煮込んでいるのは
トントントン。
小さなキッチンに包丁の音が響きます。
「にんじんも切るの適当でいっか」
七宮さんはカットしたものを鍋にいれます。
「もうジャガイモも切ったし、あとは……」
冷蔵庫に玉ねぎが残っていたことを思い出しました。
「四分の一くらいかな」
玉ねぎの上と下を落として、皮をむきます。
包丁で少し切れ込みをいれると、ずるんときれいにはがれました。
あとは、二ミリくらいの厚さで薄く切るだけです。
トントントン。
「……しみる」
ふわふわのくせ毛もなんだか下がり気味です。
だけど、手は止めません。
涙目で切り終わりました。
鍋に玉ねぎと、水を入れて火にかけます。
「あ、最初に焼いておけばよかったなあ」
すっかり忘れていた、スーパーで二割引だった豚肉をとりだします。
しょうがないのでルーと一緒に鍋に入れて、煮込むことにしました。
「まだかなー」
窓の外はそろそろ暗くなって来ました。
コトコト煮込んで火が通ったら、ご飯の上に盛りつけて完成です。
「いただきます」
と、その前に写真をとってメッセージを送ります。
【お母さん、カレー作った】
ピコン。
【あら、成長したじゃない。野菜もバランス良く食べるのよ】
【はーい】
今度こそ、スプーンですくってほおばります。
七宮さん、頑張ってつくったお味は?
「美味しい」
瞳をきらきらさせて、ふたくちめを口に運びます。
ふわふわのくせ毛も心なしか上がり気味です。
七宮さんは今日もしあわせ。
お読み頂きありがとうございました。