日向ぼっこ
七宮さんは、芝生のうえで寝そべっていました。
頭の上で緑の葉っぱがさわさわと風に揺れます。
七宮さんの顔に光と陰の模様を作りだしました。
ここは構内のひらけた広場です。
「……涼しい」
お昼休みの残りの時間を利用して、木陰で休むことにしました。
イチョウの木の下にはちょうど陰が出来ていて、夏の暑さをゆるめてくれます。
「おや」
ひらり。
チョウチョが飛んできました。
「アゲハ蝶かな?」
黄色地に黒い線が流線を描くように走っています。
そのまま七宮さんの近くに生えていた、ピンク色の丸っこい花、アザミにとまりました。
ゆっくりと羽を動かして、バランスを保っています。
七宮さんはのんびりとその様子をながめていました。
ふわりと軽やかな風がふわふわのくせ毛をゆらします。
抜けるような青空からは、ぽかぽかと午後のやわらかな日差しが降りそそぎました。
のどかなお昼休みに、七宮さんのまぶたがゆっくりと下がってきます。
ぐう。
「ひかりちゃん、そろそろ次の講義よ……あら?」
「ぶはっ、ヒカリほんと面白いなあ」
眠って動きを止めた七宮さんの鼻の頭に、ちょこんとアゲハ蝶がとまっていました。
「写真撮っとこ」
「こらフウカ。……面白そうだから後で私にも一枚」
「おっけ」
「んー……」
七宮さんはちょっとだけ口もとをふにゃりと緩めます。
ふわふわのくせ毛がゆるりと肩からこぼれ落ちました。
七宮さんは今日もしあわせ。