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64.ぼっち少女のカージア入街


 双子と会ってから1時間後。

 簡単な会話をしながらひたすら歩き続けて、やっとカージアの外門に到着した。

 商業都市だからか、門の前には商人のものらしき馬車がいくつも並んで、順番を待っていた。

 ここまで歩いてくるのでもうヘトヘトなのに、これからあの行列に並ぶのかと思うと、気分が落ち込んだ。

 それでも、仕方なく列に並ぼうとすると、アドリアナに呼び止められた。


「トモリさん。私がいれば並ばなくても入れますわよ」


 そう言って、アドリアナは列に並ばず、直接門に向かって歩いていく。その後をアレナリアが私を手招きしながらついていくのを見て、私もあとを追った。



 門に着くと、アレナリアが手の空いている門番に話し掛けた。


「こんにちは。あの、ここ、通ってもいいですか?」

「ん?ああ、アレナリア様!アレナリア様でしたら、どうぞ、ご自由にお通りください」

「ありがとうございます」


 門番は、アレナリアだと知ると、それまでのどこか気の抜けた態度を改め、背筋を伸ばしてかしこまり、通行許可を出した。

 アレナリアは許可が出ると、門番に軽く頭を下げ、私とアドリアナを呼んで門を潜ろうとした。


「お待ちください!」


 でも、私が門番の前を通ろうとしたとき、呼び止められてしまった。


「あの、この方は?」


 門番は私のことが気になるらしい。まあ、仕事柄、私のような初めて会う人を見逃すことはできないのだろう。

 アレナリアもそれをわかっているのか、笑顔で対応した。


「この方は、先程お世話になった冒険者の方です。実は、今日は姉と魔法の練習をするために外に出たのです。魔物除けの香を焚いていたのですが、魔法の練習に夢中になっている間に切れて、魔物に襲われてしまって……。ですが、この方が魔物を撃退してくださったので、私たちは怪我もなく戻ってくることができたのです」

「そうですか。おふたりにお怪我がなくて安心いたしました。おふたりとこの方との関係は承知いたしましたが、その、規則ですので、大変失礼ですが身分証を拝見させていただいてもよろしいですか?」


 事情を聞いた門番は、アレナリアとアドリアナに怪我がないことを知ってほっとした顔をした。それから、申し訳なさそうに、私に身分証の提示を求めてきた。

 双子に自己紹介するときに見せているし、特に隠す理由もないので、私は素直に緑色の冒険者ギルドカードを見せた。

 私のカードを見た門番は、ビックリした声を上げた。


「み、緑色!?ということは、Cランク!?その歳で……す、スゴイですね!冒険者になられてどれくらいですか?どうしたらその歳でそのランクに…………あ、もしかして妖精族の方ですか?それならその見た目でそのランクでも納得……」

「あの、そろそろいいですか?私たち、このあと用事があるんです」


 感極まった門番が早口でまくしたてるのを、アレナリアが苦笑いしながら間に入って止めた。

 興奮していた門番は、アレナリアの声に我に返った。


「あ!し、失礼いたしました!冒険者の方の素性を不用意に探ってはいけませんでしたね……。すっかり失念しておりました。申し訳ございません」


 そう言って、門番は深々と頭を下げた。

 自分から上げるつもりがないのか、いつまで経っても頭を下げ続ける門番をどうしようかと、私はアレナリアに目で助けを求めた。

 私の視線に気がついたアレナリアは、すぐに行動してくれた。


「えっと、今度から気をつけてくださればいいですから。では、私たちはこれで失礼させていただきますね」


 アレナリアは門番にそう声を掛けると、私の手を引いて歩き出した。私がアレナリアにつられて歩き出すと、アドリアナも門番に一声掛けてから歩き出した。




 街に入ると、私たちは注目の的になった。

 領主の娘であるふたりは、日頃から出歩いているらしく、街を歩けばあちこちから声が掛かった。

 当然、一緒にいる私も注目されることになった。私に気を遣ってアレナリアがうまく対処してくれたけど、あまりにも多くて嫌になった私は、途中からローブのフードを被り、ふたりから少し離れたところを歩いていくことにした。

 そうして、人集りをかき分けながらカージアの街の冒険者ギルドに着いたとき、私は主に精神的な面で疲れ果てていた。

 はあ……。疲れた……。人混みってうるさいし、邪魔だし、面倒で嫌いだわ……。あのふたりがこんなに目立つって知ってたら、初めから別行動してたのに……。

 双子が集まってきた人々の相手をしているうちに、私はそっとギルドに入った。双子のあとだと入れなくなりそうだったので、先に入ったのだ。

 

 カラン


 扉を開けると鈴の音が鳴った。

 カージアの街のギルドは、フィルリアの街のギルドとほぼ同じ造りだけど、装飾はこっちの方がいくらか豪華だった。商業都市で儲かってるからかな?

 私は、特にすることもないので適当に依頼を見ながら双子を待った。



 私が壁一面のボードの依頼をすべて見終わる頃、やっとアレナリアとアレナリアがギルドに入ってきた。

 ふたりが入ってくると、ギルドの受付嬢のひとりが席を立ち、奥に向かった。

 少しして、受付嬢はヒゲの生えた厳つい顔をしたおじさんを連れて戻ってきた。


「ギルドマスター」


 アドリアナがヒゲのおじさんをそう呼ぶ声が聞こえた。それ以外にも会話をしていたけど、昼時ということもあり、少し離れたところにいる私には、喧騒に紛れて聞き取れなかった。

 どうやら、あのヒゲのおじさんがここのギルマスのようだ。こっちは、ハティさんと違って想像通りというか、そんな感じで、少し安心した。

 それから、ギルマスはアドリアナとアレナリアを連れて奥に去っていた。


 そして、双子が奥に消えてから数分後、さっきギルマスを呼びに行った受付嬢が、今度は私を呼びに来た。


「あの、ギルマスがお呼びですので、一緒に来ていただけますか?」


 私は頷いて、受付嬢についていった。


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