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ヒカリと行く初級ダンジョン(前編)

風紀委員は解散となり、私は一度、寮に戻ることにした。


私はアリーナの入り口で遠目に光がいることに気づいた。


「ヒカリ?どしたの?」


元気がないように見える。


「あ、キミハちゃん」


何か言いずらそうな雰囲気を見せる。

私は、ヒカリに近寄る。


「どした?」


私は優しく聞く。また、何かに巻き込まれたのかもしれない。


「あのね、昨日、ダンジョンで落とし物しちゃったみたいで、一緒に探してくれないかなあって」

「うん、もちろん、いいよ」


ヒカリは私が頷くと、さらに顔を暗くするが、何もなく、歩き出そうとする。


ん?ヒカリ?


「ヒカリ、ちょっと待って」


私はヒカリの肩を掴んで、制止させた。さらに続ける。


「何かあるなら、聞くよ?」


ヒカリは振り返り、明らかな作り笑いをして言う。


「うんん。大丈夫。ありがと、キミハちゃん」


大丈夫ではないと思うけど、私に言えないことだってあると思う。

何かあれば、私が守る。とりあえず、見守ってあげよう。


私はヒカリと共に、森の中の初級ダンジョンに向かった。


ダンジョン第5層まで降りてきた。


「ヒカリ、落とし物って何?」

「見ればわかるもの」


見ればわかるって何だろう?曖昧だな。私にも見てわかるのかな。


「キミハちゃん、ここに縦穴があるよ」


ダンジョンのことはハンター時代にリュウさんに教えてもらった。

通常、ダンジョンは階段を使って降りる。その階段も大昔のハンターたちが作ってくれたものだ。

この階段は重要で魔物を退ける魔法陣がところぜましと並べられている。

もしものことがあれば、この階段エリアに逃げこむこともある。

そして、ダンジョンを降りる方法として、縦穴がある。

縦穴も大昔のハンターたちが近道をしようと掘ったものだ。

ただ、ダンジョンを降りる際は縦穴を使わないのが恒例となっている。

縦穴を使うと、下の状況を視認できない。

もし、下にAAA級モンスターの大群が行進していれば、逃げることができない可能性もある。

ダンジョンの地面は魔力を吸収するので魔法陣が無効になる特殊な地質だ。

その地面を掘った、穴の中ではもちろん魔法陣が無効になる。

縦穴を魔法で駆け上るのも難しいと言うことだ。

ロープを上から下げて縦穴を使うことがあるにはあるが救援など緊急で急ぐ場合のみだ。

ずっとロープを設置すればいいじゃんと思うが、使わないという慣しにした方がいいので王国の法で常時ロープを設置することを禁じられている。

これは低ランクのハンターが適当にロープを使って近道し、高ランク魔物に襲われるという事案がたくさん発生したためだそうだ。


「ヒカリ、縦穴には近づかない方がいいよ」

「うん、でも、あそこに私の落とし物が。キミハちゃんなら取れる?」


ヒカリは縦穴を覗き込みながら、そんなことを言う。

私はヒカリに代わり、覗き込む。直径2メートルくらいある縦穴だ。

かなり深そうだ、2、3層というレベルじゃないね。少なくとも10層はショートカットできそうだ。

私は気づく。

穴の切り口がキラキラ光っている。穴を掘るときに切断されたであろう鉱石が輝きをまだ失っていない。


これ、新しい縦穴だ。


鉱石は外気に触れた部分はくすんでくる。1年も経てば、外面の輝きを失う。

この縦穴は国の法で禁止された後に掘られた縦穴ということになる。

国の法で禁止されている縦穴を掘るなんて、犯罪の匂いしかしない。

とりあえず、早く戻って、シャティー先輩に報告だ。ヒカリの落とし物はどれだろう。

縦穴のなく確認するがピンとくるものはない。

私は振り返って、ヒカリにどこに落ちているのか聞こうとした。

瞬間、私はヒカリに、背中を押され、縦穴に突き落とされた。


へっ?


私は思考停止した。


私はヒカリの顔を見ながら穴に落ち、ヒカリのごめんなさいと言う言葉を聞いた。


いつもであれば、突き落とされようとしても、避けるなり、踏みとどまるなり、できただろう。

一緒にいたのがヒカリだったので、そんなこと、頭の片隅にも突き落とされることなんて考えていなかった。


私は穴の側面を転がりながら、加速して落ちる。痛い。

このままでは縦穴のゴールにたどり着いたとき、潰れて死んでしまう。

私は、何とか魔剣を胸ポケットから取り出し、左右上下がどちらかもわからないので、適当に縦穴の壁に突き刺した。

少しのブレーキがかかる。ブレーキを何度か繰り返した。

最終的には魔剣を壁に突き刺し、それにぶらさがる形で静止した。

ダンジョンの床が見える。ショートカット先の階層だろう。

私は、わずかなくぼみに手をかけながらおり、天井から床に飛び降りて、着地した。


何とか生きてたね。


擦り傷を負い、制服もボロボロになって、汚れている。

命の危機を脱し、頭が思考を開始する。


ヒカリ、明らかにおかしかったから、何かに巻き込まれたんだろうね。

私の死を願うような子には見えなかったし。

いや、もちろん、胸の内に秘めていたかも知れないけどさ。

それを言いはじめれば、キリがないよ。


私はとりあえず、周りを見渡す。


何階層だろう?

落ちた縦穴的に、15層から20層くらいだとは思うけど…


落ちた穴のすぐ横に目の端に光る何かを捉える。私は何かと確かめる。

光る丸いたまだ。大きさは私が楽に抱えられる大きさだ。

振ってみる。カタカタ。


何か入ってるっぽい。


私は右手で玉を持ち、左手の魔剣で玉を優しく開く。

すると、食糧が出てきた。


ん?何これ?


食糧を玉から取り出していると、紙がぽろっと出てきた。

私は紙を拾って、目を見開いた。


これ、ヒカリの字だ。


委員長の配るプリントのコピーのやり直しで見た綺麗なヒカリの字。

私はすぐに紙に書かれた文字を読む。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


キミハちゃん


ヒカリです。

まず、はじめに謝ります。

キミハちゃん、ごめんなさい。

この手紙を読んでいるということは私がキミハちゃんにひどいことをした後のことでしょう。

本当にごめんなさい。


私は今、あの貴族に家族を人質にとったと脅されています。

他の人に言えば殺すそうです。

キミハちゃんをこの穴に落として殺すみたいです。

平民にはダンジョンの深い階層なんて抜けられないそうです。


私のキミハちゃんなら大丈夫ですよね。

突き落とした私が言うのはお門違いですが、

生きて!キミハちゃん!私の大好きなキミハちゃん!


私も貴族に呼び出されています。

おそらく、口封じに殺されてしまうでしょう。


家族を守るために友達を、いや親友を売るなんて私は最低です。


本当にごめんなさい。


今まで、ありがとう。


ーーーーーーーーーーーーーーー


泣きながら書いたのだろうか、紙が所々、寄れてしまっている。

私は読み終わる。少し、涙を浮かべる。


ヒカリの馬鹿…相談しなさいよ…謝るのは私だよ…だって、私の命を狙った犯行だよね…絶対助けるよ、ヒカリ…

そして、私が謝る…巻き込んでごめんなさいって…


私はヒカリのお手製の玉を見る。こんな魔法陣聞いたこともない。私は小さな魔法陣を見つける。ライトニングレーザーの魔法陣だ。

おそらく、ヒカリお得意の魔法陣改変でこのヒカリの玉を作って、中に食糧と手紙を詰めたのだろう。

そして、縦穴の中を転がしたってところだろう。縦穴の近くに落ちていたのもうなずける。


ライトニングレーザーもまさか、荷物入れにされるとは思わなかったでしょうね。


さて、どうやって、戻るかだけど、縦穴を魔法で上ることはできない。

そもそも、私が魔法を使えない。


階段を見つけて、登ろうと、探しに駆け出そうとした瞬間、縦穴から、悲鳴が聞こえる。


きゃーーーーーーーーーーーーーー。


聞き覚えのある声。縦穴の天井から銀髪のショートカットの天使が舞い降りた?


ズドーーーン。


天使、墜落。床に激突した。魔法の波動を纏っているので怪我はなさそうだ。


「シオリ先輩、大丈夫ですか?」

「いたたた、って、キミハさん?何で?」

「シオリ先輩も何で、ここに?」


スタッ。今度は華麗に天井から誰かが降りてきた。


「って、ナミク先輩?何で?」

「何で、キミハさんがここに?」


全員の頭に疑問符が飛ぶ。

天使がズドーンと舞い降りました。

次回もダンジョン、続きます!

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