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75.ぼっち少女のマンドラゴラ迷宮攻略2


 迷宮の中は、外見と同じく、洞窟になっていた。

 人が2、3人並んで通れるくらいの幅の通路と、半径50メートルくらいの開けた場所が交互にあった。

 開けた場所に出れば、冒険者たちを追い抜かして行くこともできそうだ。

 マンドラゴラは、通路の端や、開けた場所に生えていて、抜くたびに耳栓越しでも不快な悲鳴がかすかに聞こえてくる。

 冒険者たちは、耳栓で互いの声が聞こえないからか、ジェスチャーを使ってコミュニケーションを取っていた。

 もっとも、ジェスチャーを使って悠長にコミュニケーションを取れるのは、マンドラゴラが自発的に攻撃してこない、安全な魔物だからだと思う。

 だって、普通に考えて、戦闘中にジェスチャーだけで十分な意思疎通はできないでしょ。熟練したパーティーならともかく、危険度の低いマンドラゴラ迷宮に来るような、低ランクの冒険者パーティーには無理だと思う。

 私は、他の冒険者たちの緩い空気に、怒りとも呆れともつかないモヤモヤした感情を抱きながら、迷宮を進んでいった。

 

 迷宮を進んでいると、とある問題が出てきた。

 マンドラゴラが生えている地面はふかふかの土で、歩くたびに靴の中に砂が入ってきて気持ち悪いのだ。

 おまけに、足跡が残ってしまうので、「隠形ハイドフォーム」がバレてしまうおそれがある。

 入り口付近はマンドラゴラ自体が少なかったから、土じゃなくて岩(石?)の地面も多く、そこを歩いていれば良かった。でも、奥に行くほど土の部分は多くなり、とうとう避けては通れなくなってしまったのだ。

 こうなったら、もう仕方ない。

 狭いところで使うのは嫌だけど、私は「飛翔フライ」を使うことにした。

 前よりも精密なコントロールができるようになったし、ゆっくり飛べば大丈夫なはず。

 私は、歩くような速さで、ゆっくりと飛んで行った。




 時々、周りの冒険者たちの目を盗んでマンドラゴラを取った。

 マンドラゴラは、地面に出ている葉の部分を掴んで引っこ抜き、根っこが出てきて悲鳴を上げたら、ナイフとかで口のところを刺すと、倒せるらしい。

 私は、ナイフは持っていなかったし、悲鳴が上がってからだと他の冒険者に気付かれるかもしれなかったから、引き抜くのと同時に魔法で凍らせた。

 ちなみに、この方法でも、何の問題もなく倒せた。

 悲鳴を上げる前に倒せれば、耳栓とか要らないし、手っ取り早くていいよね。なんで他の人たちはやらないんだろう?

 他の冒険者は、全員がナイフで倒していた。そのことに疑問を抱きながら、私はさらに迷宮を進んでいった。




 マンドラゴラ迷宮は、ホーンラビット迷宮と同じで、第1層にマンドラゴラA、第2層にマンドラゴラB、第3層にマンドラゴラCがいて、第4層はコア水晶があるだけの構造らしい。

 ……()()()っていったのは、人が多すぎて、第4層に辿り着けないからだ。

 入り口でも、たくさんの冒険者が列を成していたけど、ここは狭い分、多く感じる。本当はきっと、入り口のよりも少ないと思うんだけど、密集が違うから、多く見える。

 こんなに密集していると、各自が持っている松明の火でヤバいことになるかもと心配していたんだけど、そこは、ギルドもよくわかっていたらしい。

 光属性の魔法が使える者が、光の魔法で洞窟内を照らしていた。

 このおかげで、冒険者たちは松明の火を消して、安全に列に並ぶことができているのだった。

 まさか、迷宮ひとつのためにここまでやるとは。ギルドもすごいなぁ。

 洞窟内の狭さと、人の多さから、コア水晶まで辿り着くのは不可能だと判断した私は、一度帰ることにした。

 次は転移で直接ここまで来れるし、空いてる時間を聞いてから来よう。

 私は列から離れると、そのままギルドの近くの路地裏に転移した。




 耳栓を外して「無限収納インベントリ」に仕舞うと、ギルドに入り、受付に向かった。

 私がまっすぐ受付に歩いて行くと、窓口にいた受付嬢が声を掛けてきた。


「おはようございます。今日は、どんなご用でしょうか?」

「…………」


 しまった!何も用意してなかった!

 受付嬢が対応してから、用件を書いていなかったことに気が付いた。

 私は急いでポケットから紙とペンを出し、用件を書いた。……受付嬢が変な目で私を見ていたような気がするけど、気にしない。きっと気のせいよ。直接確認したわけじゃないんだから、気のせい、気のせい。そう思っておけばいいのよ。

 気まずい空気を見て見ぬフリというか、気付かないフリをして、私は受付嬢に紙を見せた。


「えーと、マンドラゴラ迷宮の空いてる時間、ですか?そうですねぇ。今日でしたら、真夜中過ぎから明け方にかけてが比較的空いていますよ」


 若干引きつった笑顔をしながらも、受付嬢は丁寧に教えてくれた。

 私は、その表情を見なかったことにして、お礼をすると、ギルドを出た。




 その後、夜まで適当に時間を潰し、深夜12時過ぎ。

 私はもう一度マンドラゴラ迷宮に来た。

 迷宮の入り口に列はなく、昼間とは打って変わって静かだった。

 空いてるっていうか、人いないじゃん。ガラッガラじゃん。

 空いてるといっても、それなりに人はいるんだろうと覚悟して来たのに、拍子抜けだ。

 まあ、いないほうが都合がいいのは確かだけど。

 私は念の為もう一度マンドラゴラ迷宮を進み、第4層のコア水晶まで誰にも会わずに辿り着いた。

 一度出たらやり直しとかありそうだからね。人がいないうちに確実にクリアしておきたい。だから、もう一度最初から迷宮を進んだ。


 そして、コア水晶に手を触れ、特典をもらったのだった。





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