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59.ぼっち少女のフィルリアの街迷宮攻略2


 第8層には、深い森が広がっていた。

 「地図マップ」で確認すると、階層全体が森となっていて、特に道というものはない。ただ、ところどころに開けた場所があり、そこにゴブリンが十数匹固まっていた。もちろん、それ以外の場所にもゴブリンはいるようだ。

 現に、階段を降りてすぐの場所に、ゴブリンソードマンが3匹いた。

 魔法で瞬殺したけど、今まで階段を降りてすぐに魔物に遭遇することはなかったから、少し焦った。

 「地図マップ」の更新は、階段を降りきってその階層に着いてからだから、降りている最中はわからないのだ。

 「防御結界プロテクトシールド」を展開しているから、奇襲されてもある程度の攻撃は防げるから良かった。やっぱり、用心に越したことはない。

 ゴブリンソードマンを倒した私は、いつものように「飛翔フライ」を使い、木々の隙間から森の上に出ようとした。

 でも、結界のようなものが森の上にあるようで、飛んでいくことはできそうになかった。

 はあ……。ここは諦めて、素直に歩いて進むしかないか……。

 私は着地すると、森の中を歩き始めた。



 第8層には、ゴブリンソードマン、ゴブリンウォーリアー、ゴブリンスピアマン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンウィザード、ゴブリンヒーラーがいた。

 この中で一番厄介だったのがゴブリンアーチャーだった。

 ゴブリンどもは何匹かで組んでいて、前衛タイプのゴブリンソードマンやゴブリンウォーリアーが私に近づいて攻撃。ゴブリンスピアマンやゴブリンウィザードがそのサポート。ゴブリンヒーラーは回復。そして、私が目の前の敵に構っているところを狙って、ゴブリンアーチャーが攻撃してきた。

 ゴブリンアーチャー以外は、攻撃してきたときにはすでに視界に入っているので、魔法で瞬殺できるけど、ゴブリンアーチャーは、数十メートル離れたところにいるので魔法を当てにくく、倒すためには視認できるところまで近づかなければならなかった。

 でも、近づくまでにいくつも矢を放ってくるのだ。木を盾にしたり、「防御結界プロテクトシールド」で防いだりしたから直撃はしなかったけど、ずっと攻撃されているのは精神的に良くなかった。

 範囲攻撃魔法で倒せば一発なのかもしれないけど、それで木々まで巻き込んで、道が塞がってしまったら困るから、地道に倒していくしかなかった。

 ああ、なんて面倒なんだろう……。

 私は辟易しながらも、第8層を着々と進んでいった。

 


 第8層に入ってから、30分が経った頃、私は焦りを感じていた。

 魔力が残り少ないのだ。

 この迷宮に入ってからここまで、ほぼノンストップで来たせいで、魔力の回復が十分にできていなかったうえに、この階層に来てから、ゴブリンアーチャーのせいで魔法を使う回数が大幅に増えた。「防御結界プロテクトシールド」も、もう何度も張り直している。

 そのせいで、魔力は残り2割を切ってしまった。

 魔力が残り半分を切った頃から、節約のために「快適空間コンフォーダブルフィールド」を解除した。森の中ということもあり、特に熱くも寒くもなかったから、解除しても問題はなかった。

 それから、敵を倒すときも、一番消費魔力が少ない「風刃ウィンドカッター」で倒すようにした。「風刃ウィンドカッター」の消費魔力が少ないことは、これまでの経験でわかっている。

 理由は、おそらく、風――空気を利用する魔法だからだと思う。よく使う「氷槍アイスランス」は、意外と消費魔力が多くて、氷を創ったりするのに魔力を消費しているからだと思う。

 氷はどこにでもあるわけじゃないから創る必要があるけど、空気ならあるから、その必要がないというわけだ。

 ただ、「風刃ウィンドカッター」で倒した場合、死体の切り口からは当然、血とかが出ている。グロいのにまだ慣れていない私は、できるだけ見ないようにして、さっさと「無限収納インベントリ」に収納した。

 ゴブリンアーチャーは、多少遠くても、「地図マップ」を頼りにだいたいの場所に「風刃ウィンドカッター」を放って倒した。ときどき失敗したけど、「防御結界プロテクトシールド」を張り直すよりはマシだ。

 死体の回収は時間短縮のために諦めた。……いや、どちらかというと、血を流している死体を見たくないという気持ちの方が強かったので、諦めた。見なくてもいいなら見ない!というか、見たくない!


 まあ、そんなふうに頑張って節約してきたけど、今のペースだと階段に着く前に魔力が尽きてしまう。

 でも、飛んで行けない以上、戦闘は避けられない。戦闘をすれば、当然魔力を消費する。

 かといって、魔法を使わずに倒すなんて無理だ。

 ……どうしよう。

 魔力が尽きる前に抜けるためには、戦闘を避けることと、早く階段に着くことが必要だ。でも、それを両立させることは難しい。戦闘を避けようとすれば必然的に遠回りをすることになるし、このまま最短距離で進めば、魔物と会って戦闘になる。

 究極の2択だ。

 もし、私の身体能力が高ければ、敵に気付かれる前に走り抜けるとかいう離れ業でなんとかできたかもしれないんだけど、さすがにそんな芸当はできないしなぁ。

 …………。

 そこで、ふと、思い出した。

 そういえば、身体能力を上げる異能がなかったっけ?前に、魔物が同じ名前の固有スキルを持っていたのを気にした覚えがある。

 私は、ステータスを開いて異能を確認する。すると、確かに、「身体強化フィジカル・ブースト」の異能があった。


◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆


身体強化フィジカル・ブースト

【発動】任意

【説明】身体能力を強化する。最大10倍。

【使用方法】異能名を唱える。


◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆


 私は、とりあえず2倍に設定して、異能を唱えた。


身体強化フィジカル・ブースト。強化度2倍』


 すると、淡い紫色の光が私を包み、身体の奥から力が漲ってくるような感じがし始めた。

 その勢いのまま走り出すと、今までよりもずっと速く走ることができた。

 1、2分走って、速さに慣れてきたら、強化度を上げてさらに速くしていった。

 最終的に、10倍まで上げてみたら、あまりの速さに頭の方の処理速度が追い付かなくなって、木に激突してしまった。

 幸い、そのとき周囲に敵はいなかったけど、かなり痛くて血も出ていたので「治癒ヒール」で治した。

 その後、頭の処理速度も上げる異能「思考加速アクセル・シンキングEX(・エクストラ)」があることを思い出し、使ったところ、強化度10倍でもぶつかることなく階段まで走り切ることができた。

 ただ、階段に着いて「身体強化フィジカル・ブースト」を切った瞬間、全身がひどく痛み出した。筋肉痛のような激しい痛み。ついでに頭も痛い。

 治癒魔法で治そうとしたけど、痛くてイメージがうまくいかず、使えなかった。痛みが収まるまで待つことはできそうになかったから、「限定蘇生リミット・リヴァイヴ」の異能を使って、全身を治した。異能は、イメージしなくても発動できるし、魔力消費もないからかなり便利なのだ。


 回復してから、あの痛みは何だったのか考えた。

 身体の方は、筋肉痛みたいだった。筋肉痛って、普段使ってない筋肉をたくさん動かすとなるものだったはず。ということは、もしかして、「身体強化フィジカル・ブースト」の強化に私の身体が耐えられなかったってことかな?

 頭が痛くなったのも脳が「思考加速EXアクセル・シンキング・エクストラ」で限界を超えて使ったから悲鳴を上げていたとか?

 もしそうなら、今度使うときは、もう少し緩めにかけよう。せめて、普通の筋肉痛とかで終わる範囲で。もっと強くするのは、それに耐えられるようになってからにしよう。


 また気を付けることが増えた私だった。


 

◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆


思考加速EXアクセル・シンキング・エクストラ

【発動】任意

【説明】思考速度を加速する。最大1000倍。

【使用方法】異能名を唱える。


◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆

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