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77.ぼっち少女の礼拝1


 月曜日の昼間にも関わらず、市場は人で溢れかえっていた。

 昨日のマンドラゴラ迷宮の行列よりも人がいるかもしれない。

 というか、こんな時間にこんなに人がいるって、みんな仕事はいいのかな?

 市場の周りには、出店ではなく、ちゃんとした店舗の店も並んでいるし、飛んだときに見た限りでは、街の中に畑とかもあった。

 そうすれば、当然、そこで働く人もいるはずだ。

 まあ、全員が働いているわけではないとしても、この人数は明らかにおかしい。

 私のような外の人や、冒険者がいるとしても、ちょっと多すぎる気がする。

 なんでだろう?

 人混みを前にして、しばし考えていたけど、今の私では答えは出ないと諦めて、市場に入っていった。




 市場には、食べ物やアクセサリーをはじめ、雑貨、本、服など、様々な物が売っていた。

 お祭りのときの屋台のような店から、地面に敷物を引いてその上に商品を並べて売っている店など、いろいろな店があった。

 提灯やお面、金魚すくい、射的ゲームなんかもあって、結構カオスな状態だった。

 日本のお祭りと、フリーマーケットを混ぜ合わせたような感じだ。

 でも、見ているだけでも面白いので、私は人混みをうまく掻き分けながら、店を見ていった。




 しばらく見て回った私は、机と椅子が並んでいる飲食スペースに辿り着いた。

 ちょうどお昼にしようと思っていたところだったので、空いている椅子に座り、市場で買った食べ物を食べる。

 ちなみに、市場では食べ物の他に、本を買った。安売りをしていた本を内容を問わずまとめ買いしたのだ。

 絵本、物語、学術書、雑学書など、多種多様な本を20冊ほど買った。

 暇なときにでも読んで、この世界の知識を増やそうと思う。

 それに、もともと本は好きだったし、いろんな本を読めるのは嬉しい。

 食べ終わって、もう少し見て回ったら、宿に戻って読もうかな。

 そんなことを考えていた時だった。


「あれ?トモリさん?」


 名前を呼ばれた。

 声がした方を見ると、アドリアナとアレナリアが立っていた。

 ふたりともフードで顔を隠していて、一瞬誰かわからなかったけど、アレナリアが私にだけ見えるようにフードを軽く捲くってくれたから、わかった。

 アドリアナは何もしなかったけど、アレナリアと一緒にいるならそうだろうなと思った。

 前にアレナリアが、外に出るときはアドリアナと一緒だって言ってたから。

 私が軽く会釈をすると、アレナリアが近づいてきた。


「こんにちは。ここ、座ってもいいですか?」


 私が頷くと、アレナリアは向かいの席に座った。

 四人掛けのテーブルだったので、まだ席は空いている。

 アドリアナは、私の右手側の席に無言で座った。

 その時、チラッと見えたフードの下が、嫌がっているように見えた。

 アドリアナが座ったら、また見えなくなったので、本当に一瞬だったけど、気のせいじゃない、よね?

 確かめようにも、こんな場所でフードを取ってほしいなんて言えない。この間のようなことはごめんだし。

 仕方なく、私は、追求を諦めて、食事に戻った。




 食事をしながら、アレナリアと話をする。もちろん、アドリアナも、会話に混ざってきた。

 話と言っても、私は首を振ることしかできないけど、それでも良いらしく、話は続けられた。


「トモリさんは、市場で観光ですか?」


 アレナリアの問いに頷くと、すかさずアドリアナが言う。


「特に今日は月初めですから、いつもより出店が多いのです。観光するにはとても良い日ですわ。それで、何か良いものはございましたか?」


 月初めで店が多いのか。あ、だから人が多いのかな?

 アドリアナの言葉で、人が多いのに納得がいった。

 アドリアナに頷いて答えると、またアドリアナが言った。


「そうですか。それは良かったですわ!」


 その言い方が少しわざとらしく聞こえたのは、きっと、さっきの表情を気にしてるからだと思う。あ、あと、一昨日のもあるのかな?

 気になったけど、食べ物で両手が塞がっているので、字を書くこともできず、私はただ適当に首を振って話をしていた。

 最初はアドリアナとアレナリアは同じくらい話していたけど、だんだんアドリアナが話すほうが多くなって、最後の方はアレナリアは相づちを打つだけになっていた。

 10分ほどして、私が食事を終えて片付けをしていると、アドリアナか聞いてきた。


「もしよろしければ、このあとご一緒しませんか?」


 どこに?

 私は首を傾げた。


「私たち、これから月初めの礼拝に行くのです。トモリさんも、ご一緒にいかがですか?」


 礼拝……。私、宗教は、ちょっとなぁ。

 フィルリアの街でも、アニタさんに入信しないかって言われたけど、断ったんだよね。

 その気持ちは今も変わってない。

 だから、礼拝に誘われても困る。

 私が断ろうとしたとき、アドリアナが席を立って、私の手を引いて歩き出した。


「さあ、行きましょう!私がいれば、礼拝の列に並ばずに済みますわ」


 ぐいぐい手を引かれる。

 アドリアナの手を振り解こうとしたけど、意外と強い力で握られていて、難しそうだった。

 頑張ればできなくもなさそうだけど、後ろにはアレナリアもいて、逃れるのは無理そうだった。

 こんな街中で力を使うわけにはいかないし。

 私は仕方なく、ふたりと教会に行くことにした。


 はあ……。どこかで抜け出せるかなぁ?



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 何故ともりちゃんが喋れないのか? そのあたりのエピソードが欲しいです。 身体的欠陥なのか、精神的疾患なのか?
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