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47.ぼっち少女のウルフ迷宮攻略4


 10分ほどで第2層を通り抜けた私たちは、休憩することなく、そのまま第3層と第4層を飛んで行き、第5層への階段で止まった。


 第3層は、スライム迷宮のときと同じ草原地帯で、サンダーウルフとバードウルフがいた。鑑定してから倒そうかな、と思ったけど、どうせまた来るし、いちいち鑑定するのも面倒だからしなかった。

 サンダーウルフも、バードウルフも、「氷槍アイスランス」や「凍結フリーズ」で進路上にいるヤツを問答無用で倒していった。


 第4層も、スライム迷宮のときと同じ造りだった。灼熱の火山にはファイアーウルフが、極寒の氷雪地帯にはアイスウルフとスノーウルフがいた。ただ、今回は湖は半分しか凍ってなくて、凍っていない湖からはウォーターウルフが出てきた。

 私は、ファイアーウルフを「水雨ウォーターレイン」で倒し、ウォーターウルフとスノーウルフを「凍結フリーズ」で倒した。さすがに、元から凍っているアイスウルフには、「凍結フリーズ」は効かなかったけど、試しに「凍結解除アンフリーズ」を使ってみたら倒せた。

 「凍結解除アンフリーズ」は、解凍魔法。凍っているものを常温に戻すことができる。だから、氷でできているアイスウルフの氷を溶かして倒すことができたということだ。



 30分余りで第2層から第4層までの3層を一気に翔け抜けた私たちは、第5層への階段で、一度休憩することになった。

 理由は、私の魔力回復のためと、ハティさんの休息のためだ。

 ハティさんは、飛行魔法が初体験だったらしい。

 それを知らなかった私は、ひとりのときと同じ高度と速度で飛んだ。ハティさんには、その高さと速さが恐怖だったようだ。

 さらに、私は、階段までの最短距離をまっすぐ飛んでいった。空に障害物はほとんどなかったから、方向を変えたのは、火山や飛んでいるバードウルフを避けるためのほんの数回だけ。

 たとえ目の前に倒したばかりの凍ったバードウルフが落ちてきても「無限収納インベントリ」に回収すれば問題ないから避けなかったし、ファイアーウルフが近くにいても、「水雨ウォーターレイン」でだいぶ弱っていたから、高速で通り抜ける私たちを攻撃するだけの力はないと判断して、そのまま突き進んだ。

 私は特に怖いとは思っていなかったけど、ハティさんはウルフが近づくたびにヒヤヒヤしていたらしい。

 そういえば、途中で何度かハティさんの悲鳴が聞こえたような気がして振り向いたけど、別に危険が迫っているようにも見えなかったから、放っておいたんだよね。まさか、怖がってるとは思ってもいなかったから。

 それで、ずっと怖い思いをしていたハティさんは、精神的に疲れてしまい、第5層への階段に着いて「飛翔フライ」を解除したら、倒れてしまった。

 だから、しばらく休憩することになったのだ。



 横になっているうちに眠ってしまったハティさんに膝枕をしながら、親方が話しかけてきた。


「嬢ちゃんも疲れてんなら寝てもいいぞ」


 私は首を横に振った。疲れてないから、睡眠は必要ない。というか、魔力とハティさんの問題さえなければ次の階層も一気に行ったのに。

 そう思って寝ているハティさんを見ていると、親方に考えを読まれたようで、苦笑いされてしまった。


「俺たちがいなければ、先に進んでたって顔してるな。まあ、嬢ちゃんの進み方からすれば、俺たちは足手まといだよな。悪ぃな」


 苦笑いされた上に、謝られてしまった。

 確かにひとりのほうが進みやすいのは確かだし、ふたりがいない方が良いとは思ったけど、謝ってほしいわけじゃないんだよね……。

 私はどう反応したらわからず、俯いた。

 こういうとき、どうすればいいのかな。肯定するのも否定するのも違う気がするけど……。

 話さなくなってから人とあまり関わらないようにしていたから、どうすればいいかわからない。

 とりあえず、このままだと誤解されそうなので、紙に「大丈夫」だと書いて親方に見せると、親方は、「そうか」と言ってにっこりと笑った。

 私もつられて笑いながら、これで良かったのかな、と考えていた。




 その後、ハティさんが起きるまで30分ほどあったけど、親方と話をすることはなかった。

 話をするのに、いちいち返答を書かないといけない私にとっては都合が良かった。もしかして、気を遣ってくれたのかな?

 起きたハティさんの顔色はだいぶ良くなっていて、もう大丈夫だと言った。


「迷惑かけてごめんなさい。もう大丈夫よ。出発しましょう」


 そう言って、さっさと出発しようとするハティさんを、私は引き止めた。


「何?トモリちゃん」


 次の第5層は、スライム迷宮のときと同じなら、石造りの通路にパラライズウルフとポイズンウルフが出るはずだ。

 となると、あまり長時間立ち止まっているのは危険だ。

 私は、紙に「道案内は私がする」と書いて見せた。ハティさんに任せると、時間がかかるし、そもそも地図が間違っているから、階段にたどり着けるか不安だ。

 

「道案内って、トモリちゃん、地図持ってるの?」


 頷いた。ついでに、紙に「後衛の私なら、ずっと見てられるから時間短縮」と書いて見せた。


「確かに、私は剣を使うから、毎回地図を出し入れしないといけなくて時間がかかるわね。時間を短縮したい気持ちもわかるし、トモリちゃんに任せるわ。ハンスは?」

「俺もそれでいいぞ」


 ふたりの同意が得られたので、私が道案内係をすることになった。

 これで、道を間違えたり、無駄に時間をかけなくて済む。

 第1層では、奇跡的に迷わず階段までたどり着けたけど、次もそうだとは限らない。

 それに、ここまで、ハティさんと親方がいるせいで余計な時間がかかっているし、そろそろ気疲れしてきたから、早く帰りたくなってきた。

 私は、できるだけ戦闘が少ないルートで進めるように道案内をすることに決めた。多少の遠回りより、戦闘する方が時間がかかりそうだからね。



 こうして、私たちは、第5層にたどり着いた。

 

次回更新は、1/4を予定しています。

今年は、ご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

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