サークル活動はいかがですか?
キーンコーンカーンコーン
「ふぅー、終わったおわった!」
んー、と七宮さんも伸びをしました。
ふわふわのくせ毛がピョコンと上を向いています。
「お昼にはまだ早いし……」
次の講義まで三時間ほど空きがあります。
「そういえば、ヒカリってサークルとか入ってるの?」
風花ちゃんが勝ち気そうな瞳をくるりとまわしました。
金髪のショートカットがふるりと揺れます。
「いえ、特には」
「えー! もったいないよう!」
風花ちゃんは口をとがらせて、あしをバタバタさせます。
その様子を眺めていたしずくちゃんがゆるりと首をかしげました。
「じゃあ、散歩がてら、サークル巡りをしてみるのはどうかしら」
きっと楽しいわ、とにこにこ微笑みます。
そんなわけで、七宮さんはサークル探検へと繰り出すことになりました。
地面に置いたラジカセから軽快なメロディが流れてきます。
ここは構内のメインストリートです。
透明なガラスの壁を前に、女の子が数人ほど、曲にあわせて踊っていました。
一番前で踊る風花ちゃんの金の髪が、からだの動きに合わせてダイナミックに舞い上がります。
「……すごい」
~ジャン♪
ポーズが決まると七宮さんは思わずパチパチと手を叩きました。
風花ちゃんが駆けてきます。
「どうヒカリ!? ダンスサークル!!」
体がぐにゃぐにゃ動いて人じゃないみたいです。
どうしたらあんなに柔らかく踊れるのでしょう。
「風花ちゃん、すごい!」
若干失礼なことを考えつつ、しっかり風花ちゃんをほめます。
「ヒカリもしようよー!」
「え」
体がカチカチの七宮さんにはハードルが高すぎます。
壊れたロボットが良いところです。
「ひかりちゃん、私のサークルも見に来る?」
フリーズした七宮さんをみて、しずくちゃんが助け船を出してくれました。
「……あ、危なかった」
──────
三人は部室棟にやって来ました。
「ここと、隣の部屋も借りているの」
そういって、一番端の部屋を押し開けます。
続けて入った七宮さんは、目を丸くしました。
部屋を埋め尽くしていたのは、楽器だったのです。
「うふふ、軽音サークルよ」
ギターでしょうか。
何本もラックに並んでいるのは圧倒的です。
壁際にはスピーカー類がたくさんおいてあります。
「しずくちゃんは何の楽器なんですか?」
ダン!
七宮さんのくせ毛がビクッと震えます。
「ドラムよ?」
いい笑顔でしずくちゃんがドラムスティックを振り上げました。
ズン、タン、ダカダダン! ジャーン!
空気がビリビリとふるえます。
あれは、しずくちゃんなのでしょうか。
普段の優しく細められた目はかっと見開かれ、激しい頭の動きに合わせて長い髪がひらめきます。
楽しげな口もとからは八重歯がのぞきました。
「はっ……」
もしや、違う人がとり憑いたのでは。
「雫はねぇ、ギャップがすごいのよ」
別人だよねえ、と風花ちゃんがあきれたように呟きます。
でも、二人の意外な一面を知れたようで新鮮です。
ふわふわのくせ毛がほよんと揺れました。
「ああ、楽しかった」
ドラムスティックを置くと、しずくちゃんはこちらに歩いて来ました。
おっとりしたお姉さんに戻っています。
にこにこと七宮さんにお誘いをかけました。
「ひかりちゃんも楽器さわってみない? もちろんドラムもOKよ?」
お読み頂きありがとうございました。
サークル編は後半に続きます。