ふわふわで、軽くなる
ミーンミンミンミンミンミンミン
どこかから蝉の声が聴こえてきます。
「……あついなあ」
まだ朝の7時だと言うのに、辺りにはむわりとした空気が立ちこめています。
「よい、しょっ!」
七宮さんは洗濯機から、回していた洋服を取り出しました。
ずっしりと水を含んで重くなっています。
講義の前に干してから出かけるつもりなのです。
カラリ。
ベランダの窓を開けると、蒸し暑い風が七宮さんを包みました。
洋服をハンガーに吊るしてラックに引っかけていきます。
ミーンミンミンミンミンミンミン
太陽の光が鉢植えのサボテンにあたって、穏やかに輝きます。
さわさわと風が遠くの木々を揺らしていきました。
「……夏だなあ」
見上げた空にはふわふわの入道雲が浮かんでいました。
最後に大きめのタオルケットも干して、終了です。
「よし、行ってきます」
────────
ガチャガチャ。キィー、バタン。
「ただいまあ」
七宮さんが帰ってきました。
カラリ。
からからになったTシャツを取り込みます。
薄いタオルケットもきれいに乾きました。
軽くてふわふわなそれに顔をうずめると、柔らかなお日様の香りがします。
七宮さんのふわふわのくせ毛が上にあがります。
口元はへにゃりと緩んでいました。
「……あったかい」
七宮さんは、今日もしあわせ。
お読み頂きありがとうございました。