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初めての遠足(中編)

「ヒカリ、いくよ」

「ちょ、ちょっと待って、キミハちゃん!」


私は、早々に準備を済ませ、寮の大きな扉のところで待っている。

ヒカリは一生懸命、皮の鞄に、今朝、一緒に作ったサンドイッチを詰めている。


このサンドイッチを作るにも、一波乱があった。


話は今朝に遡る。


今日は私のご飯当番だったので、当然、遠足1日目に食べるお弁当は私が作るものだと思っていた私はアルバイトも休みにしてもらって、朝から、サンドイッチを作っていた。

いつもの学校がある時は適当に朝ご飯の余りとかをお弁当にしていたのだが、せっかくの遠足なので、しっかりお弁当を作ることに決めていたのだ。

この前、ヒカリと買い物に行った時に買ったエプロンもしっかり付けている。

ヒカリは私がサンドイッチを作り始めて、すぐに二階から降りてきた。

私は、ご飯当番じゃないのだから、出来る限り寝て、一泊二日に備えたほうがいいと思って、ヒカリに言った。


「ヒカリ、もう少し、寝たほうがいいんじゃない?一泊二日だから、夜は見張り番とかもあって、あまり眠れないかもよ」

「うんん、キミハちゃん!私もせめて遠足のお弁当は手伝わないと!」


ヒカリは私がお弁当をせっせと作ろうとしているのを見てそんなことを言ってくる。


「ん?今日は私がご飯当番だから、やるよ?」

「だって、明日は常温保存の効く、食べ物を食べるから、ご飯当番が必要ないでしょ?晩ご飯までがダンジョンだから」

「うん」

「だから、せめて、今日のお弁当は私も手伝うの!」


なるほど、自分だけご飯当番がスキップされて、楽はしたくないということですか。

そこは、サボれて、ラッキーとか思うんじゃないの?


頑固なヒカリさんは言っても聞かないので、私は手伝ってもらうことにした。


「キミハちゃんは卵サンドだね」

「うん、楽だからね。ヒカリは何作るの?」


私はレンジで簡単卵サンドを作っていた。


「じゃ、私はツナサンドを作ろうかな」


そう言って、ヒカリはまず、エプロンを付けた。

そして、ヒカリは買いだめしてある缶詰の棚に手を伸ばして、物色する。

すぐに、ヒカリは顔をしょぼんとさせる。


「ツナ缶がない!」


そいえば、数日前の朝食にツナチーズトーストしたときに、使った気がする。


「他のを入れてみたら?」

「うん、入れれそうなのを考える」


使いやすい缶詰はあらかた、使っていたような気がする。

私もヒカリもご飯を作る時に缶詰は重宝しているからね。


ヒカリは、1つの缶詰を手に取って、ブルブル震えている。


「こ、これのサンドイッチ、お、美味しいかな?」


私はヒカリが手に持っている缶詰を確認する。


レッドドラゴン!

ヒカリさん、それをサンドイッチにするの!どんな味よ!


レッドドラゴンの缶詰はこの前、ヒカリと街に買い物に行った時に缶詰の露店で見つけた得体の知れない缶詰だ。

露店の店主に滅多に見られない缶詰と言われ、私たちは手に取った。

値段はツナ缶と同じくらいだったので、私たちは謎のテンションで購入した。

しかし、味もわからないのでどの料理に合わせるかもわからず、缶詰の在庫がほとんど尽きるまで、放置されていた缶詰だ。


ヒカリはレッドドラゴンの缶詰とにらめっこした後、使うことを決めたようだ。

ヒカリは缶切りを使って、缶詰を開ける。

レッドドラゴンの缶詰の匂いがキッチンに広がる。


うーん?普通に牛肉の缶詰っぽい匂いがする。


缶詰の中を覗いてみる。


お肉の部分だけを缶詰にされているみたいだね。

牙とか入っていたらどうしようと思ったよ。

まあ、牙は防具の素材とかに使われるからそんなことはないと思うけどね。


「案外、普通にサンドイッチにできそうね」

「うん、よかったよ。牙とか入ってなくて」


ヒカリも同じことを考えていたようだ。

ヒカリは、一度、ボウルに缶詰を逆さにして、中身を取り出し、お肉をほぐしにかかった。

ほぐし終わったら、マヨネーズを手に取った。


まあ、マヨネーズは何にでも合わせれるよね。


私は自分の卵サンドの作業に戻る。

ヒカリはマヨネーズとレッドドラゴンを混ぜ合わせる。

すると、ヒカリは声を上げる。


「ひいっ!」


私はまた、ヒカリの元に戻る。


「どうしたの、ヒカリ?」


ヒカリは、ボウルの中を指差す。

私は、ボウルの中を見る。

すると、マヨネーズに混ぜ合わされたレッドドラゴンの肉は黄色に変色していた。

ヒカリは心配そうに声を出す。


「だ、大丈夫かな?腐ってたりしないよね」


私はボウルを手に取って、鼻に近づけて、匂いを嗅ぐ。


「うん、匂いは大丈夫そう?」


私はスプーンをサッと食器棚から取り出し、レッドドラゴンの肉をすくって、手の甲にのせて、食べてみた。


「うん、味も大丈夫そうだよ」


ヒカリは本当?って私に聞く。

私はスプーンですくって、直接、ヒカリに食べさせてあげた。


「美味しいっっっ!」

「美味しいけど、色は卵みたいになっちゃったね」

「うん、キミハちゃんの作った卵サンドと分けておかないとわからなくなっちゃうね」


卵サンドとレッドドラゴンのサンドイッチはお弁当のバスケットにわかるように分けて入れることにした。

あとは、野菜を挟んだ野菜サンドを数種類作って、バスケットに詰めた。


私たちは、お弁当を作り終えた。

私は軽く、朝ご飯を作るのに取りかかった。

朝ご飯も一緒に作るとヒカリが言い出す。

いつも通りなので、手伝ってもらう。

そして、朝ご飯を済ませた。

それぞれの部屋で制服に着替え、昨日、荷造りをした荷物を持って寮のエントランスに戻ってくる。

私は2人でつくったサンドイッチのバスケットを鞄に入れようとした、すると、ヒカリが声を上げる。


「キミハちゃん、水とか、火起こしの用意とか私より荷物が多いんだから、私がお弁当は持つよ!」


遠足中では、ヒカリの水や火をもらうことになりそうだけど、自分1人になった時に何もできなくなる装備ではダメだと思い、魔法陣が使えるヒカリよりもたくさんの荷物になっている。


「ええ、なんか、悪いよ」


流石の私も、お弁当を手伝ってもらい、朝ごはんを手伝ってもらい、お弁当を持ってもらうのはヒカリに悪いと思った。


「うんん!私が持つ!その代わりと言ってはなんだけど、貴族様と話すのは慣れてないから、フォローしてもらえると...」


大きく否定したあと、ヒカリはそんなお願いを私にする。

ヒカリの男をダメにしそうなお願いポーズを私にしてくる。

この子、打算なのか、私が悪いと思わせないようにしたいのか、天然なのか、もう分からない。

私はヒカリさんに白旗を振り、お弁当を持ってもらうことにしたのだ。


そして、今に至るというわけだ。


ヒカリはお弁当のバスケットを鞄に詰め終え、私の方に走ってくる。

ヒカリが寮の扉から出たのを確認して、扉を閉めて、鍵をかけた。

いつも、普通に登校するときは、寮に鍵をかけていないのだが、今日と明日は、ヒカリとずっと一緒に行動するし、寮を開けている時間も長いということで、鍵をかけることにした。


私とヒカリはダンジョンに向かって歩き出す。

私たちの寮は他の寮に比べて、一番、ダンジョンに近い。

この学校に来て、初めて、校舎から15分の森の中にある寮の強みを発揮したと思う。


なんで、こんなところに寮を作ったのか...


私たちはダンジョンに一番乗りで着いた。

暇だったので、ヒカリとこの遠足のルールなどを確認していた。

ルールは次のように決まっている。


①決められた階層から出てはいけない。

②他の班と合流してはならない。

ただし、①と②ともに命の危険や重大な怪我の恐れがある場合はこの限りではない。


①は、クラスによって階層が決められている。今回は初めての遠足ということもあり、1組が10層、2組が9層、3組が、、、10組が1層というふうに決められている。上級生になると、もっともっと深くなるらしい。階層から出ると危険生物に出会ったり、迷子になった時に捜索が困難になるという理由のもと、①は定められている。階層から出てはダメなのだから、ダンジョンを出るのも、もちろん禁止だ。②は決められた人数で対処するという練習のためだ。魔物を30人で対処するのと、5人で対処するのは、弱い魔物であったとしても、個人個人の動きが大きく変わってくる。


ヒカリと話していると、アリスたちがやってきた。


「キミハさん、おはようございます」


3人はお嬢様っぽく挨拶をした。

ヒカリはいきなり、ビビっている。


ヒカリ、二日間、大丈夫かなあ。


「アリスもみんなもおはよう」


ヒカリも私に続いて、おはようございますと挨拶をしている。

出発は班員がそろった時点だ。

私たちは、ダンジョンに入ることにした。


10層に到着した。

私たちが一番初めにダンジョンに入ったので、魔物に遭遇する確率はかなり高いだろう。

と思っていたら早速、魔物に遭遇した。

私が何の魔物か声を上げようとしたら、アリスが先に声をあげた。


「Cランクのビッグラビットだわ」


私は魔剣を取り出そうと、ブレザーの胸の裏ポケットに手を伸ばす。

腰に魔剣を携えているナルが声を上げる。


「ここは私とローラに任せてもらえないかしら。戦力で言ったら、私たち、この班だとお荷物レベルだから、少しでも役に立ちたいの」


ヒカリがお、お荷物なんて、滅相もないです、とおどおどしている。

魔物を放置はできないのですぐに私は答える。


「うん、今回は、ナルたちに任せるわね。でも、ここは浅い階層だから、低ランクの魔物が多いだろうから、変わりばんこで、戦いましょう」

「お気遣いありがとうございます、キミハ様」


キミハ様と呼ばれるのは、流石に、辛いよ...


ナルたちは的確に魔力器官である耳を攻撃し、ビッグラビットは光となって散っていった。

この後も何度か魔物と遭遇し、変わりばんこで討伐し、ダンジョンを進んだ。


時間はお昼になる。

私たちはダンジョンのひらけた見晴らしの良いところでお昼をとることにした。

ヒカリは今朝作った、サンドイッチを取り出す。

アリスたちは、常温保存できる食料で済ませるみたいだ。

アリスは私たちのお弁当を興味津々で見ている。


「キミハさんとヒカリさんはお弁当を持ってきたのですね」

「うん」


私は答える。


「キミハちゃんと早起きして、作ったんです」


ヒカリもそう答える。

ヒカリも午前の魔物の討伐で大分、打ち解けたようだ。

私たちは、お昼ご飯を食べ始める。

ヒカリはいつも通り、美味しそうにサンドイッチをほうばる。

その顔にアリスたちはサンドイッチが食べたくなったみたいだ。

アリスはヒカリにお願いをした。


「あの、ヒカリさん、こんなお願いをしたらダメなんですけど、サンドイッチを少しいただけないでしょうか。こちらと交換をしていただけないかと...」


人の食料を取るのは良くないので、アリスは申し訳なさそうに交換を申し出た。

ヒカリは突然のアリスの言葉に動揺する。

慣れたのかなと思っていたけど、直接、話しかけられるのには慣れていないみたいだ。

ヒカリは手に持っていたサンドイッチを急いで食べて、新しいサンドイッチを手に取って、両手で、頭を下げながらどうぞ、とする。


「キミハちゃん特製たまごサンドです!」


私のを献上してるよ、この子。

ん?ちょっと待って、ヒカリ、それ、たまごサンドじゃないんじゃない?

バスケットのその位置に入れたのは、レッドドラゴンサンドだよ!

今日一のゲテモノサンドだよ!


慌てて、よく確認をしなかったヒカリはアリスにレッドドラゴンサンドを献上した。

アリスは笑顔で、ありがとうございます、と言って受け取る。

ナルとローラはキミハ様が作ったサンドイッチと興味を示している。

まあ、このまま、アリスがどんなリアクションをするか見たかったけど、それではヒカリが撃沈しそうなので、助け舟を出してあげることにした。


「ごめん、アリス、それ、レッドドラゴンサンドなの。ヒカリが緊張して間違えて渡しちゃったのよ」


ヒカリは自分の間違いに気づき、や、やっちゃったの顔をしている。


「レ、レッドドラゴンサンドですの?」

「うん、だから、こっちのたまごサンドをどうぞ」


私はたまごサンドを掴んで、アリスに渡そうとする。

しかし、アリスは受け取ろうとしない。


「いいえ、味なんて、関係ありませんわ。これは、ヒカリさんが私に下さったのだから、これをいただきます」


そう言って、アリスは、パクリとレッドドラゴンサンドを食べた。


「美味しいですわ」


アリスは顔を喜ばせる。


そうなんだよね、味見した時にも思ったけど、レッドドラゴン美味しいんだよね。

ナルとローラが羨ましそうにアリスを見ている。

アリスにだけあげては、二人がかわいそうだろう。


「ナルとローラもサンドイッチ食べる?」

「キミハ様のお作りになったというたまごサンドをいただきたいです」


ナルのその言葉にローラもうんうんと頷いている。

でも、ここで、私は1つ条件をつける。


「これからは、キミハ様じゃなくて、キミハと呼んでくれるなら、あげてもいいよ!」

「そ、そんな、ひどいです」


いや、”様”を取るだけじゃん!


私はどうするのと2人の前でたまごサンドをふりふりする。

2人は顔で相談して、意を決したようだ。


「わかりました。しかし、キミハ様を裏で崇拝するときは、”様”を付けて、お呼びしてもよろしいですか?」


ローラがそんな提案をする。

まあ、私がいないところなら、いいかな。

ってか、崇拝って何...私は女神じゃないんだけどっっっ!


「まあ、私の前でなければいいよ」

「ありがたき幸せ!」

「ありがたき幸せ!」


2人は、下賜のものを受け取るかのように、私からたまごサンドを受け取った。

2人はそのたまごサンドを大事そうに食べる。


「美味しいです。キ、キミハ...」

「私も美味しいです...キミハ...」

「ありがと」


美味しいって言ってもらえると素直に嬉しく感じる。


「あのキミハさん、それと、ヒカリさん、キミハ、ヒカリと私もお呼びしてもいいかしら?」

「うん、もちろん」


私はすぐに返事をする。

ヒカリも私に続いて、はい、と遠慮がちに返事する。


「ヒカリも私のことはアリスと呼んでね」

「そ、そんな、貴族様のことを呼び捨てで呼ぶなんて...」

「私は身分関係なく、あなたと仲良くなりたいのだけれど、ダメかしら?」


アリスはお嬢様っぽく、お願いをヒカリにする。


「私も仲良くなりたいです...ア、アリスちゃん」


少し俯きながら、そして照れながら、さん付けから、ちゃん付けに変わった。

ヒカリなりの精一杯だろう。


対照的に私は、アリスにキミハはいつの間にか、私のことを呼び捨てにしているわねと笑われた。


私はヒカリほど、身分を気にしていないからね。

ん?違うか、平民平民って偉そうに言われるのにはカッチーンってきちゃうね。

そう考えると、案外、私は身分を気にしているのかな...?

うん、自分のことだけどよくわかんないね。


その後、ナルとローラともヒカリは、ちゃん付けの契約を交わし、私たちの親睦はかなり深まった。


午後からも魔物を数匹、撃退し、夜になる。

夜といっても、ダンジョンは常に薄暗く、光も設置されている灯りが頼りなくらいで、昼間と明るさは変わらない。

見張りの順番を決めて、最初に見張りじゃない人は寝る準備をする。

最初の見張はナルだ。私は5番目なのでさっさと寝ることにした。


体力を回復させるのも大切だからね。


私はすぐに夢の中に潜り込んだ。

次回はバトル回になる予定です!

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