誕生日
ガチャガチャ、キィー、バタン。
七宮さんが帰ってきました。
パチン。ストン。
電気をつけて、座布団に腰を下ろします。
「ふう。疲れたー」
ふわふわのくせ毛をまとめていたヘアゴムをほどいて、テレビをつけると、画面いっぱいに短冊と笹の葉が映ります。
今日は七夕。
七宮さんの誕生日でした。
いつもと変わらない時間に起きて、出掛けて、帰ってきました。
誰も七宮さんのバースデーを知りません。まわりに言っていないからです。
ピコン。
ケータイにメッセージが届きました。
「なんだろ」
お母さんからです。
【ひかり、お誕生日おめでとう! 冷蔵庫に甘いもの入ってるよ】
「!」
冷蔵庫を開けると、大きなビニール袋が入っていました。
中にはコンビニのプリンアラモードと、ミルクティータピオカと、チョコレートアイスが入っていました。
「ふわぁ……」
きらきらと目を輝かせます。
口元のにやけがとまりません。
ピコン。
【体に悪いから、一日一個ずつ食べなさいよ】
「はっ……!」
さすがお母さん。
七宮さんのことを良くわかっています。
言われてしまったら仕方ありません。
「今日はどれにしよっかな~」
チョコレートアイスを取り出して、いそいそとスプーンを突きさします。
「んー、美味しい……」
へにゃりと顔を緩ませます。
七宮さんは、今日もしあわせ。
お読み頂きありがとうございました。