48.ぼっち少女のウルフ迷宮攻略5
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
第5層も、スライム迷宮のときと同じで、石造りの通路だった。親方が松明に火を灯し、先頭を歩く。
私は、できるだけ戦闘を回避できるルートを示して進んでいく。
そのおかげか、階層の半分ほどまで、戦闘は1回だけで進むことができた。
その戦闘も、通路にパラライズウルフAが1匹とBが2匹の計3匹だけだったので、私が「氷槍」でサクッと倒した。
パラライズウルフは、アースウルフとは違い、毛は金色で体格も一回り大きかった。それが3匹もいれば、横幅の狭い通路はいっぱいになって、かなりの圧迫感があったけど、さっさと倒してしまったのでなんの問題もなかった。
もし、これが前衛だけのパーティーだったら、パラライズウルフの固有スキル「麻痺Ⅰ」の影響も相まって、かなり苦戦していたと思う。
そこを知っているのか、ハティさんも親方も、私が倒すことに何も言わなかった。
倒したパラライズウルフは、私が「無限収納」に仕舞った。
「無限収納」内で解体すると、転職に必要な素材である毛皮や魔石が手に入った。
ちなみに、解体した素材を調べてみると、面白いことがわかった。
パラライズウルフの毛皮だからといって、麻痺の効果があるわけではないらしい。代わりに、魔石には麻痺の効果があった。魔物の固有スキルは、魔物自身ではなく、魔石に付与されているらしい。
つまり、パラライズウルフの魔石をうまく使えば、対象を麻痺させる道具を作ることができるわけだ。
なんか、面白そうだな。
私は、新たな発見に心を踊らせながら、ふたりの後ろを黙々と歩いていった。
パラライズウルフのエリアを過ぎ、ポイズンウルフのエリアに入った。
パラライズウルフのエリアは、1回の戦闘で抜けることができたけど、ポイズンウルフは、どの通路にもまんべんなくいて、回避できそうにない。
私は、戦闘回避は諦めて、とにかく最短ルートで進むことにした。
基本、戦闘は私が行った。
ポイズンウルフは、固有スキル「毒体Ⅰ」を持っており、触れると毒に侵されるらしい。
ちなみに、ポイズンウルフAのステータスはこんな感じだった。
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ウルフ
ポイズンウルフA
【属性】闇
【特徴】紫の毛並みのウルフ。まあまあ弱い。触れると毒に侵される。それなりに強い毒を吐く。
【固有スキル】遠吠え、毒体Ⅰ
【レベル】7
【体力】95/95
【魔力】39/39
【筋力】30
【防御】20
【命中】20
【回避】20
【知力】25
【精神力】23
【速度】35
【運】16
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「まあまあ弱い」って表現されると、弱いのかそうでないのかもうわからないよね……。だいたい「まあまあ」って何だよ!付ける意味がわからない。……まあ、もう慣れたからいいけど。
とにかく、毒攻撃のせいで、剣による接近戦を主として戦うハティさんと親方には、相性の悪い相手だから、私が戦うのがベストなのだ。
そうやって、3度の戦闘を行い、計11匹のポイズンウルフを倒した。
いずれも、「氷槍」で瞬殺だ。
最初のうちは一撃必殺の私の攻撃に驚いていたハティさんと親方だけど、回数を重ねるうちに慣れてきたのか、だんだん驚かなくなってきた。
私としては、いちいち驚かれるのも疲れるから良いんだけど、どこか寂しい気もした。なんでだろう?
歩きながら理由を考えてみたけど、よくわからなかった。まあ、これはあまり重要なことでもないし、置いておくことにした。
そして、今。
私たちは、交差点で四方をポイズンウルフに囲まれていた。ハティさんや親方も戦闘に参加したせいで、多少毒の被害を受けている。ちょっとしたピンチだ。
これは、もちろん、私が意図した状況じゃない。
初めは、この交差点にはポイズンウルフが1匹いるだけだった。だから、特に問題ないと思って進んでいた。
でも、ポイズンウルフに近づいたところで、いきなり遠吠えをされた。
急いで鑑定すると、交差点にいたのはポイズンウルフCで、固有スキルに「遠吠え」を持っていた。
交差点にいたポイズンウルフCは、そのスキルで仲間のポイズンウルフを12匹呼び、呼ばれたポイズンウルフたちは、各通路から交差点に向かって駆けてきたのだ。
その結果、私たちは、交差点で四方をポイズンウルフに囲まれる事態に陥ってしまったのだ。
ただでさえ狭く、逃げ場の少ない通路内で囲まれてしまった私たちは、仕方なく全員で戦闘をすることになった。
ハティさんと親方が一方向ずつ、私が二方向担当する。
さすがに私ひとりですべての方向に対応するのは無理だから、危険だけどふたりにも協力してもらった。
私は親方から松明を受け取ると、できるだけ高く掲げて広い範囲を照らせるようにし、視界を確保する。
本当は、「光球」を使いたかったけど、この間の教会訪問のときに、光属性魔法は特別なものらしいことがわかったので使用を控えた。
松明の明かりは、「光球」と比べるとかなり暗いけど、ないよりはマシだ。
私は、左手を上にいっぱいに伸ばして松明を持ちながら、「氷槍」でポイズンウルフを倒していった。
私は、担当方向のポイズンウルフを倒し終わるとすぐにふたりの援護に回った。
本当なら、声をかけてから援護に入るべきなんだろうけど、話せない私には、それは不可能だ。
私は仕方なく、ふたりの後ろから、間違ってもふたりに当たらないように慎重に狙いを定めて、「氷槍」を放って残りのポイズンウルフを倒した。
「あ、ありがとう。助かったわ、トモリちゃん」
「俺も、助かった。ありがとうな」
戦闘が終わると、ふたりからお礼を言われた。
私が頷くと、ふたりはそれぞれの手当に取り掛かった。
その様子を眺めながら、私は薄っすらと笑みを浮かべた。
誰かにお礼を言われると、嬉しいなぁ。
2020/3/12 ポイズンウルフAのステータスを追加しました。




