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初めての寮での夜ご飯

私は寮に向かった。

この学園には寮がいくつかある。

簡単に言えば、貴族用、平民用に分かれ、さらに、女子用、男子用と分かれている。

男子が女子寮に侵入してはダメなどの明確なルールは設定されていない。

けど、そんなことをした貴族は顰蹙ひんしゅくを買うこと、必至だと思う。

一応、学園の生徒証を持たない者以外は入られない結界が張られているらしい。

生徒が賊だったら防げないし、ただのザルな結界だけどね

まあ、自分の身は自分で守れってことだね。

ちなみに、平民用の女子寮は学園の中央から15分くらい歩いた森の中にある。

学園内なのに遠いよね。


そんなことを考えているうちに寮にたどり着いた。

この寮は2階立てで8部屋ある。

人数が多ければ相部屋になるらしいけど、私は一人部屋と聞いている。

新入生の平民も私とヒカリだけだし、全校生徒でも少ないことは間違いないだろう。

私は寮の大きめのドアを開ける。

入ると、いくつかのテーブルと椅子があった。

寮の生徒で一緒にご飯を食べたり、歓談したりできるエントランスのようだ。

寮内は静かで人気を感じないが、綺麗に掃除されていた。


私の部屋番号は202。

私は階段をのぼる。

階段は寮を入って、壁際についていて、上ると、左側の手前から201から204、右側の手前から205から208の部屋が並んでいる。


自分の部屋に入ろうと202に向かおうとした時、201の部屋からバタンと人の倒れる音が聞こえた。


ん?誰かいるのかな?


立ち止まり、扉の前で、部屋の中の様子を伺う。


音はしない...?


この寮は結界こそあれど、部屋の入り口には鍵がかかってないので、中に入ろうと思えば簡単に入れる。

誰かの部屋かも分からないのに突撃しにくい。とりあえず、ノックをしてみる。


コンコンッ。


返事はない。


中で、気を失ったりしていないかな?


仕方がないので、踏み込むことにした。

ドアをゆっくり開けながら、覗き込むように声を掛ける。


「失礼しま〜す」


中には見覚えのある女の子が倒れていた。


「って、ヒカリ!!」


私は、すぐに駆け寄って、地面に屈んで、ヒカリの上半身を抱える。


「ヒカリ!!ヒカリ!!」


ヒカリは目を開けた。


「キ…キミハちゃん…?」

「どうしたのっっっ?」

「お…」

「お…?」

「お腹すいた…バタリ」


その瞬間、ヒカリのお腹がグーっと鳴った。


お腹が空いているだけか…心臓に悪いよ。


「ちょっと、待っててね」


私は、床に倒れていたヒカリを持ち上げて、その部屋のベッドに寝かせてあげる。

急いで、202に運ばれていた自分の部屋の荷物の荷ほどきをして、食品を探す。

ゴホゴホ、部屋の掃除はしていないので、すごく埃っぽい。


寝る前に軽く掃除するところまでしないと。もう7時もまわって、外も暗いけど。


荷物は運び屋の人に運んでもらっていた。

荷物といっても3つほどなので、探すのは簡単だ。


あっ、あった。冷蔵の包み。


学校が始まってすぐは忙しいとセバスチャンに聞いていたので、買い出しに行かなくてもご飯が作れるように食品も荷物として準備していた。

冷蔵の包みは、いわばクール便だ。冷蔵庫の簡易版の箱に荷物を入れているので、生物なども持ち運びできる。

魔力を使って、起動するので、その分、普通の包みよりもコストはかかってしまうのだが。

継続的に魔力を込めるなら、そのまま半永久的に冷蔵庫としても利用できる。


メニューだけど、どうしようかな。

限界の空腹ならヒカリの胃に優しいものがいいかな。


もういいや、私の食べたいもので!


さっき、デブを見たせいで、無性に粉物料理が食べたくなった。

それも、お好み焼きを。

そう言えば、私もお昼ご飯を食べ逃していたね。

シャティー先輩のところでご馳走になっていなかったら、私も今頃、行き倒れていたかもしれない。

私は、キャベツや豚肉、卵、小麦粉を取り出して、部屋を出て、階段を下りて、一階の共同キッチンを目指す。

フライパンなどの調理器具は一通り揃っている。

どれも最近、洗ったかのように綺麗だ。

ありがたく使わせてもらう。


調味料はないから、取りに戻らないといけないね。

えっと。ガスは供給式だね。うん、安心して使える。


ガスには魔力式と供給式の二種類が存在する。

その名の通り、魔力式は使うときに魔力を込めて、ガスに変換して使う。

対して、供給式は魔力線を伝って、魔力が供給されて、その魔力を利用してガスに変換して使う。

長所短所はそれぞれで、料金ゼロでコンロも持ち運びで使いやすいのが魔力式、有料だが魔力を使わなくて、基本的に備え付けで使うのが供給式だ。

魔力は魔力省という国の機関が一括で管理している。


寮では魔力の料金は学費に含まれているのかな?後で確認が必要だね。

とりあえず、今日は節約して使おう。

でも、学費に含まれてなかったら、無駄遣いしようって訳じゃないよ。


私はキャベツを刻み、粉を準備した。

フライパンに熱を入れ、水と粉とキャベツと卵を合わせて、ざっくり混ぜる。

フライパンがあたたまったのを確認して、油をひく。

そして、生地をのせる。円形に広がす。

フライパンにギリギリサイズだ。

薄切りされた豚肉を生地の上にのせる。

ここで、フライ返しが共同キッチンにないことを気づく。

フライ返しだけでなく、細かい調理器具は揃っていないみたいだった。


鍋とかフライパンがあったから、揃っていると思ってしまったよ。

卒業まで4年間、過ごすわけだから、後で、買い足さないとね。


このままではお好み焼きが焦げてしまう。そこで私は2つの案を考える。


①ホットケーキのようにフライパンを振って裏返す方法。

②お皿を裏返して生地にのせて、お皿を押さえながら今度はフライパンを裏返して、一度、お皿にのせて、お皿からスライドさせてフライパンに戻す方法。


安全策は②かな。

お好み焼きで①を失敗したら、ホットケーキの比にならないよね。

掃除が大変なことになる。

私はお皿を使った方法でひっくり返す。

蓋をして、少し待つ。

この間に冷蔵の包みから調味料をとりに行く。

流石にかつおぶしとか青のりとかは荷造りしなかったな。


無事、部屋でソースとマヨネーズを見つけた私はまた、キッチンに戻る。

ついでにヒカリの様子を見る。少し、体調を取り戻したようだったので、一階に来てもらった。

すぐにキッチンに戻る。少し焦げ臭い。

蓋を外して、今度はホットケーキのようにフライパンで裏返す。

焼けていれば飛散することもないと思ったからだ。


うん、ちょっと、焼きすぎたね。


サッと、フライパンから、お皿に移す。

ソースとマヨネーズをトッピングする。

私は後ろをついてきていたヒカリに席に座ってもらい、お好み焼きを前に置いてあげた。


「口に合うか分からないけど、お好み焼きを作ったから食べてくれるかな?」

「お好み焼き?初めて見た!食べていいの?」

「カンサイ地方の郷土料理だよ。食べてみて」

「いただきます!」


ヒカリはナイフでカットして、フォークで食べる。大きくカットしすぎて、口の周りにソースがついている。


うん、ヒカリは1つ1つの仕草がかわいいね。甘やかしたくなるよ。


「美味しいっっっ!」

「よかった」


少し焦げてはいたが、味にそこまで問題はなかったようだ。

私は、キッチンに戻る。自分の分も作らないといけない。

パパッと焼いて、ヒカリの方に戻った。

ヒカリのお好み焼きは残り4分の1くらいになっていた。

好評で何よりだ。

私は席について、お好み焼きのお皿を自分の前においた。


「ヒカリ、大丈夫?さっき、お腹すいたって倒れていたから」

「びっくりさせちゃったよね、ごめんなさい」

「まあ、びっくりはしたけど、謝ることではないよ」

「この寮に来たら、寮中ホコリだらけだったの、それで、無我夢中でお掃除していたら、気付いたら空腹でバタリと」

「寮が綺麗だったのはヒカリのおかげだったんだね。ありがと」

「うんん、キミハちゃんは晩ご飯ありがとう」


ヒカリは長い金髪のツインテールを揺らしながら天使の微笑みをする。


「他のこの寮の生徒はいないの?」

「うん。この寮に来たとき、門の鍵が閉まっていて、入れなかったの。それでキヨルデ先生に聞きに行ったの。そしたら、先生がこの寮の在籍生徒を調べてくれたの。私とキミハちゃんだけだったみたい」

「そうなんだ。鍵までとりに行ってくれていたんだ。ありがと」

「うんん、キミハちゃんは会計委員のお仕事していたんだし、これくらいは。会計委員はどうだったの?」


私はデブと戦ったことやシャティー先輩とお茶に誘われたことを話した。

ヒカリは顔がこわばっている。

自分が会計委員になってしまっていたときのことを思い浮かべているのかもしれない。


「ヒカリはそんなこと考えないでいいんだよ。ハハハくらいで笑って聞いてよ」

「キミハちゃん、そんな簡単に考えれないよ。それにしてもキミハちゃん、強すぎだよ。貴族のそれも上流貴族の子に決闘で勝ってしまうなんて」

「まあ、たまたまだよ。相手のミスでファイアボールが相手の方に引き返して行ったんだから。私はその玉に隠れて、ブローチを斬っただけだから」


魔法陣改変の部分は相手のミスでとちょっと嘘をついて伝えておいた。

一応、私の隠し球だからね。

その後、私たちは、会計委員会で伝えられた話を話し、お風呂に一緒に入ろうという話になった。


「キミハちゃんは魔力、どれくらい使えるの?」

「私、魔力ゼロだから、魔法陣はおろか、生活器具に魔力を込めるのもできないの」


これも嘘です。

込めるくらいならできると思う。

込めることができたら、初級魔法陣も使えない理由が説明できなくなるので使えないフリをする。


「うん、お風呂のお湯も供給式だね。今日はささっと沸かしたいから、魔法陣でお湯を作るね。サルトコルモラデーテ!」


ヒカリは魔法陣で空気中の水蒸気を水に変換する魔法を使った。

手を湯船に向けて手のひらから、水が変換されて出てくる。

あらかた、ためると手をグーにして、水を止める。

そして、今度は魔剣を抜いて魔法陣でファイアボールを作って、湯船に投げつけた。

ヒカリのファイアボールは片手で持てそうな大きさだ。

うん、というか普通それくらいだ。

あのデブのファイアボールが異常なだけだ。

そして、デブは豊富な魔力にかまけて、訓練を怠ったのだろう。

私は湯船の温度をみる。ちょうど良い温度になったところでヒカリに合図を送ると。

ヒカリは振り上げていた魔剣を振り下ろすとファイアボールは消える。

ちなみにヒカリの魔剣はロングソードの長さはある。

ヒカリは平民ながらも貴族級の魔力を持ち合わせていることは一目瞭然だ。


狭い脱衣所で私たちは服を脱ぐ。


むむむ!


私とは比べられないほどの山が2つそこにはそびえ立っていた。

身長は私の方が大きいのだけれど。

先に、体を洗う。親睦を深めるため、背中は洗いっこした。

そして湯船に二人で浸かった。


今日は一日で田舎に住んでいた時よりも数倍、濃い一日だったよ。

明日からも疲れが残らないようにしないと。

なんか、私、考えることがおじさん臭いかな…


のんびり浸かっていると、目がチラチラと山を捉える。私は自分の平野を確認する。


むぅ、私もこれからだもん。


仕方がないので、ヒカリの山を堪能することにした。

私は隣で湯船に浸かるヒカリの山に飛びついた。


「きゃっ、キミハちゃん!」

「ふふふ、ヒカリ、いいものを持ってるわね。私に寄越しなさい」


少し悪い男の人のような声を出して、私はヒカリの山を少し揉んでみた。


「きゃーーーー、キミハちゃん、やめてぇぇ」


少し、涙を浮かべるヒカリ。


ん?少しやりすぎた?

いいえ、これは持っているものの定めよ、ヒカリ。

受け入れなさい。


もう一度、手に力を入れると、ヒカリは顔を赤らめさせて、完全に泣いている。


流石にやりすぎたかな?


私は山から手を離す。ヒカリは手で自分の山を守っている。


「ご、ごめんって」

「キミハちゃんのばかぁぁぁ」


この後、私は、ご機嫌をとるためにドライヤーで髪を乾かしてあげたり...

お風呂上がりのお水を用意してあげたりするが...


プイっとそっぽをむかれてしまう。


ううう、罪が重いよ。


でもふんって、そっぽを向いているんだけど、そこも可愛いのがこの女の子。

将来、この子は知らず知らずのうちに男を惑わせるよ、絶対。


私はヒカリにそっぽをむかれたままであるが、一通りの就寝準備が整ったのでそれぞれの部屋に入った。

部屋に入り、絶望する。

この部屋は掃除していなかった。

仕方なく、今日はエントランスで寝るかと、サッと、パジャマに着替え、一階に引き返すと、ちょうど、201の扉が開く。


「キミハちゃん、お部屋、お掃除、まだだよね」

「うん、だから、エントランスの椅子で寝ようかなって」

「それじゃ、疲れが取れないよ。私の部屋で一緒に寝ない?」

「それは助かるけど…」

「もう。怒ってないよぉ。でも、お手柔らかにお願いします」


そんな言葉をヒカリは顔を赤らめて言う。

私は思わず、ヒカリを抱きしめる。


「ありがとうぅぅぅ」

「いきなり!!キミハちゃん!!」


もう、少しだけだよと言って、抱きつきの許可をくれた。

これは耐性がついたのか、我慢しているのかは分からないけど。


うん、ごめんね、ヒカリ。

私のおじさんの心が目覚めてしまったよ。


私とヒカリは寮に備え付けられているベッドに二人で寝転がり、少しのお話をして、すぐに眠ってしまった。

次回も寮でのお話です!

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