83.ぼっち少女のオーク迷宮攻略1
5月3日、水曜日。
今日は、オーク迷宮に行くことにした。
元の世界では、今日は休日だったけど、この世界では普通の平日だ。
というか、この世界、曜日は存在しているし、日曜日は休日なのは元の世界と同じだけど、祝日は見たことがない。たまたま4月と5月にはないだけという可能性もあるけど、あとで誰かに聞いてみよう。
いつものようにギルドに寄って依頼がないのを確認してから、「飛翔」&「隠形」でオーク迷宮にやって来た。
中に入ると、「夜目」を使って視界を確保する。
通路を進み始める前に、「地図」で進む道を確かめると、少し困ったことがわかった。
いつもなら、「地図」には敵のアイコンしかないけど、今日は人のアイコンがあったのだ。
おそらく冒険者だろう。
まあ、迷宮だし、他の冒険者がいることもある。むしろ、今まで遭遇しなかったことの方が奇跡だ。
運が良かったんだろうなあ。ステータスの【運】の数値、補正も入れると結構高いし。
今日は、たまたま運が悪かったんだろう。
冒険者が最短ルート上にいたため、私は仕方なく、冒険者に会わないよう、迂回して進むことにした。
少し時間がかかるけど、冒険者に会うよりはマシだ。
ノーマルオークは、今まで何度も戦ってきたため楽勝だった。
そこで、私は少し実験をすることにした。
杖のことだ。
この間、マンドラゴラ迷宮で手に入った杖。
総合評価Fの低級装備だけど、多少は補正がある。
補正値は微々たるものだし、単純なステータス補正だから、今回は置いておく。
今回の実験のメインは、杖を介して魔法を使うとどうなるのかということだ。
いつもどおりのと、杖を使った場合とで、違いがあるのかを実験する。
杖の性能が低いから、目に見える違いはないかもしれないけど、念の為だ。
私は、「無限収納」から杖を取り出して右手に持つと、近くにいたノーマルオークCに向けて魔法を放った。
今回は、見た目の変化を見るために、いつもの「氷槍」ではなく、「火嵐」を使った。
ノーマルオークCは、一瞬で炎に包まれ、焼かれていった。辺りには、豚肉の焼けるいい匂いがする。
豚の丸焼きならぬ、オークの丸焼き。
見た目はともかく、匂いだけなら美味しそうと思ってしまった。まあ、解体ができないから、自分で狩ったものは食べれないんだけどね。
「火嵐」は、すっかり黒焦げになってもノーマルオークCを焼き続けた。そして、灰になるまで焼くと、炎は消えた。
かかった時間は68秒だった。
私は杖を一旦仕舞うと少し移動して、見つけたノーマルオークCに「火嵐」を放った。今度は杖を使わずに。
ノーマルオークCは、さっきと同じように灰になった。
かかった時間は70秒。杖を使ったときの方が2秒早い。
でも、2秒の差なんて誤差のようなもの。たった一回ずつの実験で、結論を出すのは早い。
その後、階段に辿り着くまで、私は杖を使うのと使わないのを交互に繰り返した。
結果、杖を使ったほうが、1、2秒ほど灰になるまでの時間が早かった。
魔法を使うときの感覚は、特に変わらなかったし、これくらいの差なら、杖にこだわる必要もないだろう。
ずっと持っているのも邪魔だし、そもそも、普段は一撃で倒しているので時間は関係ないのだ。
私は、冒険者がまだ第1層にいることを確認すると、杖を仕舞って階段を降りていった。
第2層は、草原地帯で、オークソードマンとオークウォーリアーがいた。
オーク迷宮の構造は、ゴブリン迷宮と同じようだ。
……ということは、ボスはオークキングかオークエンペラーか。オークキングは一度倒したことがあるから大丈夫だけど、オークエンペラーはどうだろう?
ゴブリンエンペラーの時みたいに死にかけたりしないといいな。また痛い思いをするのは嫌だもの。
冒険者がこの層にはいないことを確認すると、いつものように、「飛翔」で空から「凍結」で凍らせて倒し、「凍結解除」で解凍してから「無限収納」に仕舞うという方法で、どんどんオークを倒していった。
その後、第4層まで同じように進み、第5層に来た。
第5層は、ゴブリン迷宮と同じく、城と森があった。
森にいるオークは「凍結」で倒し、城の方は、城壁の外から最大威力の「爆発」で、建物ごと殲滅した。
念の為、「爆発」と一緒に「防御結界」も使っておいた。思い切り魔力を込めて、「爆発」を使ったから、私も巻き添えになるかもと心配になったのだ。
備えあれば憂いなし。
結果は、まさにことわざの通りで、爆発そのものではなく、その余波の方が私を直撃した。結界がなければ吹き飛ばされていたかもしれない。
自分の魔法にやられるなんて、いくらなんでも間抜けすぎるでしょう。
結界を張っていて本当に良かったと思った。
敵は一撃だったけど、城ごと壊してしまったため、階段まで行くのが大変だった。
階段への通路まで破壊してしまったのだ。
結局、通路を探して、瓦礫を退けて通れるようにするのに、かなりの時間がかかってしまった。
はあ…………。
城ごと壊せば一体ずつ倒すよりも楽だと思った自分を責めたい。
今度は、倒したあとのこともちゃんと考えるようにしよう。
猛反省した私だった。




