5.ぼっち少女のウルフ討伐
スライムを倒した私は、再び「探索」を使い、周囲の魔物を探しながら歩く。
地図上には、複数の魔物のアイコンが表示されたので、タップしてみると、どれもスライムとなっていた。
さっきまでは出てこなかったのに、なぜ突然出てきたんだろう?
そう思って考えた結果、一つの仮説にたどり着いた。
さっきまで私は、魔物はゴブリンやウルフを想像していて、スライムは全く考えていなかった。そんな状態で「探索」をしても、探すのはゴブリンやウルフで、スライムは除外されてしまっていた。
なぜなら、「想像創造」はイメージが大切なスキルで、そのスキルで創った「探索」も、イメージによって効果が変わる。だから、スライムは表示されなかった。
でも今は、さっき倒したスライムのおかげで、スライムも魔物として意識しているから、表示されたんだと思う。
「想像創造」は、単純なようで、意外と難しい仕様だと思った。
私は、倒しても消えてしまいお金にならないスライムをできるだけ避けつつ、森の外を目指す。
歩きながら「探索」を使い、魔物の位置を確認しているけど、数分で劇的に変わるわけじゃない。景色もずっと木と土と草ばかりでだんだん飽きてきた。
そこで、魔物との戦闘用に、魔法を創りながら進むことにした。
何を創ろうか考える。まだ最初だし、イメージしやすいのがいいよね。
そう思って、定番の魔法をいくつか創っていった。
魔法を創っているうちに楽しくなって、結局11個も創ってしまった。
他にも創ろうと思ったんだけど、ステータスを確認したら、魔力が半分以下になっていたのでやめることにした。
そんなことをしながら歩いていると、「探索」にウルフの反応が2つあった。地図に表示されたアイコンをタップしてみると、100メートルほど離れたところにアースウルフAとアースウルフBがいることがわかった。
……スライム以外の魔物も、AとかBとかついてるんだね。
心の中で軽くツッコミを入れて、私はアースウルフAとBのいる場所に向かった。
目的の場所に近づくと、私はできるだけ木の陰に隠れて移動した。ウルフにいきなり襲われたら困るし、足場が悪い森の中では逃げ切れないからだ。
異世界に来て早々に死にたくはないので、慎重に行く。
そして、2匹のアースウルフまで残り5メートルのところまで来ると、木の陰から顔だけを出して、そっと様子を伺った。
木が邪魔で全体を見ることはできなかったけど、茶色い毛並みの体長2メートルくらいの狼が2匹いるのが確認できた。どちらかがアースウルフAでどちらかがアースウルフBのはずだけど、見た目だけではAとBの見分けがつかない。
少し距離があるけど鑑定ができるか試してみた。
『鑑定』
◆◇◇◇◇◇◆◇◇◇◇◇◆
アースウルフA
【属性】地
【特徴】茶色い毛並みの普通のウルフ。一応雑魚。固有スキルに注意。
【固有スキル】遠吠え、身体強化Ⅰ
【レベル】3
【体力】33/33
【魔力】5/5
【筋力】22
【防御】12
【命中】7
【回避】12
【知力】7
【精神力】5
【速度】22
【運】3
アースウルフB
【属性】地
【特徴】茶色い毛並みの普通のウルフ。一応雑魚?固有スキルに注意。
【固有スキル】遠吠え、身体強化Ⅰ
【レベル】7
【体力】101/101
【魔力】33/33
【筋力】45
【防御】28
【命中】23
【回避】35
【知力】21
【精神力】19
【速度】36
【運】13
遠吠え
【発動】任意
【説明】使用者の周囲半径10メートル以内にいる同族を呼ぶ。
【使用方法】遠吠えする。
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お願いだから、特徴の説明に「一応雑魚(?)」とか書かないでほしい。危うく噴き出してしまうところだったじゃない!
もうツッコまないで放っておこうと思っても、なかなかできない、おかしなステータス説明だった。
でも、注意を呼び掛けてくれるのは助かるから歓迎かな?
鑑定できたのはよかったけど、問題点も見つかった。アースウルフのスキル、遠吠えだ。
これを使われたら半径10メートル以内にいるアースウルフを呼ばれてしまう。
アースウルフの大群に囲まれると厄介なので、とっとと倒してしまうことにする。
使うのは、さっき創った魔法のひとつだ。
『氷槍』
空中に50センチくらいの長さの氷の槍を創り、放つ。
できるだけ早く飛んでいくようにイメージしたので、氷の槍は一瞬でアースウルフA・Bのところまで飛んでいき、心臓のあるあたりを貫通して消えた。
氷の槍が貫通した2匹のアースウルフは、その場に倒れ込み、動かなくなった。「氷槍」の効果で刺さったところは凍るため、血は出ない。
鑑定してみると、「アースウルフAの死骸」「アースウルフBの死骸」と表示されたので、倒せたようだ。
ウォータースライムAのときは、倒したあとに鑑定しても何もなかったのに、アースウルフは死骸と表示されるのか。まあ、ウルフは素材になるみたいだし、当然なのかな。
そこで、私はふと気がついた。
このアースウルフ、素材になるってことは売れるってことだよね。ということは、解体した方が良いのかな?
でも、解体なんてやったことないし、見たこともない。
魔法でやるということも考えたけど、全くイメージが沸かないものを創ることはできない。
仕方がないので、今日のところはそのまま「無限収納」に入れて、町で売ることにした。
ちなみに、アースウルフBを倒したことで、レベルアップできた。しかも一気に6レベルもアップだ。
それから、いつの間にか魔法属性も増えていた。属性魔法を創ったせいかな?
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トモリ・ユキハラ
【種族】人族
【性別】女性
【年齢】16
【職業】魔法使い、回復師
【レベル】7
【体力】277/277
【魔力】390/390
【筋力】16
【防御】16
【命中】26
【回避】22
【知力】126
【精神力】32
【速度】32
【運】26
【経験値】283/308
【魔法属性】無、水、火、風
【スキル】想像創造
〔コマンド〕
飛翔、探索、時計、地図
水球、水刃、水槍、水嵐
氷槍
火球、火槍、火嵐
風嵐、風刃
雷槍
無限収納
※【異能】と【称号】は変化なしのため省略
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