60.ぼっち少女のフィルリアの街迷宮攻略3
階段で休憩を取り、魔力が完全回復してから、私は第9層に向かった。
第9層には、大きな城があった。
ゴブリン迷宮にあったのと同じような造りの城だ。
配置も似ていて、城壁にゴブリンボウキャバルリー、ゴブリンスナイパー、ゴブリンガンナー、ゴブリンソーサラー、ゴブリンクレリックがいて、遠距離から侵入者を攻撃。城内にはゴブリンナイトとゴブリンファイター、ゴブリンランサーがいて、狭い廊下で待ち伏せて侵入者を攻撃する。
そして、城の地下に、次の階層への階段がある部屋があった。
ただ、「地図」で見ると、ゴブリン迷宮のあの城と同じように、一度城の最上階の10階まで行き、そこから地下行きのエレベーターに乗らなければいけない造りになっていた。
またか……。また10階まで階段を上らなければいけないのか……。
私は、階段を上るのが地味に辛かったことを思い出して、溜息をついた。
何か回避する方法ないかな?
「飛翔」で飛びながら移動するには、城内は狭すぎる。「飛翔」はスピードが出やすいぶん、細かいコントロールが難しいからなぁ。
1階から入らずに、10階から入るというのも考えたけど、1階以外は入れるところがない。窓は開かない仕様になっているし、煙突とかもない。
あとは……強行突破とか?でも、建物を壊せるような魔法なんて使えない……。
……あ!創れば問題ない?
うん。そうしよう!
というわけで、私は建物を壊せる魔法を創ることにした。
『創造・爆発』
◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆
爆発
【属性】火
【タイプ】攻撃
【発動対象】指定
【効果】指定範囲内に爆発を起こす。範囲内にあれば、敵味方関係なく巻き込む。
◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆
爆発魔法が出来上がった。
私は「飛翔」で飛び上がると、攻撃に当たらないようにしながら城壁に近付き、新しい魔法を使った。
『爆発!』
唱えると、手元から火の玉が城壁に向かってすごい速さで飛んでいった。そして、着弾すると、大爆発が起こり、ゴブリンを城壁ごと吹き飛ばした。
その爆風は、私がいるところにまで届いた。
「防御結界」のおかげで大事にはならなかったけど、あの威力はヤバい。
想像以上の破壊力だった。
魔法を使うとき、できるだけ広範囲を吹き飛ばせればいいなぁ、なんて思いながら使ったせいかもしれない。
さすがに、自分まで巻き込んでしまうような攻撃はダメだ。
私は、爆風が収まると、直径20メートルくらいのクレーターができている着弾地点を見ながら反省した。
そして、少し移動すると、今度はさっきよりもかなり威力を落として、「爆発」を発動させた。
だいたい、1、2メートルくらいを吹き飛ばすイメージだ。
飛んでいった火の玉は、着弾すると爆発したけど、今回はちゃんとイメージ通りの威力で、私のところまで爆風が届くことはなかった。
……やっぱり、魔法はイメージが大切なんだな。
魔法の使い方を改めて理解した私だった。
城壁を突破した私は、「爆発」で城の最上階に穴を開けて侵入し、さっさとエレベーターに乗って地下へ。
そして、階段を降りて第10層に辿り着いた。
第10層は、ボス部屋のようだった。
ゴブリンのボス戦……。またゴブリンエンペラーが出てきたら嫌だなぁ。前回は何とか倒せたけど、今回もうまくいくとは限らないし……。
念のため、少し長めの休憩を取り、魔力の完全回復と、ここまでの疲れを取ってから、ボス部屋の中に入った。
10メートル近い高さがあるボス部屋の大きな扉を開けて中に入る。扉が自動で閉まる音を聞きながら、部屋の中央付近まで進むと、前方が光り、ゴブリンが出現した。
そのゴブリンは、体長が3メートルくらいで、記憶にあるゴブリンエンペラーと比べるとかなり小さい。
……ゴブリンエンペラーじゃない?
確認とステータスを知るために、私はゴブリンを鑑定した。
◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆
ゴブリンキング
【職業】王
【特徴】ゴブリンの王。まあまあ強い?
【固有スキル】王の特権Ⅰ
【レベル】78
【体力】8984/8984
【魔力】3787/3787
【筋力】886
【防御】859
【命中】915
【回避】884
【知力】879
【精神力】879
【速度】884
【運】886
王の特権Ⅰ
【発動】任意
【説明】全ステータス値を高める。最大2倍。効果時間は5分。
【使用方法】スキル名を唱える。
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予想通り、今回のボスはゴブリンエンペラーではなくゴブリンキングだった。
ステータスはゴブリンエンペラーよりも低い。それに、「王の特権Ⅰ」はステータス値を高める固有スキルだけど、最大2倍だ。それくらいなら、私の方が高いステータスもあるし、問題はなさそうだ。
こう考えると、ゴブリンエンペラーがいかに規格外の存在だったかよくわかる。ゴブリンエンペラーとゴブリンキングじゃ、ステータスの桁が違うしね。
私は、開戦早々、最近のボス戦の必勝パターンである「凍結」を使った。
倒せなくても、これでゴブリンキングの動きを制限できれば、かなり有利になれる。
そう思って、使ったんだけど……。
予想に反して、ゴブリンキングは一撃で死んでしまった。
……あれ?そんなに威力強くした覚えはないんだけど。まさか、一撃で倒せるなんて……。これ、私が強くなったからだよね?魔物倒しまくってたから、ステータスかなり上がってるし。
私は、あまりにも呆気なく終わってしまったボス戦に拍子抜けした。
でも、すぐに気を取り直して、「凍結解除」で凍ったゴブリンキングを解凍すると、「無限収納」に収納した。
そして、今度こそ核水晶があることを願って、奥の小部屋に続く扉を開けた。
小部屋の中には、核水晶があった。
あー、良かった。また階段があったらどうしようかと思ったよ。
今度の報酬は何だろう?随分難しい迷宮だったから、称号も良いものがもらえるんだろうなぁ。
そう思って、核水晶に触れる。すると、核水晶は淡い紫色の光とともに、彼女の立体映像を映し出した。
「久しぶりね。トモリ」
立体映像のリリスは、そう言って艶やかに微笑んだ。




