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57.ぼっち少女のおまけ迷宮攻略


 4月(オルヴァセン)23日、日曜日アスリセンダン

 私がウルフ迷宮を再攻略した日から4日経った。

 この4日間、私は冒険者らしくギルドで依頼を受けながら、森を探索していた。

 本当は1日で終わらせる予定だったのだけど、目的のものがなかなか見つからず、何日も探し回る羽目になった。

 私が探しているもの――それは、迷宮だ。

 リリスがくれた「全世界迷宮辞典」によると、このフィルリアの街には全部で5つの迷宮があるらしい。せっかくだから、全部攻略してから次の街に行こうと思って、探し回っているのだ。

 最初は、アニタさんやハティさんに、この街にスライム迷宮、ゴブリン迷宮、ウルフ迷宮以外の迷宮があるか聞いてみたんだけど、ふたりともないと言い切った。ここ数百年、この街に既知の3つ以外の迷宮があるという話は聞いたことがないという。

 他にも、冒険者ギルドの資料室や街の図書館で街の資料を調べてみたけど、残り二つの迷宮の手掛かりはなかった。

 でも、リリスがくれた「全世界迷宮辞典」は間違っていないような気がして、フィルリアの街を囲むように広がっている森を地道に探索することにした。ただ探索するだけだともったいないから、ついでにギルドで依頼を受けた。そうすればお金も稼げて一石二鳥だからね。



 私は、比較的簡単に終わりそうな討伐系の依頼を主に受けて、森の中をひたすら歩き続けた。

 「地図マップ」の行ったところしか表示されない機能を利用して、森の中を隅々まで調べた。木の陰、茂みの奥、岩の後ろ、崖の上下等々、怪しいところは全部調べた。

 でも、3日探しても、迷宮は見つからなかった。

 ひとりで歩き回って探すのは、さすがに限界があった。

 黒魔術で悪魔を召喚して手伝ってもらうという手も考えたけど、また貧血になって倒れたら困るし、もう少し待てばリリスがあの謎言語の解読表か何かをくれるはずだから、それまで待つことにしたのだ。

 話せない私が、パーティーを組むなんて論外。

 だから、私はひとりで探し回った。

 そして、4日目の今日、やっと小さな迷宮の入口を発見した。



 その入口は、森の奥深くの崖下の岩の密集地帯にあった。

 入口は武装した大人がやっとひとり、屈んで入れるくらいの大きさで、周りには苔や草が生えていた。一見しただけではただの岩の隙間程度にしか見えず、今まで誰にも発見されなかったのも当然だと思える。

 もっと森の浅いところにあったら、子供が見つけてた可能性もあったけど、街から3時間近く歩いた森の中じゃ、それもなかったんだろう。

 私は、魔法で入口の周りを綺麗にする。苔や草を取り、岩の土や砂を落とす。すると、入口の上部の岩に、かなり薄くなっていたけど、かろうじて「ホーンラビット迷宮」と読める文字があった。

 ここはホーンラビット迷宮なのか。前にアニタさんに、ホーンラビットは森に普通に生息する魔物で迷宮はないって聞いたけど、単に知られていなかっただけみたいだな。

 私は、確認のために「全世界迷宮辞典」を取り出してページを開いた。すると、今まで空欄だった上から2番目の行が埋まっていた。迷宮名の欄には、「ホーンラビット迷宮」と書かれていた。

 やっぱり、ここで正解のようだ。

 私は、「光球ライトボール」と「快適空間コンフォータブルフィールド」、安全のために「防御結界プロテクトシールド」も展開してから、迷宮の中に入っていった。




 迷宮の中は、岩でできた自然の洞窟のようになっていた。

 壁はでこぼこしているし、天井もトンネルのように丸くなっていて、高さも2メートルあるかどうか。道の幅は1メートルくらいしかないところもあれば、10メートル以上ありそうなところもある。さらに、分かれ道もY字路が多いし、行き止まりもあって、他の迷宮の構造とはかなり違っていた。

 出てくる魔物は、迷宮の名前の通り、ホーンラビットだった。

 第1層には、ホーンラビットAが出た。



◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆


ホーンラビットA

【属性】地

【特徴】額に角の生えたウサギ。肉はまあまあおいしい。

【固有スキル】なし


【レベル】5

【体力】48/48

【魔力】14/14

【筋力】14

【防御】14

【命中】14

【回避】14

【知力】9

【精神力】9

【速度】14

【運】14


◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆



 ……特徴の説明がおかしかった。まあ、ステータスの説明がおかしいのはいつものことだけど、味に関して書かれているのは初めてだ。

 ホーンラビットの肉って、まあまあおいしいんだ……。今度食べてみようかな?

 ……まあ、最初は本当に食べられるのかとか、おいしいのかとかを人に聞いてから食べることにしよう。

 私は、できるだけ肉を傷つけないようにホーンラビットAを倒しながら、階段に向かって歩いていった。

 階段に着いてステータスを確認すると、ホーンラビットは転職に必要ないことがわかった。そこで、私は、第2層以降は最短距離で進むことにした。




 第2層にはホーンラビットBが、第3層にはホーンラビットCが出た。ちなみに、肉のおいしさの説明はそれぞれ違っていて、Bは「それなりにおいしい」で、Cは「結構おいしい」だった。

 それを見た私は、どうせ食べるなら、結構おいしいらしいCの肉にしようと決めた。



 私は、倒したホーンラビットを「無限収納インベントリ」に仕舞い、解体しながら通路を進み、ホーンラビットに遭遇すると戦闘に集中して一気に倒し、また解体しながら進む、ということを繰り返して、第4層まで降りた。

 第4層は、階段を降りてすぐのところに、他の迷宮にあったのと同じコア水晶が置いてあった。

 え?もしかして、これで終わり?魔物はホーンラビットの1種類しか出て来てないし、ボス戦もない。驚くほど簡単な迷宮。

 あまりにも簡単すぎて、目の前にあるコア水晶が本物かどうか、思わず疑ってしまった。でも、鑑定の結果、本物とわかったので、そっと手を触れて攻略報酬をもらう。

 ホーンラビット迷宮の攻略称号は、「ホーンラビット迷宮制覇」で、効果は速度+10。攻略報酬は、ギフト「夜目ナイトアイ」で、夜や暗いところでも昼間のように物が見えるというものだった。

 称号はショボいけど、報酬のギフトはかなり便利そうだ。これを使えば、わざわざ「光球ライトボール」を出す必要もない。

 私は、やっと迷宮を見つけられたことと、役立つギフトを手に入れられたことに上機嫌で街に戻った。




 その日の夕食は、偶然会った親方が調理してくれたホーンラビットの肉を食べた。一応、親方がおいしそうに食べるのを確認してから口に入れた。

 A、B、Cそれぞれを食べ比べてみたけど、ステータスの説明の通り、一番おいしかったのはホーンラビットCの肉だった。

 初めてウサギ肉を食べたけど、思っていたよりすんなり食べれた。意外とイケるなぁ、ウサギ肉!



 それから、宿に戻って「全世界迷宮辞典」を読み直して見たら、ホーンラビット迷宮の説明欄に、「おまけ迷宮」と書いてあるのを発見した。

 ……おまけ迷宮だから、あの難易度だったのかな?

 ゴブリン迷宮とかと比べると、あまりにも簡単過ぎた。まさにおまけって感じだったな、と改めて思った。



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