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42.ぼっち少女の多忙な一日6



 ピピピピピ。


 私は、アラームの音で目が覚めた。

 時刻は午後5時ちょうど。

 まだ眠いけど、人が多くなる前にお風呂に入っておきたいから、まだ寝ていた気持ちを抑えてベッドから出る。

 宿の廊下とかで人に会うかもしれないので、一応部屋着から外着に着替えてから部屋を出た。

 階段を降りていると、下から聞いたことのある声が聞こえてきた。

 この声は、アニタさん?でも、何でこの時間にこんなところにいるんだろう?冒険者ギルドって、この時間忙しいはずじゃなかったっけ?

 アニタさんの声がすることに疑問を感じながらも、階段を降りていくと、カリーナと話をしているアニタさんを見つけた。

 ちょうど階段の方を向いて話をしていたアニタさんも私に気付いて声を掛けてきた。


「あ、トモリさん。こんにちは」


 私は軽く会釈して挨拶を返す。

 私が階段を降り切ってアニタさんのところまで行くと、ここにいる説明を始めた。


「トモリさん。今日これからお時間ありますか?あのあと少し困ったことになって、トモリさんに来ていただくことになったんです」


 アニタさんが申し訳なさそうに言う。

 困ったことってなんだろう?わざわざ呼びにくるくらいだから、言った方がいいんだろうけど、長引くと夕食が……。

 そう思ってカリーナを見るけど、それだけじゃカリーナには私の言いたいことは伝わらなかった。

 でも、代わりにアニタさんが言ってくれた。


「もしかしたら少し長引くかもしれません。カリーナさん、トモリさんの夕食を取り置きしておいていただくことは可能ですか?」

「あ、はい。大丈夫ですよ」

「だそうですよ、トモリさん」


 アニタさんって本当にすごいなぁ。まだ出会って数日なのに、私の言いたいことをちゃんとわかってくれる。

 アニタさんのおかげで懸念事項がなくなった私は、ギルドに向かうことにした。



 私はてっきり、またギルマスの部屋に行くものだと思っていたけれど、実際は違った。

 アニタさんは、冒険者ギルドではなく、その隣にある買取所に入っていくと、解体部屋の方へ向かった。

 私もアニタさんに続いて解体部屋に足を踏み入れた。

 すると、そこには親方や解体職員だけでなく、ハティさんもいた。


「こんにちは、トモリちゃん。急に呼び出しちゃってごめんなさい。来てくれてありがとう」


 ハティさんもいるなんて、よほど急な用件なのかな?でも、なんで解体部屋?

 私はイマイチ状況がよく呑み込めていないけど、説明があるだろうと思って、話の続きを促した。


「それで、いきなりで悪いんだけど、オークキングを出してもらえないかしら?」


 そういえば、オークキングを未解体で売ってほしいって頼まれてたっけ。

 私は素直に、指定された場所にオークキングを「無限収納インベントリ」から出して置いた。

 私がオークキングを出すと、その場にいた人々がどよめいた。


「おい、本当にオークキングだぞ」

「じゃあ、ギルマスの話は本当ってことか?」

「でもあの子、まだ子どもだし、ギルマスがひとりで倒したんじゃ……」


 私にはすべての会話を聞き取ることはできなかったけど、聞き取れた会話から、なんとなく事情が理解できた。

 つまり、ハティさんがここの人たちにオークの件を説明しにきたけど、誰も信じてくれなかったから、論より証拠ってことで私が呼ばれて実物を見せることになったって感じかな。

 私はその後、ハティさんに言われるがまま、昼間倒したノーマルオーク18匹と、アースウルフ47匹をオークキングの隣に出した。

 すべて出し終わると、天井まで届く高さの魔物の山が出来上がったけど、ほとんど「無限収納インベントリ」内から出したからか、私はどこかスッキリした気分だった。

 でも、反対に、解体部屋の職員たちは静まり返っていた。

 振り返って顔を見ると、皆一様に固まっている。

 私、何か変なことでもしたっけ?うーん……言われたとおりにしただけだよね?なんで皆固まってるんだろう?

 私は、何か知っていそうなハティさんを見た。

 でも、ハティさんは親方の方を向いていて、私の視線に気付かないので、私も親方を見た。

 親方は、いつの間にか魔物の山に近寄っていて、真剣な表情で山積みになった魔物を観察している。

 なんとなく邪魔をしてはいけないような気がして、私は少し山から離れて、親方をじっと見つめていた。



 数分後。

 観察が終わった親方は、口を開いた。


「全部で、金貨2枚と銀貨80枚ってところだな。それでいいか?ハヴィティメルネ」


 いきなり金額を言った親方に、ハティさんは戸惑いながらも答える。


「えっと、内訳を教えてもらってもいいかしら?」

「ああ。まず、アースウルフはすべて状態がいいから、買取最高額の1体銅貨60枚×47匹で銀貨28枚と銅貨20枚。で、ノーマルオークは1体につき魔石が銅貨10枚、肉が銅貨500枚の計銅貨510枚。それが18匹だから銀貨91枚と銅貨80枚。最後に、オークキングは、魔石が銀貨10枚、肉が銀貨150枚で計銀貨160枚。全部合わせて、金貨2枚と銀貨80枚だ。どうだ?」

「……どれも買取価格の最高額ね。解体手数料なしだし、まあ、妥当なところだと思うわ」

「そうか。じゃあ、金を取って来るから待っててくれ」


 そう言って、親方はお金を取りに行こうと踵を返して歩き出そうとしたけど、ハティさんがそれを止めた。


「あ、待って。ついでにもう1体、買い取ってほしいのがあるのだけれど、いいかしら?」

「ん?なんだ、まだあるのか?」

「ええ。でも、その前に、少し場所を開けてもらってもいいかしら?かなり大きいから、今のままだと場所が足りないわ」

「そんなにでかいのか?……わかった、少し待ってろ」


 ハティさんの言葉に、親方は怪訝そうな顔をしたけど、すぐに懐から白地に赤い線の入ったカードを取り出し、私が出した魔物を仕舞っていった。

 その間に、ハティさんが私に言う。


「トモリちゃん、ここが空いたら、あなたの持っている一番大きいゴブリンを出してもらえるかしら?」


 一番大きいゴブリンって、ゴブリンエンペラーのことかな?

 大きさ的にも、片付けてもらってる場所にちょうど入るくらいだし、合ってるよね?

 確認のために近くにいたアニタさんを見ると頷いてくれたので、間違いなさそうだ。


 そうこうしているうちに、片付け終わったようだ。

 私は、親方が魔物を片付けて綺麗になった場所に、ゴブリンエンペラーを出した。

 


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