初めての体育祭(8)〜敵も味方もみんな燃ゆる思いで〜
私とヒカリはアリーナに戻る。
戻ると、ヒカリの出る、第四競技の召集のアナウンスがすぐに流れ、ヒカリは走っていった。
私は競技が終わったアリスを見つけたので、寄っていく。
「アリス!」
「キミハ、見ていましたか?」
「ごめん、今、来たところ!」
「そうですか、実を言いますと、1年1組はこの競技はYu-A先輩に負けてしまいましたわ」
「うんん、お疲れ様!」
「ありがとうございます」
「Yu-A先輩が無双したの?」
「いえ、途中までは、かなりいい勝負だったのですが、ゴール目前で、Yu-A先輩のファンクラブの方が、ブローチを破壊されるのを覚悟で、突撃してきまして、数に負けましたわ...」
アリスは悔しそうにする。
「しかし、競技ができる生徒の数はもう、ほとんど残っていませんわ!がんばりましょう!」
「ナルとローラは?」
「ナルもローラもブローチが破壊されてしまいましたので出店の方に行きましたわよ。会いませんでしたか?」
「すれ違ったのかな?」
アリスと話していると、第四競技が始まった。
一番初めの出番の生徒は大きな球を作った。
そして、終わりだ。
え、レベルが低いのかな?
「アリス、このレベルじゃ、ヒカリ、余裕じゃない?」
「おそらく、数人で何かの形を作る予定だったのだと思いますわ。1人で難しい形は無理でも、幾何学的な形を数人で救って合体させれば、何かの形には見えるでしょうから」
「なるほど」
私はアリスの言葉に納得した。
今度はYu-A先輩だ。
この人、どんだけ出場するの?というくらい出場している。
Yu-A先輩は、大きなオオカミを作った。
しかし、魔物の禍々しいタイプではなく、デフォルメされた可愛いオオカミだ。
「Yu-A先輩さすがだね!」
「ええ、空中を魔法陣も無しに駆ける事ができるのは、王国でもYu-A先輩ぐらいですわ。魔力の扱いにおいては右に出るもの無しと思っていましたわ...最近までは」
「ハハハ、ヒカリに会って、世界が変わった?」
「ええ、ヒカリは、魔力どころか魔法陣で作り出した物質を変化させてますから...」
「もしかしたら、ヒカリも空を駆け出すかもね...」
「否定できないところが、恐ろしいですわね...」
今度はヒカリの番になる。
一番最後の出番のヒカリは黄金色の魔力を可愛いウサギに変化させた。
観客席からは、おおお、と声が上がる。
こんな魔力変化を見れるのは、すごく珍しい事だ。
歓声が上がったのも頷ける。
隣で、オオカミを作っていたYu-A先輩が、ヒカリのところに、オオカミと一緒に駆けていく。
「がおおおお!」
ヒカリはいきなりYu-A先輩が駆けてきたので、驚く。
私はすぐに駆け出した。
ヒカリが襲われる!
私は庇うように間に入ったが、Yu-A先輩は戦う素振りはみせない。
Yu-A先輩の目当てはブレスレットではなく、魔力のウサギの方だった。
そして、ヒカリの作った魔力のウサギを魔力のオオカミで食べようとする。
Yu-A先輩は、じゃれあいたいだけのようだ。
Yu-A先輩の思考はよく分からない...
ヒカリが唸る。
魔力が外部から、圧力を受ければ、自分に響くからね...
「ヒカリ、頑張れ!」
応援するしかないので私とアリスは応援する。
しかし、ウサギはYu-A先輩のオオカミに丸呑みされてしまった...
ヒカリの目は諦めていなかった。
ヒカリは思いっきり、魔力を込めたのか、大きな声を出した。
「やあああ!」
すると、オオカミの中から、無数のレーザ光線のような光が飛び出してくる。
次の瞬間、オオカミの口が弾けて、中から、大きな、ハリネズミが出てきた。
ヒカリの作ったウサギは、ハリネズミに変身した!
Yu-A先輩は、オオカミをハリネズミに消滅させられたにも関わらず、嬉しそうに笑う。
「今年の一年生、レベルが高過ぎない?面白すぎるよ!」
私たちは、緊張感のないYu-A先輩の言葉に苦笑いだ。
Yu-A先輩!体育祭、楽しみすぎです!
審判の先生方の審議によって、ヒカリがこの種目の1位となった。
ちなみにYu-A先輩は作った、魔力アートが消失したので、失格となった。
Yu-A先輩は悔しがるのかと思ったが、全然、そんなこともなく、次も頑張るぞ、と気合を入れていた。
この人は、体育祭を楽しめればいいというタイプなのだろう...多分...
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体育祭はこの後も、つつがなく、進み、第十競技を残すのみとなった。
現在のクラスの順位は、1年1組と3年1組が同ポイントでトップとなり、2年1組が3位となっている。
競走の競技では2年1組は必ず、1年1組を先にゴールさせていたがために、このような順位となっている。
なんか、すごく申し訳ないね...
私は、アリス、ヒカリと召集を受けて、アリーナ前の集合場所に来ていた。
アリスが私たちに声をかける。
「キミハ、ヒカリ、ここで、Yu-A先輩を倒せば優勝です!がんばりますわよ!」
「おおおお!」
私たちは気合を入れた。
申し訳ないとか言ってる場合じゃない!
脱落したみんなのためにも応援してくれたみんなのためにも頑張らなきゃ!
第十競技に出場する選手は、この体育祭で戦い抜いたものたちだ。
3年1組はYu-A先輩、2年1組はシャティー先輩、1年1組はアリスとヒカリと私だ。
あれ、ナミク先輩はどこかな?
ブローチを破壊されていなかったはずだが、この場にはいない...
分からないことを考えても仕方がないので、目の前の勝負に集中することとする。
学園長が声を上げる。
「それでは第十競技を開始するから、構えて!」
私は、懐から魔剣を取り出す。
そして、私は構える。
ドオオオオン!
学園長の豪快な、試合開始のゴングが鳴る。
私とアリス、ヒカリ、そして、シャティー先輩は地面を蹴って、Yu-A先輩に向かって、走る。
「おいで〜!」
Yu-A先輩はいつも通り、楽しそうに声を出す。
Yu-A先輩は焦りを見せずに、魔剣を両手で構えて、私たちを迎え撃った。
まず、ヒカリがYu-A先輩の真正面に出て、ライトニングソードを振り下ろす。
Yu-A先輩は最小限の動きで、その剣を避けるのではなく、先にヒカリのブローチを突き刺した。
ヒカリは、その場で倒れて、うずくまる。
強烈なYu-A先輩の圧縮された魔力の波動に、昏睡してしまった。
ヒカリ!
敵は取るから!
私はヒカリに重なって、Yu-A先輩に接近していた。
これはヒカリと話し合って決めていた作戦だ。
Yu-A先輩は倒れたヒカリの後ろに私がいて、驚いたようだ。
一気に決める!
私は走り込んだ勢いのまま、Yu-A先輩のブローチを目掛けて、ナイフ型の魔剣の突きを繰り出した。
Yu-A先輩はブローチの前に、分厚い魔力の波動を作り、防御した。
そんなの私の魔剣には効かない!
私の魔剣は、パリンと音をさせながら、Yu-A先輩の魔力を分解しながら突き進む。
やあああ!
Yu-A先輩は、ブローチの眼前で、私のナイフを魔剣で受け止めた。
打ち合うと同時に、私の魔剣とYu-A先輩の魔剣がありえない反応を巻き起こしている。
Yu-A先輩の魔剣は、魔力を噴き出しては、私の魔剣がその魔力を分解するのだ。
「キミハちゃん、その魔剣、ずるくない?」
「それはYu-A先輩もですよね?」
「ふふふ、そうだね!」
次の瞬間、Yu-A先輩は力を入れて、魔剣を振る。
Yu-A先輩は私のナイフを弾き飛ばして、私は大きな隙ができてしまう。
魔力を解放しようとしたが、すぐに、横にいた、アリスとシャティー先輩がカバーに入って、守ってくれる。
「Yu-A先輩、私たちのキングはそんな簡単に取れませんよ?」
シャティー先輩が私を守りながらそんなことを言う。
「そうこなくっちゃ!」
私たちは一旦、距離を取った。
「今度はこっちからいくよ!」
そう言って、Yu-A先輩が私のところに飛び込んでくる。
速い!
私はなんとか、Yu-A先輩の剣を受け止める。
が、踏ん張りが効かずに後ろに吹き飛ばされた。
私の体は宙を舞い、後ろに飛んでいく。
くっ!
Yu-A先輩がさらに追いかけてくる。
さらにここでありえない事が起こる。
競技選手が誰もいないはずの方向から、魔法攻撃が飛んできたのだ。
えっ!
これ...嫌な魔力...
避けられない...
私は魔力を解放して、魔力の波動を使って防御することを考える。
仕方がない!解放する!
しかし、解放するよりも先に、シャティー先輩が私をその魔法攻撃から身を挺して庇った。
「シャティー先輩!」
シャティー先輩に魔法攻撃が当たると同時に、バリバリと音がなって、弾けた。
「きゃあああ!」
シャティー先輩の悲鳴ともいえる声が聞こえた。
Yu-A先輩も突然のありえないことに、私への追撃をやめて、シャティー先輩を見ている。
私は地面を転がったがすぐに起き上がって、シャティー先輩のもとに走る。
「シャティー先輩!」
シャティー先輩は絶えず悲鳴を上げている。
私の魔剣で無効化すれば、どんな魔法陣だって、破れる!
私は魔剣を手当たり次第、シャティー先輩に触れさせた。
しかし、全く、反応がない。
ただ単に、シャティー先輩の魔力を分解しただけだ。
な、なんで...
「キミハ、シャティー先輩はどうしたのですか?」
「分からない...」
どういうこと...
もう、魔法陣は展開されていないということ...?
シャティー先輩に何が...
観客たちも、今、おかしな攻撃が飛んできたのではと騒ぎ始めている。
先生たちも競技を止めるか悩んでいるみたいだ。
一刻を争うが、試合が止まれば、魔法を仕掛けた誰かの思う壺かもしれない...
私が、なんとかしたいのに...
何が起こっているの...
ここで、Yu-A先輩が呟く。
「魔力が強制的に、出力されてる...?」
魔力が...強制的に...?
まさか...
まさか...
この魔法陣は、王国で今では禁止されている...
王国の残虐な建国をさせた...魔法陣...
私は目を瞑る。
繰り返させないよ!私は!
私は、外でどうするか考えている先生方の中にいる学園長に合図を送る。
私がなんとかしますから!
身振りで伝えると、学園長は、すぐに、不可視の結界を私たちの周りに張ってくれる。
学園長が何をするんだっと責められているが、あの人のことだ、なんとかするだろう。
そんなことよりもシャティー先輩を助けるのが先だ。
私は魔力を解放した。
ポニーテールを作るリボンは光となって散る。
長い髪の毛がバサッと落ちる。
そして、大河が流れかの如く、髪の根本から、徐々に蒼く染まっていく。
かけていたメガネはいつ間にか消滅し、私の緑眼はエメラルドの如く、煌く。
私が手に持っていた魔剣は、刀身が伸びロングサーベルとなる。
右手でゆっくりと魔剣の鞘を外して、地面に優しく捨てる。
魔剣はきらっと輝いた。
「キミハ、待って、大きな魔法陣を使うなら、私も使って」
アリスは真面目な顔で私に言う。
いつかの手を繋いで、魔法陣を起動したことを思い出しているのだろう。
今から使う魔法陣は聖級魔法陣だ。
アリスが起動を試みたこともない魔法陣...
そんなのアリスが死んじゃうかもしれない...
「キミハちゃん、私も手伝えるなら言って...私じゃシャティリアちゃんを助けられないから...」
いつもは元気いっぱいのYu-A先輩は、真面目な顔で言ってくる。
Yu-A先輩もいれば、なんとかなる...?
「キミハ、時間がありません!考えている間に、シャティー先輩が!」
「アリスもすごい負荷がかかって...」
「そんな魔法陣、キミハが一人でやれば、キミハが死んじゃうでしょ!そしたら、シャティー先輩も救えない!キミハはいつも言ってるじゃないですか!やって後悔はするのはいいけど、やらずに後悔するのは、同じ後悔でも、笑えない後悔だって!やるなら、笑って後悔しましょう!後で、馬鹿だったな〜!って笑える後悔にしましょう!」
アリスは本気の顔でそんなことを言う。
私は一回、目を閉じる。
そして、決める。
「うん、ありがとう、アリス」
私はYu-A先輩の方を向く。
「Yu-A先輩!手伝っていただけますか?」
「うん!もちろんだよ!」
私たちはシャティー先輩を助けるために一致団結した。
次回、体育祭が決着します。
ご期待ください。執筆頑張ります。




