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step.1-1/転生と前世の記憶

 私こと、エルシア・クロッカスはその日、朝から非常に浮かれていた。


 何故ならば、自身の婚約者であるクライド・ウィスタリア様が、久しぶりに公爵邸に訪れてくださることになっていたからである。



 ウィスタリア王国の第二王子であるクライド様は、普段からとても忙しく過ごされており、自由に使える時間はとても少ないそうだ。そのため、クライド様とお会いするのは、およそ1ヶ月ぶりのことだった。


 この婚約は私が8歳、クライド様が10歳の時に、政略的な意図によって結ばれたものだった。当人同士の意思とは関係なく成立した婚約であるため、私たちの間に恋愛感情なんてものは一切存在していなかった。


 けれど、初めて対面をした顔合わせの日。私はクライド様と関わっていく中で、恋に落ちてしまった。


 クライド様は輝くような金色の髪に、高貴なる紫紺の瞳を宿した、見目麗しい容姿のお方である。そして、内面も外見と同じように非常にお美しく、木漏れ日のように温かで優しい心を持ち合わせている。


 クライド様はその輝きによって、真っ暗な闇の中を彷徨う私のことを救い出してくれた。生きているのかも、死んでいるのかもよく分からない。そんな日々を過ごしていた私に、希望を与えてくれたのだ。


 あの日からずっと、私はクライド様のことだけを想い続けてきた。私にとってクライド様は、道を明るく照らし出してくれる光のような存在なのだ。


 だから、そのクライド様のお姿が玄関にあるということに気が付いた時、私は思わず階段を駆け降りていた。


 早くクライド様の元へと辿り着き、私の名前を呼んでほしい。一秒でも長く側にいて、たくさんの時間を共に過ごしたい。心の中は、その想いでいっぱいだった。


 途中で、『危ないですから、どうか階段はゆっくりとお降りください!』という、侍女の呼び止める声が後ろの方から聞こえてきた。けれど、私がその言葉に耳を傾けることはなかった。



 結果、私は勢いをつけ過ぎたことによって、侍女が心配していた通りに、階段を踏み外してしまった。何かを掴まなければと必死に伸ばした右手は虚しくも空を切り、私の体は吸い込まれるかのように、ゴロゴロと階段の一番下まで転がり落ちていった。


 そして、頭に強い衝撃を受けたのを最後に、私の意識は深い闇の底へと沈んでいったのだった。



 *****



 目を覚ますと、私は自分の部屋のベッドの上に寝かされていた。全身も酷くズキズキと痛んでいる。


(何で、こんなことになっているんだろう……)


 混乱して把握できていない今の状況を整理するために、私は目をスッと閉じると、一つ一つ記憶を掘り起こしていった。


 すると、頭の中に次々と自分のものではない、誰か別の人物の記憶が蘇ってきた。 そして、その記憶の欠片を困惑しながらも1つ1つ確かめていくうちに、私はとある重大な事実に気が付いてしまった。


 この記憶はもう一人の私の記憶。自分は転生者であるということに……



 *****



 前世の私は地球という星の、日本という小さな国で暮らしていた、どこにでもいる普通の女の子だった。


 生まれは一般家庭……つまり庶民の出で、決して裕福な生活を送っていたわけではなかった。けれど、幸運なことに良い友人や家族に恵まれて、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。


 そんな当たり前の日常に終わりが訪れたのは、彼女が18歳の時のこと。高校からの帰り道で交差点を横切った瞬間、車に轢かれて呆気なくその命を落としてしまったのだ。


 けれど、死は彼女の人生に終わりを告げただけではなかった。どのようなプロセスがあったのかは分からないけれど、彼女の魂は異なる世界の人間として、新たに生まれ変わっていたのだ。



 それが私、“エルシア・クロッカス”である。



 今世の私は、王家に次ぐ権力を持つクロッカス公爵家の一人娘として生を受けた。


 貴族であったお陰で衣食住に困ることなく、何不自由のない快適な生活を送ることができていた。家族は宰相を務めている父親と、元伯爵令嬢であった母親の3人。父と母は恋愛結婚だったらしく、家庭内は争いごとなど起きることなく、幸せに満ち溢れていた。


 ずっと、今ある日常が続いていくんだと、無条件にそう信じ込んでいた。


 けれど、そんなキラキラと輝いていたあの日々も、前世と同様にある日突然、全て崩れ去ってしまった。

初めての連載小説、物凄くドキドキとしています。

少しでも多くの人が面白いと思ってくださったら嬉しいです!


10歳4月

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