王国に決闘を申し込みます(3)
今日は決闘の当日だ。
授業終わりに、私とアリス、ヒカリは、クラスルームで集合する。
この決闘によって、アリスの退学か否かが決まる。
アリスが私たちに言う。
「キミハ、ヒカリ、今日は私のためにありがとうございます。私はお2人になんとお礼を...」
アリスの話が長くなりそうなので、私はアリスの言葉をさえぎる。
「もう、アリス。そういうことは言わないの。私たちはアリスに、お礼をされたくて戦うんじゃないよ?あなたが大切な親友だから戦うんだから」
「そうだよ、アリスちゃん!」
ヒカリも私の言葉に賛同してくれる。
「私はお2人のような親友を持てて、幸せです」
私はアリスの幸せそうな顔を見て、意地悪を言いたくなる。
私の悪巧みの笑顔を見て、アリスが私に聞いてくる。
「キミハ、何か、悪そうなことを考えませんでした?」
「ふっふっふ、どうしてもお礼をしたいなら、用意してもらおうかなと思って」
私はぐへへと野盗のような顔をして、ムードを打ち壊す。
ヒカリが、キミハちゃん!と驚いている。
「キミハ、あなたは何が欲しいのですか?」
アリスが聞いてくる。
聞かれたならば、答えるしかない。
「アリス、あなたは私が学園生活が楽しめるように、しっかりとこれからの学園生活を楽しむことを望みます!」
は、恥ずかしい。
私、今、恥ずかしいこと言った。
柄じゃないことを言ってしまったよ。
私は茹でタコのように真っ赤になる。
2人は目を輝かせている。
「ごめん、今のなし!よーし、決闘、頑張るぞ!」
私は何もなかったかのように、左の拳を高く頭上に掲げて、意気込む。
「いいえ、忘れません!楽しみます!」
「キミハちゃん!私もしっかり聞いてたよ!私もその輪に入れて!」
ヒカリさん、しっかり聞かなくてよろしい。
私は、このままではずっと茶化されると思い、先陣を切って、アリーナに向かう。
2人も私を茶化していたが、歩き出したのを見て、もう待って、キミハちゃん、怒らないで、と言いながらついてくる。
私たちはアリーナについた。
まだ、誰も、アリーナには来ていない。
ここは学園内だから、悪人は基本的には入れない。
学園長がどのような結界を張っているか分からないが、生徒に害意のある人物は入れないと思う...と思いたい...
そうでなければ、貴族のたくさん通う、この学園は、人攫いの格好の餌食になってしまう。
アリスのお父様のカナフィルディア伯爵は、どのような人物なのだろうか。
この学園の結界に入れるとすると、こちら側なのか...?と思いたい...
今の王国は誰が味方で、誰が敵なのか全く分からない。
先の魔族との戦争以降、誰が何を企んでいるのか分からない。
分からないからこそ、誰も何も話さない。
話せば、こちら側か...あちら側か...確定してしまう。
確定してしまえば、逆サイドに殺されてしまうだろう。
特に王国の重役たちは、隣にいる仲間が、敵かもしれないという疑心暗鬼になっている。
来る時まで、耐えるしかないと思う。
王国の未来のために...
私は考え込んでいた。
ヒカリの声に気づく。
「キミハちゃん!キミハちゃん!」
ヒカリが私の体を揺すっている。
「ん?何?」
「やっと気づいた!来たよ、学園長たちが!」
私はアリーナの入り口に視線を向ける。
学園長が入ってきたのが見える。
後ろにはカナフィルディア伯爵と思しき男性と、騎士2人と筋肉の塊、いや、騎士団長がいた。
私は学園長の元に寄る。
アリスとヒカリも私の後ろをついてくる。
「キミハちゃん、こちらがカナフィルディア伯爵よ」
学園長の紹介にカナフィルディア伯爵が一歩前に出た。
私はカナフィルディア伯爵の方を見る。
ぐっ!
一瞬、いやな魔力を感じた。
何?
ヒカリとアリス、そして、カナフィルディア伯爵も、どうした?という顔をしている。
今は感じない...
「大変失礼いたしました。お初に目にかかります、カナフィルディア伯爵。私はキミハ・サクラグリと申します。以後、お見知りおきを」
私は丁寧に挨拶する。
カナフィルディア伯爵も自己紹介を始める。
「私は、カナフィルディアだ。よろしく頼む」
「この度は、決闘を承諾していただき、ありがとうございました」
「私の娘のためを思ってやってくれたのだろう。その点は感謝する。私も退学の件は娘のためを思ってのことだ。感謝はしているが、この決闘は敗北するわけにはいかない。全力で騎士を選考させてもらった」
「精一杯、決闘に望みたいと思います」
「ああ、よろしく頼む」
カナフィルディア伯爵は、決闘には余裕で勝てると思っているのだろうか、心に余裕がある。
そして、人当たりの良い人物に思える。
まあ、アリスのお父様だし、悪い人ではないよね...
このあと、ヒカリや騎士の方が自己紹介をし合った。
決闘の前は互いに名前を名乗り合うのが、礼儀というものだ。
カナフィルディア伯爵がアリスに話しかける。
「アリス、君はもっと、この学園をやめたがっていると思っていたよ。学年序列1位にもなれなかったのだから、こんなところにいても意味がないだろう」
「お父様、私はもっと彼女らから学べるものがあると思ったのです」
「まあいい、決闘の結果には従ってもらう。この決闘に君たちが負ければ、君は退学させる」
「はい、もちろん、決闘の結果には従います。しかし、簡単には負けるつもりはありません」
アリスは怖がりながらも胸を張って答えた。
「さて、決闘を始めましょうか」
学園長が騎士たちと私たちに声をかける。
学園長の言葉に私たちは、向かい合う。
カナフィルディア伯爵は、アリーナの貴族が観戦できる席に移動していく。
学園長も、決闘の開始宣言を終えたら、その席に行くようだ。
アリーナの闘技場スペースと観客席の間には、魔力の壁があって、観客に攻撃が飛ばないようにしてある。
安心安全設計だね。
「キミハ、入学式以来だな」
騎士団長が話しかけてくる。
私は答える。
「騎士団長、お久しぶりです」
「まさか、お前と決闘をすることになるとはな」
「騎士団長!か弱い女の子の学生なのですから、お手柔らかに」
私は最大限乙女チックに紳士であろう筋肉の塊に言う。
「そうだな、王国に喧嘩を売って、あまつさえ、この決闘前の緊張ムードで、余裕綽綽とこの俺に冗談を飛ばせる、か弱い女の子だもんな」
騎士団長と私はふふふと笑い合う。
アリスとヒカリは、何をしているんですか!という顔をしている。
え、だって、カナフィルディア伯爵が移動し終わるまで暇だし...
「騎士の方もお強そうで、怖いです」
私と騎士団長は騎士2人の方を見る。1人は男性で、1人は女性だ。
「お前が言うと、まじで嫌味になるからやめとけ。この2人は俺が率いる第一部隊の騎士の中で1番強いのと2番目に強い騎士だ」
「選出に手を抜いてくれないんですね」
私は騎士団長を汚いものを見る目で見る。
「カナフィルディア伯爵から、手を抜かずに選んでくれと言われたからな。それに相手がお前なら、尚更、手を抜くわけには行かない。騎士団としても決闘で学生に負けるわけにはいかないからな。それにお前も、騎士斬りで有名なアリス嬢を連れているではないか」
私たちはアリスの方を見る。
アリスは緊張からか、私たちの視線にビビっている。
「アリスは立候補ですよ。自分の未来を決める決闘は自分で戦いたいという美しい信念からの立候補です。学生をけちょんけちょんにタコ殴りしたいという騎士団長の汚い選出と同じにしないでください」
「お前な...」
騎士団長は、一瞬、言葉を失う。
そして、また口を開く。
「それで、そのツインテールの...ヒカリさんと言ったかな。その子も強いのか?」
私と騎士団長はヒカリを見る。
ヒカリはビクッとびびる。
「ヒカリですか?ヒカリはまだ、戦闘経験がないので分からないです」
「戦ったことがない子をこの決闘に選んだのか?」
「ヒカリも立候補ですよ。この決闘を通して、強い心を育みたいそうです」
「この決闘に立候補するだけで十分と言えるほど、強い心を持っていると思うがな」
「騎士を斬りまくっているアリスはもちろんですが、ヒカリも天才なので気をつけたほうがいいですよ」
「お前が天才とか言うのか。無茶苦茶なお前が...それは怖いな...」
騎士団長はヒカリをじろじろ見る。
ヒカリは一歩下がる。
「ダメですよ、女の子をそんなにじろじろ見ては」
「すまん」
私と騎士団長がどうでもいいことを話していると、カナフィルディア伯爵は観客席についた。
学園長がそれを確認する。
「決闘をやりますよ。両者下がって」
学園長の言葉に、一同は気を引き締めて、間合いをとる。
私たちは、真ん中を私にして、ヒカリとアリスが脇に並ぶ。
騎士団長たちは、騎士団長を真ん中にして、一列に並んでいる。
うん、この隊列なら、作戦を実行できそうだ。
学園長が私たちを確認する。
そして、少し離れたところに立つ。
腰に携えている魔剣を抜く。
「それでは決闘を始めます。構えてください」
アリスは腰の魔剣を抜き、両手で剣を構える。
私はブレザーの胸の裏のポケットから、魔剣を取り出し、鞘をつけたまま、左手で逆手に持つ。
ヒカリは、拳で戦うような構えをしている。
「では、始め!」
学園長は魔剣を、振り上げ、振り下ろした。
私たち3人は、開始の合図で、全速力で騎士団長に向かって突っ込んだ。
騎士団長は私たち3人が突っ込んでくるのを見て、どっしり構える。
騎士団長の隣で構えていた騎士たちは、私たちの速攻攻撃に一瞬、どのような行動をとるか迷ったようだ。
少し、遅れて、騎士団長を守ろうと、中央に、走り込んでくる。
遅れを取り戻そうと、防御を無くして、スピードを重視して、走り込んできている。
うん、読み通り!
私はニヤっと笑う。
騎士団長が私の笑いに気づいて、サッと飛んで、2、3歩、下がって、どしっと構え直した。
騎士団長が下がったのにもかかわらず、アリスとヒカリの進む向きは変わらない。
2人の騎士は、騎士団長を守るため、牽制しようと、前方にいるアリス、ヒカリにそれぞれ、攻撃をしようとするが、ヒカリもアリスも見向きもせず、身体強化の魔法陣を起動して、さらに加速する。
アリスは加速魔法陣を起動する。さらに早くなる。
次の瞬間、アリスとヒカリは私の前で交差する。
そして、前にいる騎士に攻撃をする。
2人の騎士は、攻撃してくるとは思わない相手が攻撃してきて、反応が鈍る。
アリスはそのまま、剣で騎士のブローチをぶった斬った。
女の騎士の、くっ、という声が聞こえた。
ヒカリは、息をするかのごとく、ライトニングレーザーを撃ち放ち、騎士のブローチを破壊した。
今度は男の騎士の、ぐあああ、という声が聞こえる。
残るは騎士団長だけ。
私はそのまま、前に走って、ナイフ型の魔剣で、切り掛かった。
騎士団長は私の魔剣を受け止める。
「キミハ、仕掛けてきたな」
「どーも、あとは騎士団長だけですよ」
お互いに剣が弾かれる。
私は、そのまま、騎士団長に負けじと斬りかかる。
私1人では、正直、倒すのは難しい。
でも、騎士団長の剣を受け続けて、気をこちらに向かわせれば、アリスとヒカリが騎士団長の左胸のがら空きになったブローチを破壊してくれるはずだ。
私と騎士団長はナイフとロングサーベルで、つばぜり合いになる。
私の後ろから、アリスとヒカリの魔力を感じる。
若干、アリスの方がこちらに早く辿り着くかな。
この勝負、貰ったよ!
私は、一旦、ナイフに力を込めて、押して、すぐに力を緩める。
いきなり、力をぶつけていた私の押し返しがなくなり、騎士団長は前にバランスを一瞬だけ崩す。
走ってスピードに乗っているアリスと私が入れ替わって、アリスがそのまま、ブローチを斬れば、決闘に勝てる。
私は入れ替わるために、場所を譲ろうと、動き出す。
その時だった。
大きな魔力を感じて、頭が揺れる。
何?嫌な魔力!
私は視線だけ、魔力がきたであろう向きに向けた。
カナフィルディア伯爵?何をしたの?
このまま決闘は終わらせてしまおう。
私は、アリスに場所を譲ろうと、体を回転させる。
アリスが飛び込んでくる。
アリスは剣を振るう。
当然、騎士団長の方へ剣が振るわれると思った。
が、違った!
アリスの剣は私に振り下ろされている。
ちょ!アリス!
私は無理な体制で、アリスの魔剣を握っていたナイフ型の魔剣で受け止めた。
「アリス?どうしたの!」
「私はあなたに負けたくないの」
その瞬間、アリスの体から嫌な魔力の波動が出てきて、アリスの体を包み込む。
アリスの目はいつもの優しい目ではなく、魔物の目のように禍々しいものとなっていた。
アリス!
「なんだ、仲間割れか!貰ったぞ」
バランスを崩していた騎士団長が、戦線復帰し、アリスの剣に気を取られている私に背後から斬りかかる。
ちょ、どうすれば!
万事休すなの!
騎士団長の魔剣は、振り下ろされた。
くっ!
その時、カッと眩しい光が私たちを一瞬包んだ。
私には騎士団長の魔剣が当たらなかった。
ヒカリが私を守ってくれたようだ。
ヒカリはライトニングレーザーを剣のような形にして騎士団長の魔剣を受け止めていた。
「何!」
騎士団長は驚く。
剣を使えない役割のはずのヒカリが剣を取り出し、自分の剣を受け止められているのだから当然だ。
ヒカリ、受け止めるんじゃなくて、それなら、騎士団長のブローチも切れたんじゃない?
ヒカリは、初戦闘みたいだから仕方ないと言えば仕方がない。
私はアリスの剣を弾いて、騎士団長からもアリスからも一旦、距離をとった。
「アリス!大丈夫?」
「私はあなたに負けない!」
アリスは地面を蹴った。
そして、禍々しい魔力を纏って、身体強化と加速魔法陣の重ねがけをして、私に迫ってくる。
うっ、今のアリスには言葉が届いてない...
その時、ヒカリが私に言う。
「キミハちゃん、騎士団長さんは私がなんとか足止めするから、アリスちゃんを!」
私はヒカリの方を見て、大きく頷く。
頼んだ、ヒカリ!
私はアリスと、ヒカリは騎士団長と対峙した。
次回も決闘が続きます。




