お財布と相談します。
「いらっしゃいませー。あ、七宮さ…… 」
「お前、あの子知り合い?」
「あ、先輩。いえ、大学の子で一方的な顔見知りですね」
時刻は夜8時。
七宮さんがコンビニにやって来ました。
「どれにしよう」
アイスのコーナーまでやって来ると、ちょっと迷ってから何かをカゴに入れます。
「あ、あれ。『まるごとスイカのバー』ですね」
「お、新発売のやつな。いい趣味してるじゃん」
冷凍のイチゴと、正午のレモンティーも入れた七宮さんは、雑誌・マンガコーナーの前で立ち止まりました。
あるマンガの表紙に目が釘付けになります。
「……新刊、出てたんだ」
無感情な瞳で、じーっと凝視します。
「な、なんかすげえガン見してるぞあの子」
「で、ですね。迷ってるんですかね」
「あ、こっち来るぞ!……いらっしゃいませ。お預かりします」
しばらく固まっていた七宮さんが、カゴをレジへ持ってきました。
「全部で838円になります。袋はご利用ですか?」
「いえ、結構です」
「「ありがとうございました」」
会計を済ませ、七宮さんは帰っていきました。
「……結局マンガ、買っていきましたね。……『パンダ軍団と伝説の騎士』」
「……いい趣味してるな」
七宮さんの背中はなんとなく楽しそうです。
ふわふわのくせ毛がピコピコとはねました。
「買っちゃった。アイス食べながら読もうっと」
七宮さんは今日もしあわせ。
お読み頂きありがとうございました。