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初めての委員長会議

私は委員会本部が集まる中央塔の5階に向かった。今日は生徒会会議室に集合だ。昨日の会計本部と同じような部屋だけど違う部屋だ。

シャティー先輩が挨拶を始めた。昨日と同じ、自己紹介だ。続いて、シオリ先輩、ナミク先輩と自己紹介をする。ナミク先輩が自己紹介している時は新入生の委員長、数人が顔をしかめっつらにしていた。逆に上級生の委員の顔を見ると支持を得ているようだった。


まあ、ナミク先輩、文の方はわからないけど武の方は確実に強いからね。1年もあれば披露する機会はめぐってくるだろうね。


今日は絡まれることもなく、会議を終了できた。今日の会議によれば委員長の権限っていうのは大まかに3つある。


①学園のルールについて生徒会や学園長に意見できる。

②決闘の見届け人ができる。

③次年度の委員を決定できる。


そのほか、委員長会議の出席とか、必要プリントをクラスに配布とかだ。さっきの3つのルールは一見、そこまで重要じゃないように見えるけど、そうじゃない。1つ目の意見できるルールが行使できなければ、自分のクラスに不利な立案がされたときに対処することが全くできない。2つ目の見届け人ができなければクラスメイトが行う決闘に不利益が発生する可能性がある。3つ目の決定権がなければ、来年度の委員は他クラスで固められ、クラスの自治権を完全に失ってしまう。4年間、クラス替えはないので、一度、奪われると取り戻すのが困難になる。4年間、傀儡クラスになってしまう。委員長のこのブレスレットは学園で生活していく以上、クラスで一番守らなければならない代物なのだ。


まあ、そんな大事なブレスレットを1組は平民の私が携えているんだけどね。ははは。


明日、ホームルームで配布するプリントの原本も配られた。自分でコピーしてクラスに配るそうだ。

私が、会議室から出ようと席から立ち上がろうとした時、シャティー先輩に話しかけてきた。


「キミハさん、魔力ゼロなのですよね。コピー大丈夫ですか?」

「学園内に、供給式のコピー機がないか探そうと思っていたのですが」

「供給式のコピー機、去年まではあったんだけど、上の決定で、廃棄処分されてしまったのよ」

「そうなんですか…」


確かに、この学校は自在に魔法陣を操れる生徒と教師しかいないから使う人がいないだろう。コピー機が処分の道を歩んでも不思議ではない。


「あの、わたくしがやりましょうか?」


シャティー先輩がそんな提案をしてくる。

ありがたい申し出だけど、これからもずっとシャティー先輩に頼るわけにもいかない。


「いえ、これからもコピーする機会はあると思いますので、シャティー先輩に幾度も頼れないです」

「わたくしは何度でも、キミハさんのためだったら」


シャティー先輩は優しい。


「いえ、私にも委員長としてのプライドがあります。私は願って委員長になったわけではありませんが、なったからには全うしたいのです」

「わかりましたわ。でも、困った時は相談しにきてくださいね」

「はい、ありがとうございます」


私はシャティー先輩と笑顔で別れ、コピーする方法を考える。


んーー、これは一枚一枚書くしかないね。


そう結論付けた。幸い、明日、配布のプリントは文字数が少ない。次までに対策を考えよう。では、図書館に行きますか。

図書館は中央塔の6階、7階、8階、9階は図書館になっている。蔵書数は王国一だそうだ。

私が一番興味のある魔法陣学の専門書の棚は6階の入り口に備え付けられた案内板によると9階にあるみたいだ。せっかくなので9階でプリントの写生を行う事にした。


書棚と書棚の間の通路はかなり狭い。人とすれ違うのがやっとだ。少し、探索していると、一人用の机がたくさん置いてある場所にたどり着いた。そこで作業を開始する事にした。


字は綺麗な方だと思う。年少期の頃に幾千の魔法陣を手書きで描いて研究していた私はペンのコントロールが人より洗練されている。

魔法陣は繊細だ。少しの誤差で違う効果になってしまうことも珍しくない。逆にその誤差によって、新しい発見が生まれたりもする。

魔法陣はそれが面白い。


とりあえず、1枚目を書き終えた。


4分ってところだね…50枚書き写すには3時間位かかるね。いま、1時過ぎだから、4時ごろか…さて、がんばりますか。


50枚書き終わる。もう、ペンは握りたくない。一度、席から立ち、伸びをする。指を組んで天井にグゥ〜っと伸びる。気持ちがいい。

私は教室の教壇の中に、プリントを持っていくことにした。明日の授業前のホームルームで配るから、そこに置いとくのが都合がいい。

私はプリントを両手で抱えて、中央塔の階段をせっせと降りる。入学して2日目だけど、この階段を使うのに慣れてきた気がする。

教室の建物に入り、階段を上り、3階にたどり着く。ここで、ほっとしたのも束の間、教室の出入り口付近から視線を感じる。私は立ち止まった。


ん?すっごく見られてる感覚がする。でも、何かされるわけでもないね。


私は歩き始める。次の瞬間、女の子が迫ってきた。


ぶ、ぶつかる。


紙の束のせいでうまく避けられない。そして、ぶつかった。プリントは桜吹雪ならぬプリント吹雪となって、ゆらゆら廊下の地面に舞い落ちた。

女の子も私も廊下に尻餅をつく。私は目を開ける。ぶつかってきたのはワインレッドの貴族の女の子だった。


わざとぶつかってきたように見えたけど、体面的に平民の私が謝るのが筋だろう。この子の名前、実を言うと知らないんだよね。なんか、覚えてる感じもするんだけど、それは気のせいだろう。仕方ないので、声だけかけることにした。


「ごめんなさい。ぶつかってしまって。大丈夫ですか?」

「ええ、キミハさん、こちらこそ、ごめんなさい」


女の子は私が差し出した手を持って優雅に立ち上がる。踏んでるよ〜。プリント、踏んでるよ〜。これは書き直しだね。

その時、ちょうど、通りかかったのか、ヒカリがよってくる。私がプリントを拾っているのを手伝ってくれるみたいだ。優しい子だよ。ヒカリは1枚、2枚拾い上げたところで驚きの声を上げる。


「えぇっ、キミハちゃん、これ全部、手書き!」

「コピーは委員長の仕事なんだよ。私、魔力ゼロだから致し方なくだよ」

「手書きですって」


ワインレッド長い髪の貴族の女の子は思わず、地面のプリントを拾い上げて確認している。


「これ、あなた、どれだけの時間がかかったのですか」

「3時間くらいです」


女の子は少し、申し訳なさそうな顔を見せた。素直なのかな?


「プリントは書き直せばすみますし、お怪我がなくて安心しました」


私は笑顔で対応する。私も心を隠すのがうまくなってきていると思う。実際は何してくれるんですかっっっまた書き直しですよっっって気分だよ。私は本当に心が狭い。


「本当にごめんなさい」


女の子は急ぎ足で行ってしまった。

何があって、私にぶつかってきたのかはよくわからない。明らかに身体強化の魔法陣で突進してきたように見えた。

いろいろ思考するには情報が少なすぎる。そもそも名前が分からない。

クラスの自己紹介してる時間、私は学園長と筋肉の塊と話をしていた。


「キミハちゃん、言ってくれれば、私がコピーの魔法陣でコピーしたのに」

「委員長の仕事は委員長の私がするべきでしょ。そんなことお願いできないよ」

「私がキミハちゃんに委員の仕事、押し付けちゃったんだから、私もやらないとダメだもん」

「私が喜んで委員になったって話したでしょ。ヒカリは気にしなくていいの」

「そんなことないもん。じゃあ、せめて、このプリントのコピーのやり直しは手伝わせてよ。仕事のやり直しは委員長の仕事ではないでしょ」

「仕事を完遂すること自体が委員長の仕事なんだから、やり直しも仕事の範疇だよ」

「キミハちゃんの分からずや」

「私も委員長としてしっかり仕事したいの」

「私はキミハちゃんが辛い思いをするのが嫌なの。今だって、どう見てもキミハちゃんに非なんて全くなかったもん」


ヒカリはそこも見ていたんだね。


「辛い思いはしてない」

「いいから、手伝うの」


私の言葉を切ってヒカリは私に訴える。頑固バージョンのヒカリは何を言っても聞かないのは昨日今日でよくわかっている。

私とヒカリは互いに顔を合わせ、互いにむぅと威嚇する。しばらく、そのまま、威嚇し合う。私は1つため息を吐く。私は両手をあげ降参することにする。


「降参です。ヒカリさん。私のコピーを手伝っていただけないでしょうか」

「もちろん!キミハちゃんのためだもん」


ヒカリは頼ってもらえたのが嬉しいのか満面の笑みになった。

私たちはクラスルームに入る。私は流石に全てをコピーしてもらうわけにはいかず、半分をヒカリに魔法でコピーしてもらった。

結局、もう半分の私が手書きでコピーすると言った分も手伝うと言い、ヒカリは手書きコピーを始めた。

ヒカリの字は整っていた。絵とか書道とか得意なのかな。


「ヒカリ、字がすごくうまいのね」

「キミハちゃんもすごく綺麗だよ」

「うん、ありがと。ヒカリは絵とか書道とか何か得意なものでもあるの?」

「私、実は絵師なんだ。だから、字は得意なの」


ヒカリは絵が得意とかそんなレベルじゃなかった。絵のプロだったよ。子供の頃から、プロで働く子供は数は少なくても珍しいわけではない。特に平民の子は小さい頃から仕事を仕込まれたりと、年少の頃からお仕事スキルがかなり高いのだ。


「そっか」

「ねぇねぇ、キミハちゃん!学校も落ち着いたらキミハちゃんの絵を描いてもいいかな?」

「え、私?私みたいな可愛くもない子を描くんじゃんくて、シャティー先輩みたいに可愛い人を被写体にしたほうがいいでしょ」

「もう、キミハちゃん、可愛いもん。キミハちゃんみたいに私もなりたいもん」

「お世辞がうまいのね、ヒカリ」

「お世辞じゃないもん」


また、むぅとほっぺを膨らませる。うん、可愛い。

そんなことを話しているうちに写生は終了した。


「ありがと、ヒカリ。助かったよ」

「うん。いつでも、お手伝い言ってね」

「私、一度、これから、街に出ようと思うんだけど、ヒカリはどうする?」

「あとちょっと探検したら、学園全制覇だから、もう少し探検するよ。今日の晩ご飯は私の番だから、お腹空かしてきてね」

「うん。了解。じゃあ、また、寮で」

「うん」


ヒカリと私は一旦、お別れした。今から、私はアルバイト先に挨拶に行く。今の時間は午後5時半。コピーに時間がかかってしまったから、店に出向く6時にギリギリだ。学園の門から徒歩5分なので、近くではあるんだけどね。

キミハは謎のタックルを受けました...

次回は、アルバイト先に向かいます!

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