クラスパーティー開演!
「あとは皆さんがご存知のとおり、アリーナの周辺で潜伏し、動向を見ていた私は見つかり、自決しようとしたところを助けていただきました。謝っても許されないことをしたのは事実です。しかし、謝らせてください。申し訳ありませんでした」
ルーアはそう締めくくった。
私は王国の民が使える魔法陣を、自由に制限できる状態だ。
と思っていたんだけど、思わぬ、穴がそこにあったね。
ルーアにかかっていた魔法陣は、カナフィルディア伯爵にかかっていた魔法陣と似ていたが一部だけ、改良が加えられていた。
そのほんのわずかな、変化によって、王国を守る防衛結界の魔法陣の記憶から逃れ、起動できる魔法陣になってしまったのだ。
魔法陣に手を加えられると、私の防衛結界では対処できないんだね。
この前、学園長と夜空を飛んでもらい、モノノケたちの魔法陣を封じたつもりだった。
まだ、呪いの魔法陣にかかっている人は多いと思う。
しかし、モノノケも焦っているはず。
魔法陣改良というのは簡単じゃない。
魔法陣改良と解呪のイタチごっこをすれば、私の解呪の方が圧倒的なスピードで勝利すると思う。
ということはモノノケが大きく動く日も近いということになる。
ルーアの話によれば、確実に第二学園の学園長は呪いを受けている。
次の交流戦が山場になるかもしれないね。
王都だけでなく、周辺の都にもモノノケの手が及んでいる可能性。
これは私が考えているよりも、モノノケの魔の手が及んでいる範囲が広い。
せいぜい、王都だけかなと思っていたんだけどね。
これは周囲の都を確認して、回らないといけないね。
それも、私の王族としての責務だよ。
必要があるならそれも頑張っていきたいね。
私が考え込んでいるとシャティー先輩が聞いてくる。
「あの、キミハは、今のルーアの話を聞いて納得したのですか?」
私はシャティー先輩の言葉を聞いて、ハッとする。
そういえば、シャティー先輩は、モノノケの事全く知らないんだったね。
理解できないのは当然といえば当然。
ナミク先輩とシオリ先輩をみる。
シオリ先輩は、どうしたの?、と可愛く首を傾げる。
うん、可愛い。
ナミク先輩は、特に無反応。
おい、反応を示せ!
この2人の先輩は、理解しているのかしていないのかよくわからない。
私の口からシャティー先輩に説明するわけにも行かないので、わからないフリをしよう。
「いえ、分からないと思います...」
私は少しどもって答える。
ナミク先輩が、ため息をついて、私に言う。
「お前な、わかってるけどわかってないフリをしましたっていうのがバレバレなんだよ!」
「ひい、なんでーーー!」
「それとな、『おい、反応を示せ!』じゃねーよ!」
ナミク先輩は私の心の声を私の真似をして再生してくれる。
ひ、ひどすぎる!
これは、流石に正直に言うしかない!
私はシャティー先輩に元気よく白状する。
「シャティー先輩、ごめんなさい、白状します!分かるといえば分かります!しかし...」
シャティー先輩は困った私の顔に、折れてくれた。
「キミハが、また、何かに首を突っ込んでいることは分かりましたわ。そして、私にそれを言わないと言うことは、私に言うと、不利益があると言うことでしょう。それならば、何も聞きません。キミハ、私はあなたの味方ですから、本当に困った時、少しでも手を貸せるなら、私を呼んでくださいませ。私は生徒会長です。学園の生徒を守る義務があります。それだけは忘れないでください」
「ありがとうございます、シャティー先輩。私はシャティー先輩が先輩で幸せです!」
「ありがとう、キミハ。そんなあなただから、私は手を貸したくなるのですよ」
私とシャティー先輩は、笑い合う。
そんな、楽しい時間を隣のトゲトゲがぶち破る。
「おい、俺が先輩だと幸せじゃないみたいな言い方じゃないか」
「はい!不幸です」
ナミク先輩は私の元気のいい返事の返事として、私の頭をグリグリしてくる。
ほら、そういうところですよ!
シオリ先輩が私に聞いてくる。
「私が先輩なのは幸せ?」
「はい、もちろんです!」
私は元気な笑顔で答える。
ナミク先輩は、お前な、という顔をしている。
私はナミク先輩からプイっと視線を逸らす。
視線の先にはルーアがいた。
ルーアが置いてけぼりになってるよ!
私はルーアに話しかける。
「ごめんね、ルーア、放置状態にしちゃって」
「いえ、仲がよろしいのですね」
「頼りになる先輩方なんだっ」
私はここで、ふと思い出す。
拘束室でルーアがいきなり、魔剣をどうやって具現化したかだ。
でも、魔法陣の能力とか使い方を聞くのはご法度だから、あくまで、お願いとして聞いてみる。
「ねえ、ルーア、これは、答えずらかったら答えなくていいんだけど、拘束室で魔剣を出せたのってどうやってやったの?」
ルーアは私の質問に、一度目を瞑ってから、口を開く。
「普段は秘密ですとお答えするのですが、皆様には助けていただいた御恩がありますから、答えさせていただきますね」
「本当に嫌なら、大丈夫だからね」
私は一応、助け舟を出しておく。
魔法陣に関わる秘密は命に関わるような秘密だってあると思ったからだ。
魔法陣は、生活に馴染んでいるけど、一歩、道を違えれば、自らの命を滅しかねない。
それだけは忘れてはいけないと思う。
ルーアは答える。
「はい、ありがとうございます。この秘密を話しても、死に至るとかではないのでお聞きください。私が先ほど、キミハさんを襲った時に使った力は、『魔力形状変化』という力です。例えるなら、鉄から剣を作るという工程が分かりやすいでしょうか。剣を作るとき、まず、鉄鉱石を溶かし、ドロドロにしてから、そこから、剣の形を作成し、固めますよね。それと同じことを魔力を使って行ったのです」
私たちは、ルーアの説明が、まだ理解できていない。
私たちの顔を見て、そう感じたのか、ルーアは続ける。
「具体的に説明しますね。まず、私の魔力で拘束具を覆います。すると、拘束具は、魔力と馴染んで、ドロドロになります。このとき、拘束具は魔力と同じ性質になり、体内に蓄えられているのです」
「ちょっと待って、じゃあ、手につけられていた拘束具を吸収したってこと?」
私は聞いたことのないルーアの得意な力に驚きながら聞く。
ルーアは答える。
「そうですね。そのイメージです。そして、吸収した、拘束具を含んだ魔力を再度、放出し、今度は魔剣の形に、固め直したのです。」
「ということは、さっきの魔剣は、紛い物ということ?」
「そういうことです」
それはすごい、能力だ。
聞いたこともない。
「それができるのはルーアだけなの?」
「どうなんでしょう?私以外の子に教えたことはあるのですができないそうです」
まあね、そんな万能な物質変形ができればみんなやってると思うよ。
「ちなみにどうやってやってるの?」
「普通に、魔力でドロドロに溶かすイメージをして、また、放出するイメージをして、形作る感じですか。実を言うと自分でもよくわかっていないんです」
そう言って、ルーアはてへへと笑う。
なんか、デジャヴったね!
完全にヒカリさんだよね、それ!
先輩方も、天才型だ、って言う顔をしている。
うん、私もそう思う。
魔力っていうのは実に不思議だ。
人の感情によって、魔力は、何にでもなれる、そんな気がする。
魔力も意志を持っていて、主人に付き従おうとしているかのようだ。
まあ、私が、年少の頃、魔法陣や魔力の勉強に取り憑かれたのは、そういうところにある。
考えるだけで楽しいよね!
私たちはルーアから、魔力形状変化の手ほどきをしてもらったが、結局、何もできなかった。
少し時間が経ち、これ以上、尋問も必要ないと判断したのか、シャティー先輩が口を開く。
「ルーアさん、今回のことは、第一学園にとっても、隠すことのできない事件だと思います。しかし、あなたの意思は、キミハの殺害を望んでいたわけではなかったのなら、拘束を解かせていただきます。あなたの話を聞けば、第二学園の学園長が怪しいのは明白です。また、悪い何かに巻き込まれないように気をつけてください」
「はい、ありがとうございました」
ルーアはシャティー先輩の温情の言葉に頭を下げる。
「第二学園の学園長のことは、第一学園の学園長にも相談しておきます」
「はい、よろしくお願いします」
うん、学園長なら、シャティー先輩にもうまく、話してくれると思う。
安心だね!
「さて、お開きにしましょうか!」
シャティー先輩がそう言って、ルーアの尋問は終わった。
「先輩方、私、今から、1年1組で優勝パーティーをやるんですけど、来ませんか?」
そう言ったが、先輩方は、断る。
「ええ、お言葉だけ、いただきますね」
ルーアの方も見たが、ルーアも断る。
「いえ、今日、私は、大きな悪いことをしてしまったのです。反省の意も含め、お断りさせていただきますね」
ルーアは真面目タイプだね!
先輩方はルーアを学園の正門まで送るそうで、私たちは生徒会室の前で別れた。
私は寮に向かって、森の中を走る。
満点の星空が、私の行先を照らす。
こうやって、星空を眺めることのできる、平和な日が続いて欲しいね!
私は寮に到着した。
寮の大きな扉は閉まっていた。
ん?
私は大きな扉を開ける。
ガチャリ。
中は真っ暗だ。
え、場所間違えた?
ヒカリが寮って言っていたはず?
はずだよね?
電気をとりあえず、付けようかな。
確か、入って、右側の...
私が電気をつけるよりも先に、小さな光が目の前で点灯する。
へ、何?
私は小さな光が何か確認しに行く。
ひ、人魂!
私は腰を抜かして、尻餅をつく。
こ、怖いよ!
幽霊やだ!
幽霊やだ!
幽霊やだ!
そして、足と手を動かして、変な四足歩行で、寮の扉に向かってダッシュする。
私の進行方向にも、人魂が出る。
ぎゃーーーーー!
私は恐怖で開いた口が塞がらない。
私はその場でうずくまった。
そのとき、灯が、パッとついた。
クラスのみんなが周りにいた。
クラスのみんなは小さな灯りを、顔の下に当てて、幽霊を演出していたのだ。
な、なんて、ひどいことをするの...
私は愛がヘナヘナになって立ち上がれない。
泣きそうだよ。
というか、泣いてるよ。
ヒカリの大きな声が聞こえる。
「ほら、言ったじゃん!キミハちゃんはお化けとか幽霊とか超苦手なんだよ!」
アリスの声が聞こえる。
「ヒカリ、さすがですわ、この賭けはヒカリの一人勝ちですわね」
「このピザは私のものだよ。ふっふっふ〜」
「まさか、王国一の魔法使いにこんな弱点があったなんて...」
周りからも落胆の声が聞こえる。
あなたたちは、何をしているのかな?
私の怒りに気づいたクラスメイトたちは、少しずつ後ろに下がる。
ヒカリはご満悦でピザを食べている。
私はヒカリの頭を両拳でグリグリする。
「ヒカリさん?これはどういうことかな?」
「き、キミハちゃん、痛いよ!クラスでいろんな賭けをして遊んでいたの!クラスで1人ずつ二択の質問をして、みんなで当てるの!それで当たった人たちだけが景品のご飯を食べれるの!私はキミハちゃんが幽霊が怖いのイエスかノーかって質問をしたの!それでね、みんなはノーって答えたんだけど、私はイエスだよって言ったけど、信じてもらえなくて、キミハちゃんを実際に脅かして確かめようってなったの!だから、私、悪くないもん!」
そう言って、口をむぅ、と尖らせる。
あなたが、その質問をしたから私は恐怖体験をしたんだよねといえば負けだろうか...
その可愛い、起こり顔に免じて許すことにする。
「うん、わかった。私が悪かったから、そんな顔をしないで」
ヒカリは笑顔になる。
クラスもほっと胸を撫で下ろす。
そして、クラスメイトではない人の声が聞こえてくる。
「さあて、気を取り直して、パーティーの続きやっていくよ〜!キミハちゃんは何か歌のリクエストがあるかな〜?」
「って、Yu-A先輩!」
「ハロー、キミハちゃん!」
な、なんで、あなたもいるんですかーーー!
なんと、1年1組の優勝パーティーにYu-A先輩も参加していました!
次回はぶっ飛んだキャラたちがお送りする優勝パーティーをお楽しみください!




