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69.ぼっち少女とレア魔石1


 アレナリアに続いてギルドを出ると、いきなりアレナリアに手を引かれて道の端に連れて行かれた。

 引く力は、そんなに強くなかったから振り解くこともできたんだけど、特にする必要もないのでおとなしく引っ張られていった。無用な争いは起こさないほうがいい。

 通行の邪魔にならない場所で止まると、アレナリアはギリキリ聞こえるくらいの小さな声で話しかけてきた。


「えっと……。あの、この後、少しお時間いただいてもいいですか?……その、相談というか、トモリさんにお話したいことが、ありまして……」


 ソワソワして落ち着きない様子で言う。

 視線から、周りを気にしているというのはわかるから、そのせいかな?昨日はアドリアナと一緒に街の人に囲まれてたし、有名人なら人目を気にしてもおかしくないよね。

 私はアレナリアの不審な挙動の理由を、そう結論付けて納得した。

 そうれから、ポケットから(出したように見せかけて、実際は「無限収納インベントリ」から)折りたたんだ紙とペンを出し、返事を書いて、見せた。


「えっと、『素材を売ってからでいいなら』ですか?それくらいなら構いませんよ。その、私、今日は時間あるので!」


 昨日と印象が違うアレナリアに違和感を覚えながらも、私はアレナリアと一緒に素材買取所に向かうことにした。




 昼過ぎという時間のせいか、人は少なく、特に並ばずに対応してもらえた。

 カウンターに行くと、予め売却用に袋に分けておいたガーゴイルの魔石を出した。

 まずは、様子見でロックガーゴイルの魔石20個。反応が良ければ、他のガーゴイルの魔石も出すつもりだけど、事前に聞いた話だとガーゴイルの魔石は質が変わりやすくて、ほとんど高値はつかないみたいだから、あまり期待しないでおこう。

 対応してくれている白髪に片眼鏡といういかにも鑑定士といった風体の買取担当者は、私が置いたガーゴイルの魔石をしばらくじーっと見つめた後、恐る恐るというふうに聞いてきた。


「失礼ですが、この魔石は何の魔石でしょうか?」


 私は、予め用意しておいた魔物の名前を書いた紙を取り出して、見せた。

 それを見た買取担当者は、再度訝しげに魔石を見つめた。そして、唐突に何かを決心したような顔をして、大急ぎで魔石をすべて袋に仕舞うと、カウンターから出てきて言った。


「別室にご案内いたしますので、ご同行いただけますか?」


 ……あれ?もしかして、私、また何かやっちゃった?

 思わずアレナリアを見ると、アレナリアは苦笑いを浮かべていた。

 ああ、やっぱり。私、またズレたことをやっちゃったみたいだ。

 私は、買取担当者に頷いてこたえた。





 通されたのは、2階の応接室だった。内装からして、上客専用の部屋だとわかる。

 案内してきた買取担当者は、袋から魔石をひとつだけ取り出すと、残りをテーブルに置いて部屋を出て行った。

 待っている間、手持ち無沙汰だったので、アレナリアに今回の件について尋ねようと紙とペンを取り出したところで、さっきの買取担当者が戻ってきた。

 早っ!

 もっと時間がかかるのかと思ってた。あ、でも、何か忘れ物でもしたとか……いや、それはないね。

 私は、買取担当者に続いてギルマスが入ってきたところで、自分の考えを否定した。

 またか……。もう、この街ではギルマスに関わりすぎないように、おとなしく、ひっそりと、普通の冒険者らしく迷宮を攻略していこうと思ってたのに、最初からこれじゃあ、この後どうなることやら……。

 私は心の中で深い溜息をついた。

 できるだけ人とは関わりたくないんだけどな……。

 世の中、思い通りにはいってくれないということを、改めて実感したのだった。




「また、あなたか」


 私の姿を見つけるなり、ギルマスは微妙な顔をした。

 そりゃあ、昨日の今日だし、街に来たばかりの冒険者と連続で会えば、そんな顔にもなるよね。

 私はギルマスに同情した。

 それから、ギルマスは私の隣を見た。


「隣の方は…………もしかして、アレナリアお嬢様ですか?」

「ええ、またお会いしましたね、イーサン殿」


 アレナリアはフードを取りながら答えた。


「お嬢様がいらっしゃるということは、この魔石はお嬢様が?」

「いいえ、この件に私は一切関わっておりません。トモリさんと一緒に来たのは、単なる偶然に過ぎませんよ」


 アレナリアはにっこりと笑って言った。

 ……というか、顔は笑ってるけど目は笑っていなかったから、逆に怖かった。

 ギルマスも同じことを思ったらしい。すぐに謝ると、私に向き直り、本題に入った。


「それは申し訳ありません、お嬢様。この魔石はとても珍しいものですから、てっきりお嬢様の物とばかり……。ですが、これがお嬢様の物ではないということは、この魔石はトモリさんの物ということになりますが……。トモリさん、これはどこで手に入れられた物か、教えていただきたい」


 話の流れから、あの魔石は私の想像以上にヤバい物だということが推測できた。

 だから、入手方法を誤魔化そうかとも考えたけど、そもそもあの魔石のことをよく知らない私が嘘をついても、すぐに化けの皮が剥がれるだろう。

 そうなると、さらに面倒なことになりかねない。

 ここは、素直に言ったほうが無難そうだ。

 私は正直に入手方法を書いて、教えることにした。




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