですか? そのほうが勿体ないかなって……」
「確かに、NeCOのステータスは数字が大きくなるほど、1つ上げるのに必要なポイントが増えていく仕様だからね……メルの言うとおり、満遍なく振った方が合計値は高くなるのは事実さ。でも無駄が多くなるから、どうしても理想的なステータスからは離れてしまうんだよ」
レモティーが諭すように説明する。NeCOではSTRやMAGといったステータスを上昇させるのに、ステータスポイントというものを消費する仕様であった。ステータス値が低いときはポイントの消費も低いが、高くなると消費は格段に増えてしまう。そのため重要視するパラメータを2つほど選んで特化構成にするのが、NeCOにおけるステータス振りのセオリーとされていた。
「殴り寄りのバランスタイプ……まぁヒーラーならそれもありっちゃありかもしれないけど、地雷って言われても仕方ないよそれ。別にうちらは慣れてるからいいけど。とりあえず鑑定してもらえば?」
「それじゃあいいかなメル? 鑑定するよ?」
「はい、お願いします!」
レモティーが今度はメルの方を向いて鑑定のスキルを発動させた。ココノアのときと同様に、メルの持つステータス情報が彼女の頭の中に流れ込んでくる。
「……うん?」
自分やココノアのときとは少し違う内容に戸惑うレモティー。彼女は首を傾げながら、読み取った内容をそのまま紙へと書き出した。
『名前:メル レベル:120 種族:獣人族/???
STR:240 VIT:246 DEX:18 MAG:20 INT:18 AGI:249』
種族項目に不明瞭な文字が追加されている上に、ヒーラーにとって必要なステータスには軒並み低い数字が並んでいた。ツッコミどころが多すぎる内容に、ココノアは頭を抱えながらレモティーへ問い質す。
「まず聞くけど、種族のところのハテナ印は何なの? 見落としたってわけじゃないよね。この猫耳と尻尾みてもそうだけど、獣人族で確定できるでしょ」
「ボクもおかしいとは思ったんだけど、そこは本当にそういう文字が並んでたんだよ。こんなの初めてだからわからないけど、とりあえずは獣人族ってことでいいんじゃないかな」
そう言ってレモティーはメルの種族欄を、"獣人族(暫定)"と書き直した。
「それじゃ、次はステータスの方ね。MAGとINTとDEXが低いのはどういうことなのよ。それなりに振ってたにしては、低すぎない?」
「おかしいですね……ある程度ポイントを振ってたと思うんですけども……」
ココノアに訊かれ、メルは困ったような表情を浮かべる。レモティーの書き示したステータスは彼女の記憶にあるステータス画面とは全く異なるものだった。
(おかしいなぁ……こんな感じの構成じゃなかったと思うけど。STRはいくらなんでも高すぎるしMAGは逆に低すぎるから、これもレモティーちゃんが言ってた補正っていうのが関わってるのかな……?)
桃色の尻尾をクネクネとうねらせながら思い悩む暫定獣人娘。感情がそのまま尻尾や耳に出てしまう彼女を見ながら、ココノアは心の中で「あざといけど可愛いじゃない……」と密かに呟いていた。
「心当たりがないなら、これも種族補正かもしれないね。数値だけでみれば獣人族はSTRとVIT、AGIが約3倍になる代わりに、他のパタメータは3分の1になるってところかなぁ。まさに脳筋って感じの種族ってわけだ!」
「えぇー!? 私、そんな脳ミソまで筋肉で出来てるような女じゃないんですけど!?」
「あはは、冗談だよ。でも流石にボクよりもSTRが高いとは思わなかったなぁ……もしこれでメルが近接戦闘ジョブだったら、無敵だっただろうね」
苦笑いするレモティーに、同意するかのようにココノアが頷く。
「これで剣闘士 や処刑人 のジョブだったら間違いなく最強よ。でもカーディナルは物理攻撃スキルを持たないし、STRがいくら高くても宝の持ち腐れみたいなもんだっての」
「ま、まさか……こっちでもポンコツヒーラーの汚名を返上できないなんて……」
ステータス値が思っていた以上に偏っていた事が判明し、メルは肩を落とす。カーディナルは物理戦闘スキルを持たないため、高いSTRを活かせるのは唯一通常攻撃だけだ。それ以外は魔力依存のスキルばかりであるため、MAGの低さはどうやっても足を引っ張ることになる。自分のステータス振りのせいで、友人達の役に立てなくなるのではないか――そんな不安を感じる彼女の表情は暗かった。
「……」
黙り込んでしまったメルを前に、ココノアとレモティーは互いに顔を見合わせる。2人にはメルの事を否定する意図など無かったのだ。むしろ流行りの鉄板構成ではない独自の遊び方を追求する彼女を、内心自由で羨ましいとさえ思っていた。ちょっとした悪戯心でステ振りについて揶揄してしまった事を後悔しつつ、ココノアとレモティーは慌ててフォローを入れる。
「で、でも……VITとAGIが高いヒーラーってのは案外アリかもよ? 要は体力があって回避も出来るってことでしょ? 一番やられちゃいけないポジションだし、無駄にはならないじゃない! そうよね、レモティー?」
「も、もちろんさ! それにココノアやボクもいるし、3人いれば出来ないことは無いはず! 回復についてはハーヴェストでも少しは役に立てるしね!」
「ココノアちゃん……レモティーちゃん……!」
2人の優しさをしみじみと感じながら、メルは瞳を潤々とさせた。NeCOでずっと一緒に遊んでくれていた友人達が今も変わらず接してくれることに、彼女は心の底から感謝する。
「こんな私ですけど、お荷物にはならないように頑張りますから……! 改めて宜しくお願いしますね!」
「あはは……ボクの方こそ2人の役に立てるように頑張らないとね。宜しく!」
「メルのこと荷物だなんて、最初から思ってないってば……いつからの付き合いだと思ってんの?」
そんな会話が交わされる最上階客室からは、日が暮れても賑やかな声が響き続けた。




