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56.ぼっち少女の悪魔召喚3


 私は必死で考えた。

 どうすれば治せる?

 症状は、目眩と倦怠感。……貧血の症状に似ている。もしかして、アレが来た?

 そう思ったけど、すぐに否定する。それはありえない。この世界に来る前に終わったばかりだし、倒れるほど血が出ていたらさすがに気付く。

 私は、念のため自分の身体を一通り調べて、出血してないか確認した。服の上からの簡単なチェックだけど、貧血になるほど出血していたらわかるはず。

 でも、特に異常は見られなかった。

 じゃあ、なんで貧血に……?

 というか、そもそもこれは貧血なの?

 クラクラする頭で必死で考えるけど、答えは出ない。


 私は、とりあえず、安全な場所に移動することにした。

 今いるのはボス部屋。具合が悪くなった原因も解決方法もわからない以上、またウルフが出てくる前に、コア水晶がある部屋に移動しておいた方がいい。

 あの部屋は安全地帯だから、敵に襲われることはない。

 幸い、魔法は問題なく使えたので、私は「飛翔フライ」の魔法で体を浮かせて、コア水晶のある部屋まで移動した。



 コア水晶のある部屋に着いた私は、扉を閉めて安全を確認すると、汚れるのも構わず床に寝転がった。

 身体を起こしていることすら辛かったのだ。

 そうして10分ほど横になっていると、少しマシになってきた。でも、まだ動けるほどではない。

 あと数時間も休んでいれば自然に回復しそうだけど、安全地帯とはいえさすがに迷宮の中で何時間も休むのは抵抗がある。

 今までは迷宮内で別の攻略中の冒険者に会うことはなかったけど、今回もそうだとは限らない。

 何時間も同じ場所でじっとしていれば、会う確率も上がるだろう。それに、ここは攻略者が必ず訪れる場所。他の場所よりも確率が高い。

 私は、少しクリアになってきた頭で、早く回復する方法を考えた。


 回復系のスキルはさっき試して効果がないことがわかっている。それ以外に回復に使えそうなのは……回復薬ポーションがあれば使えたかもしれないけど、貧血に効きそうなものは今は持ってない。

 街に戻ったら、もしものときのために回復薬ポーションを一通り買っておこうかな。お金もあるし、少しずつ買うくらいならあるはずだから。

 回復薬ポーション以外に使えそうなのは……異能かな?ゴブリンエンペラーに殺られそうになったとき、回復してくれた異能。あれを発動できれば、回復できるかもしれない。

 私は、ステータスを開いて異能「蘇生リヴァイヴ」の詳細を確認する。



◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆


蘇生リヴァイヴ


【発動】条件自動

【説明】全身を24時間以内の最良の状態に復元する。

〔発動条件〕①コアの破損率90%未満、②保有魔力量10以上


◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆



 ……最初に確認したときも思ったけど、「コア」って何なんだろう?それに、発動が「条件自動」ってあるけど、これって、条件が満たされたら自動で発動するってことだよね?

 ゴブリンエンペラーのときはちゃんと発動してくれたけど、私自身はこの異能について全然理解していない。説明に発動条件が書いてあるけど、それがすべてってわけじゃないみたいだし。

 これを意図的に使うのは難しそうだ。

 私は「蘇生リヴァイヴ」を使うのは諦めて、他に使えそうな異能がないか探す。

 すると、似たような異能を見つけた。「限定蘇生リミット・リヴァイヴ」だ。




◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆


限定蘇生リミット・リヴァイヴ


【発動】条件任意

【説明】任意の身体部位を24時間以内の最良の状態に復元する。

〔発動条件〕①コアの破損率90%未満、②保有魔力量10以上

【使用方法】異能名と対象部位を唱える。


◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆



 説明からするに、こっちは条件さえ揃えば任意に発動できそうだ。相変わらず「コア」が何なのかわからないけど、それは置いておくことにして、使うことにした。


『身体全体を対象に――限定蘇生リミット・リヴァイヴ


 唱えると、淡い紫色の光が身体を包み、目眩と倦怠感が消えていった。

 良くなってから、立って動いてみたけど、問題はない。うまくいったようだ。

 私は念のため、さらに5分ほど異常がないか様子を見て、問題がないことを確かめると、コア水晶に手を触れて、称号と攻略特典をもらった。

 称号は、「ウルフ迷宮制覇」。補正値は、前回ハティさんたちと来たときにもらった「ウルフ迷宮制覇(3)」のちょうど3倍の数値だった。



◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆


ウルフ迷宮制覇


【称号取得条件】ひとりでウルフ迷宮を攻略する

【効果】防御+150


◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆



 それから、攻略特典は、綺麗な水色の宝石だった。

 さっき召喚したウンディーネの瞳の色によく似た色の宝石で、鑑定するとアクアマリンだった。品質は良。

 宝石か……。正直、宝石なんてもらっても、売るくらいしか使い道ないんだよね。

 私はあまりアクセサリーとかつけないタイプだから、自分じゃ使わないし。

 でも、売るとしても相場がわからないと安く買い叩かれてしまうから、すぐには売れない。

 ……なんか、今までで1番どうでもいいものが出てきたなぁ。これなら、まだ前回の中級体力回復薬3本の方がマシな気がする。

 私は、溜息をつくと、宝石と一緒に出てきた四つ折りの小さな紙きれを広げた。

 これは、宝石と一緒に出てきたけど、攻略特典のひとつって感じではなさそうなんだよね。紙きれだし、いかにもおまけって感じがする。

 紙の内側には、この世界の文字で文章が書いてあった。差出人はリリスで、ちょっとした注意事項が書いてあった。

 書いてあることを要約すると、「黒魔術を使うには術の規模に応じた対価――この場合は術者の血液――が必要だから、黒魔術の使い過ぎには注意すること。特に、失敗しても対価は支払われることと、悪魔召喚は大量の対価が必要になることに注意」みたいなことが書いてあった。

 ……つまり、さっき私が貧血になったのは、黒魔術の使い過ぎというわけか。

 知らなかったとはいえ、危ないところだった。

 今度からは気をつけよう。



 私は、宝石と紙きれを「無限収納インベントリ」に仕舞うと、街に戻った。

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