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58.ぼっち少女のフィルリアの街迷宮攻略1


 4月(オルヴァセン)25日、火曜日レアフィルダン

 今日は、この街にある残りひとつの迷宮を攻略しに行くことにした。

 ちなみに昨日は、温泉に行って、連日働き詰めで疲れた体をゆっくりと休めた。

 考えてみると、この世界に来てから2週間近く経つけど、まともな休みは、アニタさんたちと観光した1日しか取っていなかった。

 このままじゃ働きすぎで過労死してしまう!と思った私は、昨日は丸一日、宿で買った本を読んだり、温泉に行ったりしてのんびりと過ごした。

 そして、リフレッシュした私は、今日も朝から迷宮探索に乗り出した。



 おまけ迷宮のホーンラビット迷宮は、見つかるまで4日もかかったけど、今回はもっと早く見つかるはずだ。森の中で探していない場所は、もうあと少ししかないのだから。

 私は、午前中いっぱいをかけて、フィルリアの街周辺の森の「地図マップ」を完成させた。つまり、森の中を全部見て回ったわけだけど、残念ながら残りひとつの迷宮は見つからなかった。

 ……見落としたのかな?

 残りの迷宮もおまけ迷宮で、小さなものだとしたら、見落としていたとしても不思議はない。ホーンラビット迷宮の入口を見つけられたのは偶然のようなところもあったし。

 私は落胆しながら、一度街に戻って、飲食店で昼食を食べることにした。携帯食も持っているけど、今日はお店で食べたい気分だったのだ。



 昼時の飲食店はどの店もすごく混んでいた。

 私は、目当ての異国料理の店に並びながら「地図マップ」を見て、迷宮のありそうな場所を探す。

迷宮のある場所に、規則性があるかもしれないと思ったのだ。

 「地図マップ」には、今まで攻略した4つの迷宮の場所も載っている。それを見て、私は、あることに気が付いた。

 その4つの迷宮のある場所が、フィルリアの街の中心部を境に下底が短い左右対称の台形になっている。あまりにも綺麗な形なので、自然のものではないと思う。

 それに、いつの間にか付いていた「地図マップ」の距離測定機能を使って、迷宮間の距離を測ると、街の左側にある2つと、右側にある2つの迷宮間の距離が、全く同じだった。ついでに、下底の長さも同じであることもわかった。

 つまり、4つの迷宮は、等間隔に並んでいるということになる。

 そこから、私は5つ目の迷宮も、同じ距離のところにある可能性が高い。「地図マップ」上で2つの迷宮から同じ距離にある場所を探した。

 そして、その場所に目印をつけ、5つすべての迷宮を街を囲むように線で結ぶと、綺麗な正五角形が出来上がった。

 うん。たぶんこれで合ってる。

 私は自分の推理に満足しながら、あと少しとなった自分の番を待っていた。




 1時間後。

 かなり待ったけど、昼食を食べ終えた私は、さっき目印を付けた場所に来ていた。

 そこには予想通り、迷宮の入口があった。

 今まで見たどの迷宮よりも立派で豪華な迷宮の入口だった。

 構造自体は他の迷宮と大差ないけど、階段や柱、壁には、精緻な彫刻が施され、いずれも煌びやかに色付けされていた。

 ところどころに金が入っているようで、太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。

 そして、看板には、金色の文字で「フィルリアの街迷宮」と書かれていた。

 ……どうして今まで誰も、この目立つ迷宮に気が付かなかったんだろう?

 私は、気になって「全世界迷宮辞典」を取り出してフィルリアの街のページを開いた。もしかしたら答えが載っているかもと思ったのだ。

 すると、今まで空欄だった最後の行が埋まっていて、迷宮名の欄には、看板と同じ「フィルリアの街迷宮」という文字があった。

 説明の欄を読んでみると、「フィルリアの街迷宮は、フィルリアの街にある他4つの迷宮を全て攻略した者の前にのみ現れる迷宮である。出現する魔物は、他の迷宮の魔物全て(一部を除く)である」と書いてあった。

 つまり、この迷宮が今まで誰にも気付かれなかったのは、フィルリアの街の全ての迷宮をクリアした人がいなかったからのようだ。

 まあ、あのホーンラビット迷宮は、存在すると思って探さなきゃ絶対見つからなさそうだったから仕方ないのかもしれない。

 私は、「全世界迷宮辞典」を仕舞うと、「快適空間コンフォータブルフィールド」と「防御結界プロテクトシールド」を展開して、迷宮内に入っていった。

 そして、外からの明かりがほとんどなくなった頃、ギフト「夜目ナイトアイ」を使った。

 すると、暗い迷宮内が、昼間のように明るく見えるようになった。壁の模様までよく見える。これなら問題なく進めそうだ。

 私は、「夜目ナイトアイ」の視界を確認しながら、階段を降りていった。



 この迷宮は、「全世界迷宮辞典」に書いてあった通り、これまでに攻略した迷宮に出てきた魔物が一通り出てきた。

 第1層には、ホーンラビットA~Cが出た。私は、この間食べたホーンラビットの肉の味を思い出して、また食べるためにできるだけ傷つけないように最小限の傷で倒して回収した。

 第2層には、地属性のスライムとウルフが出た。具体的にいうと、ロックスライム、ロックウルフ、アースウルフ、プラントスライム、プラントウルフ、サンドスライム、サンドウルフの7種類が出た。

 討伐数や素材は今のところ間に合っているので、「飛翔フライ」で飛びながら、レベル上げと魔法の威力調整に慣れるのために範囲攻撃魔法で適当に倒して進んだ。

 第3層には、風属性のサンダースライムとサンダーウルフ、バードスライムとバードウルフが、第4層には、火属性のファイアースライムとファイアーウルフが、第5層には、水属性のウォータースライムとウォーターウルフ、アイススライムとアイスウルフ、スノースライムとスノーウルフが出たけど、全て第2層同様、適当に倒して進んだ。

 第6層には光属性のパラライズスライムとパラライズウルフ、闇属性のポイズンスライムとポイズンウルフが出た。第6層は石造りの通路で「飛翔フライ」が使えなかったから、階段までの最短経路を歩いて進んだ。出会った敵は漏れなく瞬殺した。

 そして、第7層には、スライムとウルフが全種類出た。それぞれの迷宮のボス戦を足したようなもので、全部で69匹の魔物をひとりで相手にするという、かなり無茶苦茶なボス戦だった。

 私は、開始早々に「凍結フリーズ」を使って、ほとんどの敵を倒し、「凍結解除アンフリーズ」で残ったアイススライムとアイスウルフを倒して全滅させたからなんとかなったけど、これ、剣士とかの接近戦専門の人だったら間違いなく終わってるくらいの難易度だよ……。

 はっきりいって、これまでの迷宮と比べて、圧倒的に難しくなっていた。全ての魔物が出てくるとは言っても、まさか一度に出てくるなんて思っていなかったから驚いた。

 まだスライムとウルフの弱い部類の魔物だから良かったけど、もっと強い魔物が一度に70匹近い数で襲ってきたら、勝てる自信が……。

 私は、いろいろと油断したり考えが甘いところがあるから、これからはもっと気をつけようと強く思った。



 ボス戦を終えた私は、ボス部屋の奥の小部屋に向かって歩き始めた。

 スライムとウルフが一緒に出てきたのは驚いたけど、とりあえずなんとかなったし、これでこの街の迷宮は全て制覇だ。レベルもかなり上がったし、そろそろ次の街に行こうかな。

 あ、そういえば、この迷宮の攻略称号の効果はどんなのだろう?かなり補正が付くといいなぁ。

 今後のことと、称号への期待を抱きながら、私はいつもコア水晶が置いてあるボス部屋の奥の小部屋へ続く扉を開け、そして愕然とした。


 その部屋には、下の階へ続く階段があった。


 部屋にはコア水晶は置かれておらず、代わりに下り階段があった。

 つまり、まだ迷宮は続いているということだ。

 ……ボス戦が終わったのに、何で?

 私は、疑問に思いながらも恐る恐る階段を降りていった。

 そして、第8層に辿り着いて敵を見た瞬間、自分の考えの甘さに猛省した。

 ついさっき、これからは気をつけようと決めたばかりだというのに。本当に、バカだ、私。

 少し考えればわかることだった。「全世界迷宮辞典」にも、()()の魔物が出現すると書いてあったのに、私はそれを失念していた。

 フィルリアの街にある迷宮は、全部で5つ。1つはここ。残りは、ここまで魔物が出てきたホーンラビット迷宮、スライム迷宮、ウルフ迷宮。それから、あともうひとつ。


 ――そう、第8層には、ゴブリンがいた。



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