表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/173

61.ぼっち少女のフィルリアの街迷宮攻略4

大変長らくお待たせいたしました。



 私は、立体映像のリリスに挨拶を返す。


『えっと、お久しぶりです』


 私が言うと、リリスは笑みを深くした。


「ええ。またトモリに会えて嬉しいわ。迷宮攻略も順調に進んでいるみたいだから、予定より早いけど会いに来たの。私に会えるの、待ってたでしょう?」


 心の中を読まれた気がして、少しドキッとする。

 確かに、早くリリスに会って、あの謎言語の解読表をもらいたいと思っていた。でも、前回会ってから、まだ2週間経ってないから、もらえるのはまた今度かなと思っていたのだ。

 今回会えたのはとてもラッキーだった。


『どうして私があなたを待っているって、わかったんですか?』

「勘、かな?」

『……勘ですか?』


 勘でそこまでわかるものかな?それともリリスだからわかる?……あ、もしかしてカマかけられた?

 私はリリスを胡乱げに見る。すると、リリスはクスクスと笑った。


「そんな顔しないで頂戴。大丈夫。カマをかけたわけじゃないわ」

『なら、どうしてですか?本当に勘だけでわかるとは思えないんですが』


 リリスは一度深呼吸して笑いを収めた。ただ、顔はまだ笑顔のままだったけど。


「ウンディーネから聞いたのよ。あなた、前にあの子を喚んだでしょう?その時のことをあの子から聞いて、あなたが魔術書をちゃんと読めてないってわかったから、予定を早めて来たのよ。何かあってからじゃ遅いから」


 ウンディーネって、ウルフ迷宮で喚んだ水の悪魔か。……元の世界では、ウンディーネは水の精霊だったけど、こっちでは悪魔に分類されるんだなって思ったのを思い出した。


『ウンディーネと知り合いだったんですね』

「ええ、まあね。あの子とは長い付き合いだから、たまに話をするのよ」


 へぇ。悪魔どうしも交流があるんだね。サキュバスと水の精霊(悪魔)って珍しい組み合わせだけど。

 私は心の中で笑った。


「いつもは私の方から会いに行くんだけど、今回は珍しくあの子の方から私に会いに来て、あなたの話をしてくれたの。召喚の仕方がかなり独特だったから、もしかして魔術書をちゃんと読んでないんじゃないかって、すごく心配してたわ。黒魔術は、使い方を間違えると命に関わるから」


 さらっと命に関わると言われて、顔がこわばった。

 あの術って、そんなに危険なものだったの!?確かに、貧血になってつらかったし、血を使いすぎれば命に関わるかもだけど、そんなこと、どこにも書いてなかったよ!

 心の中で愚痴る一方で、無闇に使わなくて良かったと安堵もした。書いてあることがわからなくて失敗ばかりで、効率が悪かったから使わなかったのだ。

 まあ、実際は、あまり使える場面がなかったから使わなかったという面のほうが大きいんだけど。

 結果的に、それで救われたということだろう。


「だから、ちゃんと読めるようにいろいろ揃えてきたわ。黒魔術を使うのは、これ読んで勉強してからにしてね」


 リリスが言うと、ポンっという音がして、私の前に辞書のように分厚い本が2冊現れた。

 よく見ると分厚さは違っていたけど、どちらも白い表紙に、黒字でタイトルが書かれていた。

 どちらのタイトルも、アニタさんに教えてもらったこの世界の文だった。読んでみると、若干薄い方が「やさしい悪魔語 召喚アルノリモア編 〜これであなたも立派な召喚系黒魔術師になれる!〜」というタイトルで、分厚い方が「悪魔語大辞典 召喚編 〜これさえあれば召喚アルノリモアの単語が全部わかる!〜」だった。

 ……随分とユニーク?なタイトルだな。わかりやすいけど、後半の言葉っているのかな?

 そんなことを思いながらも、適当にページをめくってみる。

 「やさしい悪魔語」の方は、文法書のようで、謎言語――もとい悪魔語――の文法がわかりやすく図解式で載っていた。

 「悪魔語大辞典」の方は、英和和英辞典のように、悪魔語とこの世界の文字の両方から目的の語を探せるようになっていた。

 うん。これだけ揃っていれば、あの魔術書も解読できそうだ。



 私が本を眺めていると、ふと視線を感じた。リリスを見ると、満面の笑みで私を見ている。


『えっと、リリス……さん?』

「ん?どうしたの?何かおかしなところでもあった?」

『いえ、その、ずっと私を見てるので、気になって』

「ああ、喜んでくれているみたいで良かったなって思ってね。その本、あなたのためだけに書いたのよ」

『えっ!そうなんですか?』


 こんなに分厚い本を、私のために?

 私は改めて2冊の本を見る。どちらも、書店で売っている本と比べても遜色ない出来だ。これを、リリスが書いたの?

 私はてっきり、すでにあるものを持ってきたのかと思ってた。


『私のために、わざわざありがとうございます』


 私は改めてお礼を言った。

 するとリリスは、照れくさそうに笑った。


「どういたしまして。喜んでくれて何よりだわ。あの子も頑張って書いた甲斐があるわね」


 ……あの子?そういえば、前にもそんなことを言ってた気がする。

 さっきまではウンディーネのことをあの子って言ってたけど、話の流れ的に、それとは別のひとのような気がするんだよね。

 一体誰なんだろう?


『あの』

「あっ!いけない!そろそろ時間だわ!」


 あの子について聞こうとしたのとほぼ同時に、リリスが声を上げた。


「少しゆっくりし過ぎてしまったみたい。もうそろそろ時間だから、残りの用事を片付けてしまいましょう。今回の攻略特典は何がいいかしら?トモリの好きなものをあげるわ」

『えっ!えっと……ちょっと、待ってください。すぐ考えるので……』


 ……またか。まったくもう、こういうのは先に終わらせてほしい。

 せっかくの機会なのに、こんないい加減に終わらせるなんてもったいない。でも、いきなり言われてもすぐには出てこない。

 好きなものって言われても……。とりあえず、今困っていることから考えてみようかな。

 えっと、解体は、スキルを前回もらったから問題ない。

 この世界の文字も覚えたし、悪魔語もあの本があればわかるようになるはずだ。

 お金もだいぶ溜まってきたし、衣食住は問題ない。

 迷宮については本もらったし、場所の法則性もわかった。

 魔法も「想像創造クリエイト・イマジネーション」で好きなものを創れるし、迷宮攻略中にケガしても異能で回復できるから心配なし……。

 あれ?私、今特に困っていることってない?

 うーん。じゃあ、他に欲しいもの欲しいもの……。


「……特に無いなら、私のおすすめをあげるわ。残り時間も少ないし、それでいいかしら?」


 私が悩んでいると、リリスが提案した。

 リリスのおすすめ……。何をもらえるか不安になったけど、ここまでいろいろしてくれるひとだから、変なものではないはずだ。

 私はリリスの提案を承諾した。


『えっと、じゃあ、それでお願いします』

「わかったわ。そうね、あなたにはこれがいいわね」


 リリスが言うと、私と水晶が淡い紫色の光に包まれた。


「『フィルリアの街迷宮制覇』の称号と、ギフト『水中呼吸ブリージング・アンダーウォーター』を授与したわ。詳細はあとで確認してね。それじゃあ、またどこかの迷宮で会いましょう」


 そのまま通信が切れ、リリスの映像は消えた。

 他にも言いたいこととか聞きたいこととかあったのに、結局言えなかった。

 急ぎではないから、また今度でもいいんだけど、リリスは次いつ会えるか言わなかった。

 まあ、また迷宮を攻略したら会えるみたいだし、気長に行こう。


 私は、手に持っていた悪魔語の本2冊を「無限収納インベントリ」に仕舞うと、街に戻った。


次回の更新は、近日中にする予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ