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大きくなあれ
「おい、あそこに座ってるの、文学部の七宮さんじゃね?」
「うお、噂どおりめっちゃ可愛いな。無表情だけど」
広い講義室の隅っこ。
ポツンとふわふわのくせ毛が揺れています。
「お昼まであと一コマ……」
くあ、とあくびが漏れました。七宮さんです。
大きな窓の外には青空が広がり、木々がさわさわと風になびきます。
「あ、鳥」
それがとまった木の枝には、よくみると巣があります。
お母さんからエサをもらうのでしょう。
ひょこりとヒナたちが顔を出しました。
一生懸命に首をのばします。
「……大きくなるんだぞ」
可愛いやつらめ。
良いものが見れた七宮さんは、ほくほく顔。
ちょっぴり優しいまなざしと、口角が上がってしまうのは仕方ありません。
「今、七宮さんが俺の方みた!」
「今、七宮さんがおれに笑ってくれた!!」
「「……え、俺のほうだって!」」
七宮さんは今日もしあわせ。
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