あそぼ!
じゅうじゅう。ぱくり。
「……美味しい」
もぐもぐ。
「……とまらない。さすがカルビ」
七宮さんはむぐむぐとほっぺたを動かしました。
ふわふわのくせ毛がほよんと揺れます。
「ひかりちゃん、おかわりもあるからいっぱい食べてね」
隣でおっとり微笑むのはしずくちゃんです。
七宮さんは、しずくちゃんの家に遊びに来ていました。
ザ、豪華な日本家屋といった外観です。
広い庭ではバーベキューが行われていました。
「おっしゃカエデ! 対決だ!」
「たいけつだー!」
風花ちゃんと、しずくちゃんの妹カエデちゃんが、水鉄砲をかまえて走り回っていました。
夏のギラギラとした日差しが照りつけます。
お腹がいっぱいになった七宮さんは、ベンチに座りました。
のんびり二人を眺めます。
「元気だなあ」
「カエデも遊べて喜んでるわ。うちは親が仕事で家を空けることが多いから」
隣でにこにことしずくちゃんが笑います。
つやつやの黒いロングヘアーがさらりと動きました。
「フウカは高校からの友人なの。ちょっとガサツにみえるかもしれないけど、案外まわりをよく見ているのよ」
そういって、楓ちゃんと水の掛け合いをしている風花ちゃんに視線を向けました。
たしかに風花ちゃんは以前、体育のあとにぽつんと一人で過ごしていた七宮さんにも飲み物をくれたことがあります。
「面倒見がいいのね」
しずくちゃんはなぜか七宮さんの後ろ、ベンチの後方を見てにっこり笑いました。
「ん?」
ピシャッ。
「わわっ!?」
振り返った七宮さんの顔が水でびしょ濡れになりました。
「ねぇ、ヒカリも遊ぼうよう?」
「あそぼー!」
水鉄砲を向けた風花ちゃんがいたずらっぽくいいます。
カエデちゃんが楽しそうに笑いました。
七宮さんは口もとをふにゃりと緩めます。
「はいっ。やりましょう!」
七宮さんは今日もしあわせ。